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セントラル

...いや、無視した俺も悪かったけどさ。

もう二度と見れないと思ってた光景に似ている景色が、急に現れたらちょっとくらい感傷に浸ってもいいだろう。


まぁ、コイツにいっても意味ないか...


「けど、問答無用で消し飛ばそうとするのは酷くねぇか?」

「あなたが3回も私の話を聞かないからよ」


門を潜り抜けたあと、大通りだと思われる道を赤神と二人で歩く。


「次、聞かなかったら分かるわね?」

「イエッサー」

コイツの目、そこそこキレてる時の舞とおんなじだ。


「ここは対魔物迎撃機関カルディア。私が所属している、そうね、簡単に言えば会社よ」

「かい...しゃ?」

頭大丈夫?

「...」

ごめんなさい。



「いつかからかは分からないけれど、この世界には化け物が現れたの。そいつらの目的ははっきりとしてない、けど人類に敵対しているのは確かよ」


そして、それと同時に世界各国で超能力のようなものが使える人間が出てきた。それが、魔術。


「初めは選ばれた者に宿る力だと思われていたけれど、それが法則あるものだと分かってからは研究が進められて」


その研究を本格的に進めるために作られたのが、カルディアの前身にあたる研究所


「魔物を倒すのに、魔術と比べて現代兵器では効率が悪いの。効かないってこともないけど同じ労力なら魔術を使った方が簡単だった」


それから世界中で研究されていった魔術だが、未知の力を前に利用しない人間はいない。


「当時の人達は当然、魔術の力を人間同士の戦争に利用したわ。本来の魔物(てき)すら忘れて、ね」


けれど、第二次世界対戦。まだ魔術師の数が少なかったとはいえ、魔術の戦略利用が活発になろうとした時。


災厄が現れた。


「その時近くにいた人間は全滅。離れていた人達も壊滅的な被害が出たそうよ」


災厄のはっきりした情報はないらしい。

伝えられているのはただ、(くろ)かったと。


「そうして、ようやく自分達の本当の敵について思い出したのね。世界規模による条約が訂正された」


魔術を私利私欲に利用してはならない。すべては人類の平和のために。


「分かりやすく言えばそう言うことね。ま、私利私欲に走らない人間なんて存在しないから、表向きはってことだけど」


そして、その明かしとして各国の共同で作られたのが


「対魔物迎撃機関カルディアってこと」





正直、ここまでの話しになるとは思っていなかった。



魔力が大地に満ちる主な理由として、2つがあげられる。

1つは自然発生。はじめから世界に魔力が産み出される様に作られている場合だ。

俺も今まで、地球に魔力が満ちているのはこちらの理由だと思っていた。しかし、この話を聞いてその理由は2つ目だと確信した。


その2つ目は外的要因によるもの。その要因は様々だが、今回の話を聞くに原因は魔物だ。

おそらく、赤神がいう魔物(ビジター)とは、ストウスウェイトにいた魔物と似たようなものなのだろう。

あちらの魔物は身体を魔力で構成していた。魔核と呼ばれる魔力の結晶体を起点にしている魔物は、そこを傷つけると身体を構成できなくなり消滅する。その際、魔核は物質として残るが身体を構成していた魔力は世界に流れ、それが世界に吸収される。やがて使用される魔力量を吸収される魔力量が上回ることで魔力が世界に満ちるのだ。

この要因で世界に魔力が満ちるのには途方もない時間が必要となる。人類が生まれる前から魔物はこちらに来ていたのだろう。




「はじめ、あなた達がこちらに来たとき冗談抜きに世界が終わったと思った。それほど膨大な魔力がなんの前触れもなしに発生したのだから」


それは普段魔物(ビジター)が現れる時に似ているらしく、カルディアではその魔力の発生を(ゲート)と呼んでいるらしい。


「過去に現れたら災厄の再来かと思われたのに...出てきたのは4人の人間と1人の変態。1人は尋常じゃない魔力量とはいえ、サーチしてみると人間らしいし」


変態の部分に意義を申し出たが、セーラー服来た男のどこが変態じゃないのよ?という反論にどう答えていいのか自分にも分からない。

もうすぐ再開するだろう導師に復讐を誓いつつ歩いていると、目的の場所に着いた。



「ここがカルディア日本支部の中心よ」

「...デケェな」

見た感じ、直径100メートル、高さはスカイツリーと同じくらいだろうか。神聖さを感じさせる石造りの巨大な塔の名は「セントラル」と言うらしい。

セントラルを中心に俺が歩いてきた道が、十字を描くように通っている。


「石造りでどうしてこんな巨大なのが建てられるんだ?」

「それは魔力で強化してあるからよ。見た目は石だけど、単純な強度で言えばウルツァイト窒化ホウ素すら越えるわ」

「...そりゃすげぇな」

なんて言ったんだ?コイツ。潤めキャット?天使じゃねぇか。


「まだ詳しくは解析されてないんだけど、魔力は人工物より自然物の方が浸透しやすくてね。変に人の手で加工した物を使うより、木や土なんかの自然物に魔力を染み込ませた方が強いのよ。だからこの街の建物はすべてレンガや石造りなの」


どう?異世界みたいでしょ?


からかうような口振りの赤神に、しかし反論できなかった。


――似すぎている(・・・・・・)


魔力を染み込ませて強度を上げる方法はストウスウェイトにも存在していた。同じ材料なのだから効率等を求めていった結果、似た物ができるのは分かる。


...偶然なのか?

旅の後半は人の手が加えられていない場所を巡っていたとはいえ、1年以上暮らした王国の景色を忘れるわけがない。まるでそのまま移したような建物。

流石にセントラル程の建物は人間の国にはなかったが、家なんかの建築物はそっくりだ。

もし、これが偶然でないとしたら、考えられるのは俺達以外の...


いや、これ以上は後にするか。

もし仮にそう(・・)だとしても、今は関係ないはずだ。



見た目は中世の建物なのだが、機能はちゃんと現代らしい。

エレベーターに乗り、70階まで上がってきた俺と赤神。

その階には部屋がひとつしかないのか、エレベーターをおりて前を見るとこれまた豪華な扉がある。


扉がひとつってことは、この階層全部使って部屋一個なのか...


「ここは普段VIPをもてなすための場所なのだけれど、今回は特別にあなた達帰還者用に使用してるわ。私は上司に話をしてくるから、迎えが来るまで他の帰還者達と親交を深めてちょうだ」


――その顔で怖がらせないようにね――


最後まで人の心をえぐった赤神はそのままエレベーターで上がっていく。



心配しなくても、あいつらは慣れてるよ。



そう、自嘲するが顔は笑っているのが自分でも分かる。

1週間程会わなかっただけだが、随分と離れていた気がするのは、それだけあいつらと共にしたからか。


俺は、期待を胸に扉を開いた。









「失礼します。四神・朱雀、ただいま戻りました」


セントラルは100階層からなる建物であり、カルディアの各支部すべてに存在する。一見石造りの建物は、しかしその強度を極限まで上げており、例え核が落ちてきたとしても十数発までは耐えるだろう。


そのセントラルは最上階に近づくに比例して、支部内の階級も上がる。

その中で95階と言えば日本支部においてトップクラスだ。

いや、95階以上は彼女(・・)の私用と化している今、実質のトップと言ってもいいだろう。

いかに日本を魔物(ビジター)の脅威から守るカルディア日本支部。その中でも純粋な実力で上から数えた四人が与えられる称号『四神・朱雀』を持つ赤神 レイランといえど気軽に接していい相手ではない。


「入りたまえ」


その声に軽く緊張する。

なにせ相手はレイランの先輩とも言える先代、朱雀だ。一時期は直接師事を仰いでいたこともあり、未だに頭が上がらない。


私物の少ない絨毯の敷かれたその部屋は、主の気質を表しているようで。


「二人で会うのは久しぶりか、レイラン」

「は、私が称号をいただく前にお会いしたのが最後なので、約3年ぶりかと」

「そうか、もうそんなに経つのか。道理で大きくなったとおもう訳だ。今年で17歳だったかな?あんなに小さな子がずいぶん立派になって」

「む、昔の話はしないでくださいっ」

「はははっ、それはすまなかったね。それで、どうだい普通の高校生活は。カルディアの育成機関に通うとはいえ、あそこは魔物(ビジター)との戦闘訓練を主としたところだ。随分新鮮だったのではないかな?」

「とは言いましても、高校1年生としてです。勉学においても一度したことだけで新鮮さなどは...」


そう会話する二人は見た目も合間って父娘のようだ。白髪が混じり始めた赤毛の男の顔は、歳を感じさせない程整っている。


「そうか、珍しくあの方が自ら命令したことだ。何か裏があるとはいえ、十分楽しみなさい」

「...私はあの女を信用していません」


その台詞を男龍道寺(りゅうどうじ)信朱(のぶあか)は、否定できなかった。

確かに、彼女は信用できない。いつからカルディアに所属しているのかは分からない。けれど、カルディアの技術向上に貢献し、セントラル建設にも関わった彼女は功績だけなら十分に信用できるのだが。

彼女の目が、それらの功績すべてをおいても信用するなと語りかけるようで...

しかし、それは人を見た目だけで判断するよのと同じだ。龍道寺は自分と娘のような存在のレイランをたしなめる。


「そう言ってはいけない。彼女はカルディアの頭脳だ。彼女がいなければ守れなかった命は確かにあるのだから」

「...はい」

「それで、」


この話はここまでと言うように彼は話題を変える。


「青崎 雄護君はどうだった?」

「見た感じではごく普通の少年です。少々、いやかなりのバカ...個性的な感性をしていますが、それだけです。能力についても、まだ何か隠しているとはいえ、対処は可能でしょう」

「そうか。東宮君もそう言っていたよ。玄樹だけは野蛮と称していたが...」

「ハクはなんと?」

「それが、秋津くんからは定期連絡が来ないのだよ。けれど、生体反応は特に異常をきたしていないし緊急連絡も来ていないから、危険には陥っていないはずだ」

「...そうですか」


よかった、と素直に思う。最初の頃は災厄の再来とまで言われていのだ。5人の内4人が日本に現れたことから私達四神が動いたが、命の覚悟すらしていた。





「もうすぐで帰還者達が全員揃うだろう。それと、勘違いしてはいけないが彼らは敵ではない。新たな仲間になるかもしれないのだから」


レイランは思う。あの男が仲間になるのか、と。


思い出すはこれまでの1週間。

その能力は確かに有用だろう。だが、バカだ。

それにセーラー服を着用する変態だ。


カリンの方は美男美女の兄妹だと言うし。

メイの方も女性だ。

ハクは強大な魔力を持つ男が相手らしいが、バカで変態よりはましだろう。


レイランはもう一度思う。あの男が仲間になるのか、と。








素直に思う、 イヤだなぁ。







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