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『告白は明白で淡白に』

「それは申し訳ないです、早めの行動を心掛けているもので」

「そう、私との約束の場合は早くこなくていいわ。指定した時間調度に来なさい」


初対面からこの態度である。

いやまあ過去にペンを拾って上げたことはあるけど、主人公的には初対面と言っても過言ではないだろう。


ちなみに初対面なはずなのに主人公が絃のことを知っているようなセリフを吐いたり、名前を聞かなかったりするのはゲーム的な都合……

ではなく設定資料集曰く主人公がすでに絃のことを存在自体は知っていたかららしい。

学校内で有名人だからな、絃は。


「ああ、はい。ところで俺に何の御用でしょうか?」


俺は改めて絃のことを観察する。


設定資料集曰く主人公よりも身長が高い。

実際椅子から立ち上がった彼女は俺よりも背が高い。


良くも悪くもメリハリのないボディ。

これはまあ好みがわかれるところだろう、個人的には着物とか似合いそうだなと思う。


そして彼女の一番の特徴である表情変化の無さ。

そもそもゲーム時代は立ち絵に表情差分がないという衝撃のキャラである。


表情が変わるのは全滅エンドと絃エンドのCGのみだ。

狂ったように笑う絃が見れるぞ、まあ実際狂ってるんだが。


それ以外の時は無表情だ。

瞬きもしない。

寝ていても目を閉じない。

喋る喋らないで口の開閉だけはするが本当にそれだけ。


絃の立ち絵はパッチなしで2パターン、パッチありで4パターンだ。

ちなみに開発者Aはちゃんと表情差分も用意していたらしく、この現状に落胆していた。


そんな開発者Aだがちゃっかりブログに表情差分を載せている。

設定資料集にも載っていないイラストなので見てみる価値はあると思う。

まあアカハラーな俺からすると絃が笑ったり怒ったり泣いたりしているのは一種の恐怖だったが。


重度なアカハラーはクールな女性に恐怖を抱くようになるのだ。

ソースは俺と掲示板のアカハラー仲間クロックさん。

異論は認めない。


「……君。尾崎君。聞いているの?」

「すいません、意識が明後日の方向に行っていました」

「それは感心しないわね」

「本当にすいません」


しまった、深く思考の波に溺れすぎたせいで自分から定型文を歪めてしまった。

まあなんとなく好感度下がったっぽいのでぎりぎりセーフっぽいか。

今はゲームじゃないのだから自分の心境を出している時にも時間が進み、会話が進み、ストーリーが進む。

それを意識しなければ後々痛い目を見るだろう。


「もう一度だけ言うわよ。尾崎君、私と付き合わないかしら」


前半部分に余計なものが付いたが、これが絃の告白だ。

願望ではなく提案に近い発言である。


このゲームにまともに告白する奴はいないのかと思う人も多いだろうがもう少し待ってほしい。

ゆめだけはまともだから。


さて、この絃の告白だが実は普通に断ることができる。


佳那からの告白は強制的に受けることになるのだが、絃とゆめの告白は『はい』『いいえ』の選択肢がしっかりと出るのだ。

じゃあ断れば少なくとも佳那の攻略は簡単になるのでは?と思った人は賢い。

が、それは絃に関しては悪手だ。


「ええ、喜んでお付き合いしましょう」


なぜなら絃の告白を断ると絃ロールの発生率が倍増し、そのうえ虫の知らせアラームが消滅するというデメリットがあるからである。

正直これは鬼畜ゲーを超えて無理ゲーの域だ。

某有名動画サイトに『絃の告白を断ってノーセーブで破局エンド』とかいう頭のおかしい動画が上がっているが、あれは動画を見ていてもどうやっているのかわからない。

第六感とか未来予知の域だよあれ。

『そろそろ絃ロールが来そうなので店に入っておきましょう』じゃねえんだよ。


「そう、よかったわ」

「でもどうして俺なんかと?」

「それはおいおい話すかもしれないわね」


いえいえ今回のルートでは聞けませんよ。


……いやさすがに言ったら変な空気になる気がするから言わないけどね。


「今日の用事はそれだけよ、もう帰っていいわ」

「え、ああ、はい」


絃は再び椅子に座り直し、俺は教室を出る。

さっきまで告白されていたのが幻だったかのようなあっさりとした解散。

職員室に呼び出されたテンションである。


告白が不成立でこの終わり方ならまだわかるのだが、成立しているのにこんなにもさばさばしているのは笑える。

大方この時点で絃はまだ俺のことを好きなわけではないからだろう。


告白されているのに好かれていないとはどういうことなんだよとも言いたくなる。

しかし絃の好感度を100が上限として考えた場合、告白の時点での好感度はせいぜい10といったところだ。

比較対象として佳那を例に挙げると告白時の好感度は85くらいだったりする。

とはいえ佳那の好感度は上限がないようなものなので明確には比較としては成り立たないのだがイメージはできるだろう。


つまり現在では本当に興味でしかないわけだ。

恋愛感情ではなく興味本位で付き合っている、いや実験と観察と言ったほうが近いのか?

ならば俺はいわゆる実験対象モルモット

自分で言っていて悲しすぎる。


そういえば前に言った覚えがあるが絃の好感度は一部を除いて上下しにくい。

そのため絃のルートに進むにはせっせとデートなどを積み重ねる必要がある。

佳那の様に何段階も好感度がすっ飛ぶとか、ゆめの様に好感度の上げ方に注意をしなければいけないとかはなく、少しずつ主人公に対する好感度を上げていくという正統派な攻略法なわけだ。

そのうえ絃エンドを見るには絃が殺人を起こしていないという条件がありグロ要素もほとんどないためか、実は絃エンドが一番恋愛シミュレーションっぽいのでは?とも言われていたりする。


エンドの内容で全部台無しだけどな!


何はともあれ絃の告白イベントはこれにて終了である。

これから先は絃ロールと絃とのデートに悩まされることになるがまあ仕方ない。


絃のデート中に絃ロールが発動するようなことはさすがにないので、デート自体にはそこまで危険はないのだが一つだけ注意点がある。

絃は直前のデートから6日以上デートをしないと、絃ロールが告白を断ったときのものに変化する。

絃を狙っていても狙っていなくても、最低5日おきにはデートに誘うことを心がけよう。


なおこのゲームではデートに誘われる日付が決まっているので、頭の中のスケジュール通りに事が進めば俺は無事破局エンドにたどり着けるはずなのだ。


現実になったというイレギュラーがそう簡単に話を進めてくれるかはわかったもんじゃないが。


まあ今考えたところで実際に体験をしてみないことには変わっているかなんてわかりはしない。

とりあえず今俺にできることをするしかない。


今日の放課後はデートイベントがないからたっぷりと時間がある。

昨日に引き続きお買い物の時間だ。

【朱い春 雑談掲示板part4】


641 赤春の使者

最近クール系の女性を見ると殺人事件が起きるような気がして怖い。


642 クロック

奇遇だね赤春の使者さん、私もいつか鉈振りかざされるんじゃないかって毎日ドッキドキだよ。


643 赤春の使者

(・∀・)人(・∀・)ナカーマ


644 クロック

(・∀・)人(・∀・)ナカーマ


645 bummer

お前らなんでそんな仲いいんだ。

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