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不思議な話、怪談未満

不思議な話、怪談未満

作者: 柚屋本舗

妻が亡くなってから、もう十数年ほどになりますか。当時の事を思い出しながら書いてみました。

もう十数年も前の事になる。



当時妻は在宅診療のため和室においた介護ベットで寝ていた。

南に頭を北には床の間があった。


【其の壱】


私は、妻のベットと東側の壁の間の隙間に布団を引いて寝ていた。


反対側には医療用具のもろもろが置いてあった。


有休をとり、義母と面倒をみていた。連日の看病と病状の悪化で、ロクに寝ることもできず、壁とベットの間で寝られるときはウトウトしていた。


するとある時、金属音のようなものが聞こえる。


一定の間隔で、キーンという表現が一番近いだろうか。


朝の4時ごろに聞こえたようだった。


看病疲れでついに幻聴かと思っていたのだが、応援に来た義妹にも聞いてみるとやはり聞こえるとのこと。


だいたい朝日があがるぐらいまで一定間隔で音が鳴っていた。


妻を送ってから何回か寝られなくて今は仏壇がおいてあるその場所にいってみた。


朝の4時になってもその音はならない。


歳をとった今、その場所で寝ているが、やはり音はならない。


一体なんの音だったのだろう。


【其の弐】


妻の容態がますます悪くなっていったある日、わたしにポットをもってこいという。


「ポット?」

『ポット』


「ステンレスの?」

『そう』


「あの魔法瓶の奴か?」

『そう』


「もってくればいいんだな?」

『お湯か水を入れてもってきて』


よくあるピクニックに行くときにもっていくようなステンレス製のボトルだ。

お湯をポットから入れて持っていった。


「どうすればいい?」

『そこにおいて』


「そこってどこ?」

『足のところ』


ベットの上の足元に置いた。


妻は足でステンレスの魔法瓶に何度も触れて安心したような表情をみせた。


結局、息を引き取るまで足元においていたのだが、あれは何だったのだろう。



【其の参】


かぎりなく危篤状態に近くなった時、しゃべることもできず、指で床の間上方を指さす。

私が振り返ると、床の間には父が中国にいってきたときのお土産のよくある山と河の掛け軸がかかっているだけ。


鴨居には鳳神社の熊手があるだけ。


掛け軸をはずしてみる。


まだ指をさす。


熊手も下ろす。


まだ指をさす。


「何かが見えるんだろうな」


父が言った。


脚色なしの思い出なので、山もなければオチもありません。

ただただ、懐かしい思い出です。

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