のほほん26
「自分の武器を作りたい? どういうことだ。言ってみろ」
ヴィータはドワーフの男に自分の事情を話すことにした。
「元王国の兵で、レフィリア姫を守ることを諦めきれずに武器作り……か」
「簡単に言うとそう言う事であります」
「鍛冶職人なんぞ目指さなくても、オーダーメイドで武器を作ってもらえばいいんじゃないのか?」
「兵士だった頃は、どの武器を使ってもダメで……それに俺自身どんな武器が欲しいのかよくわかってないのであります」
「はーん」
「説明しろと言われても逆に困ってしまうでありますよ」
困ったようにポリポリと頭をかくヴィータ。
「そうだろうな。師を探すってことを思い付かないほどの馬鹿者だからな」
「ぐっ」
「だが、その心意気は気に入った! その心意気に免じてワシが少しばかり面倒を見てやろう! 人間を見てやるなんぞ滅多にないことだぞ! どうする?」
「いいのでありますか?」
「聞き返すな馬鹿者! 見てほしいのか? 見てほしくないのか? どっちだ!?」
「み、見てほしいであります!」
「それでいい! そう言えば名を聞いてなかったな」
「ヴィータであります! あなたは?」
「ワシはドラゴスと言う」
「よろしくお願いするであります!」
こうしてヴィータはドワーフのドラゴスと出会った。
早速出会ったその日から徹底的にしごかれる。
カコーン!
「違う!! さっきから何度も言っているだろう!!! もっと集中しろ!!! もっと丁寧に!!! もっと強く!!! もっと速くだ!!!」
「は、はいであります!!!」
バコッ!!
「どこを打っている!!! 集中力が足らん!!!」
「はい!!!」
ボコッ!!
「汗が目に入った程度で集中力を乱すな!!! 慣れろ!!!」
「はい!!!」
カーン!
「今のはいいぞ!! 今の感覚を忘れるなよ!!!」
「はい!!!」
その日は夜遅くまで金属を打つ音と、ドラゴスの怒鳴り声が聞こえていた。食事を取らず、ひたすらに打ち続けたヴィータと指導をしていたドラゴスが作業を終えたのは、日を跨いだ頃だった。
「つい夢中になってしまったわい。ダメすぎて怒鳴りすぎたわ……喉が……」
「申し訳ないであります」
「謝らんでいい。謝るくらいなら鍛冶を辞めろ」
「嫌であります!」
「なら腕を磨いて見返してみろ」
「はい!!」
「それでいい。しばらくはワシも見に来れん。いずれまた来るが、その時までにもっとまともに打てるようになっておけ」
「また来てくれるでありますか?」
少し驚いたようにヴィータは言う。ヴィータのような落ちこぼれにこれまで熱心に指導してくれたのは将軍とオランドくらいだ。
「小僧のような奴が鍛冶職人を名乗られたらワシが困る! 一端の鍛冶職人になるまでは面倒を見てやる。サボったらワシにはわかるからな!」
「ありがとうであります!」
「いいか? 鍛冶は集中力が一番大事だ。技術はいずれ身に付く、物が出来るまでの間、丁寧に、丁寧に打つことを覚えろ。集中して、金属をしっかり打てるようにだぞ! いいな?」
「はいであります!」
「それと、もし装備を作り出せたら、立派な店があるんだ。店に出しておけ」
「店に出すでありますか!?」
「小僧がよく出来たと思う装備だけだ。値はそうだな……銅貨30枚といったところだろう」
「や、やってみるであります」
「よし、ではワシは帰るぞ!」
そう言ってドラゴスは家から出ていった。突然現れたドワーフに驚きはしたが、実力がある師を見つけたことで今まで作れなかった銅の剣を連続で作り出せていた。売っていいと言われた銅の剣を店に出し、疲れた体を休めるためにベットに潜り込んだ。
それからまた日はあっという間に過ぎていく。午前中は魔獣を狩りに、午後は銅の剣をひたすら作る。2週間ほど経つと店には大量の銅の剣が無造作に置かれていた。
カーン!
カーン!
カコーン!
カーン!
「ちょっと失敗した。集中力が足りないんだ! もっと集中集中!」
カーン!
カーン!
カーン!
「これは成功だ! 店に置いておこう!」
ヴィータはまだ17歳。ドラゴスの教えを信じ、必死に打ち込む毎日を送ることで、右も左もわからなかった初心者から毛の生えた初心者にランクアップしていた。
兵士の頃の経験のおかげで、集中力は他の人に比べてずっと高い。ハンマーの打ち方を習った後、忘れないように一回一回丁寧に体に馴染ませるように打っていることで打ち漏らすことは滅多になくなっていた。
ヴィータが買った家の鍛冶場の設備も良く、周りはとても静かなため集中するにはもってこいの場所であることも影響しているだろう。
ガチャ
カーン!
「こんにちはー!」
カーン!
「こんにちはー!」
カーン!
「むぅ……こんにちはー!!!」
「あ! ごめんよ! えっと……いらっしゃい!」
鍛冶場で集中して打ち込んでいたことで、店のドアが開いたことと声に気付かなかったヴィータは慌てて店のカウンターへと移動した。店に入ってきたのは軽装の女の子だった。歳はヴィータより下だろうか。冒険者なのかもしれない。
「えっと……このお店にある銅の剣は、みんなお兄さんが作ったんですか?」
「うん、そうだよ」
「ふ~ん。手に持ってみてもいいですか?」
「もちろんだよ」
女の子は辺り一面に無造作に置いてある銅の剣を一つ一つ手に持って何かを確かめていた。初めてのお客さんに緊張するヴィータ。
「銅の剣以外置いてないんですね」
「鍛冶を始めたばかりで銅の剣しか作ったことがないんだ……ごめんよ」
「いえいえ! 不思議に思ったから聞いてみただけなんです!」
女の子は無造作に置かれていた銅の剣の中から一本選びカウンターへと持ってきた。
「これください! おいくらですか?」
「銅貨30枚だよ」
「……本当に?」
「……うん。高かったのかな?」
「いえいえ! むしろ安いですよ?」
「そうなんだ……でも大丈夫。師匠に銅貨30枚で売れって言われてるんだ」
「じゃ、じゃあ遠慮なく買わせてもらいますね!」
「毎度!」
「はい! また来ます!」
銅の剣の相場など全く知らないヴィータは、ドラコスに言われた値段で銅の剣を女の子に売った。初めての商売に何とも言えない達成感を得られているようだった。
「銅貨30枚だけど、大切に使おう」
そんなことを言いつつ、鍛冶場へ戻っていった。




