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課題

その場のノリで書いているため、今後矛盾点が出てくるかもですが暖かい目で見てくれると幸いです。

8月31日、午後12時36分。

(体感時間で)3年ぶりのベットは思っていたよりもしっくりこなかった。8年程使っていたベットだが、この3年間の思いでの前では流石に愛着が薄れてしまったらしい。

無論、それが眠れない事には繋がらないが。向こうで旅をしているときは硬い地面はもちろん、木の上や氷の上、悪霊の巣なんかでも寝たりしていた。それに比べれば我が家のベットは十分眠れる。

昨日の夜、新たな夏休みの宿題(てき)に関しては後にまわすとして、魔力の事や視線の主についても今は危害を加える気配がしないので寝ることにした。

いくら聖女の力で怪我は治っているとはいえ、半日程前は両腕が千切れたり生えたりというレベルの戦いをしていたのだ。流石にもう限界だったらしく、ベットに寝転がるとすぐ落ちていた。


7時頃に起床した俺はまず両親への説明をする。最初は全て隠さず、この3年間について話そうと思っていた。けれど、大気に満ちる魔力や何より今なお続くこの視線の主についてハッキリさせるまでは、余計な事実は逆に両親を危険にさらすかもしれない。

だから、

「運命の人を探してましたっ!!」

「...」

「...」

俺が危機にさらされてしまった。



はじめは怪しがっていた両親だが、向こうでの日常生活の事や出会ってきたたくさんの人達の事について語っていくにつれ、俺が旅に出ていた事は信じてくれたらしい。


「まだ、隠している事は在るらしいがいい経験を得たらしいな、

雄護」

「それで、運命の人は見つかったの?」

聞きたいことはたくさんあるはずなのに、それでも俺を気遣ってくれる両親に今は感謝する。諸々の問題を解決した後で、必ず真実を話すと誓って。


「...見つけたよ、たくさん。いや、見つけてくれたんだ」


そしてそれは、日本にいたままだと絶対に出逢えなかった。

世界の危機に関係ない人を巻き込む異世界転移に最後まで後悔し、召喚された俺達に親のように接してくれた国王。

召喚された当初、調子に乗っていた俺を笑顔で叩きのめしてくれた騎士団長。

勇者として活躍していくうちに、周りの人達は俺達を敬うようになっていった。それは仕様がないことだけど、少し悲しかった時に変わらず接してく子供達。

....そして、何より


「好きな人ができたんだ。とても優しくて、とても綺麗で。何よりも守りたい人が」


決戦前夜。もう二度と会えないかもしれない。俺が負けると、この笑顔もなくなるかもしれい。

柄にもなく不安に押し潰されそうな時、膨大な魔力や特別な力を持たない彼女は、両手で俺の顔を包んで微笑みながら言ってくれた。

「大丈夫。ユーゴは此処の子達と同じくらい泣き虫だけど、貴方の良いところは、たくさん知ってる。」

戦いに疲れていても、それを顔に出さず子供達と遊んでくれたこと。

守りきれなかった人を想って、ずっとずっと泣いてたこと。


だから、大丈夫。


そう、根拠の分からない「大丈夫」に励まされて。

そんな俺が情けなくて。


「...違うんだ、違うんだよマリー。俺はただ、カッコつけてるバカなだけだ」

俺を庇って致命傷を負いながら、それでも笑顔で死んでいった騎士団長。

俺なんかよりも多くの命を背負いながら、それに潰される事なく走り続ける勇者(しんゆう)

そんな彼らに追い付きたくて、そんなカッコいい男になりたくて。


「頑張って来たけど、全然近づいた気がしないんだ。アイツら、すげぇカッコいいんだよ」


その力故、誰よりも死人を間近で見てきた聖女は、俺らの前では涙を流さない。兄はけっこう泣き虫だよって言ってるけど、自分のために彼女が泣いたとこなんて見たことがない。


その力故、誰よりも敵を殺してきた導師は、俺らの前でも弱音を吐かない。アイツはするべき事をしただけよって言ってるけど、初めての戦いで敵を殺したとき震えていたアイツを知っている。


皆が自分と戦って打ち勝っているのに、俺は子供達やマリーに慰めてもらって。

こんな俺が世界なんて救えるのかよって思ったとき。

彼女は、言ってくれたんだ。


「確かに、ユートさん達はすごい人だよ。けど、それはユーゴが頑張ってないことにはならないでしょ。」

「ユーゴは真面目な人だから、前だけしか見てないけれど。たまには後ろを振り返ってみたら?そこにはきっと、ユーゴが救ってきた人が必ずいるから」


最近は眠る時間が増えてきかたから、てっきり寝ているのかと思っていたけど。俺の後ろに、いつの間にか子供達が立っていて。


「ほら、ねっ」


何も言えずに子供達を見つめる俺に、それにと続けて


「カッコつけてる男の子が、私は好きだけどな...」


頬を赤く染める彼女の顔に、俺は覚悟を決める。


「マリー、俺は、君のことが...」




そんな、在りし日の想い出を浮かべる俺のことを、何故か両親はドン引きしているような顔で見ていた。


「お父さん、やっぱりこの子頭がっ....」

「泣くな!母さん。息子が運命の人を探すために家でしたり、妄想の女の子を思い浮かべてニヤニヤしていたとしてもっ、それでも私達の大切な子供だ!!」



....ニヤニヤしていたことは、否定できない。



そんなことがあったのが少し前のこと。真剣に病院を進める両親とお昼を食べ、部屋に戻ってきた。

ベットに寝転がりながら右手を見る。魔力を込めると浮かび上がる紋章は、おそらく発動できるだろう。


なーんで、魔力があるんだか...


心のなかで考える。日本に満ちる魔力濃度はストウスウェイトとさほど代わりはない。つまり、こちらでも問題なく魔法が使えるはずだ。魔力で思念を電波のように飛ばして会話をする念話の魔法があるので、すぐにでも優人達と連絡もできる。

それをしないのは、誰かが俺を監視しているからだ。おそらく、優人達もこの視線を感じているのだろう。この世界に魔力があり、転移してきた俺達をすぐに補足し監視する誰か(・・)がいる状況では、こちらの手札はなるべく隠しておきたい。

つまり今俺にできる事は向こうから接触してくるまでこの視線の主を無視し、日常を過ごすことだけだ。つまり...


宿題(まおう)からは逃げられない。


紋章の能力を使い、並列思考で両手にシャーペンを持ち10時間くらい休憩なしで取り組むことで、数学なんかの課題は終わらせることができるだろう。

障害は2つ。

1つ目は視線の主にばれないように力を使うこと。これは紋章の結界を使えばいくらでも誤魔化せる。この結界は防御や身体強化だけでなく、他者の意識からも身を守ることができる。これを応用し、魔力を隠したり透明人間になることもできる。....昔この力を使って優人と風呂を覗いたが、張り巡らせれた魔力の網を透過仕切れず導師に焼き尽くされた後、色欲を怪我と認識されて治療されたせいで一月ほど俺のナニが一切反応しなくなった。それ以来この力を戦い以外で使うことを封印していたが、ついに解禁する時かもしれない。

問題は二つ目。

自由研究などの時間をかけて取り組む課題だ。

これが普通の高校生なら長期間かけてすることが前提の課題は短時間ではできない。

しかし、俺は3年に渡って強敵達と激闘を繰り広げ、世界を救った勇者の一員。いわば訓練された高校生。


「えーっとタイトルは『キャットピープルの集落とその暮らしについて~猫耳は実在していた!?楽園はここに~』っと」


課題なんて出せればいいんだよ、出せれば。





「例の子達はどうしていますか?」

日本のとある山奥。一般の地図には乗らず、衛星などの探索も掻い潜る。科学と魔法の両方によって隔離されたその場所で、2人の女性が話していた。


「今のところ、5人(・・)とも変わった行動は起こしておりません。4人が学校の課題に取り組んでおり、1人は転移してきた場から動いていない...いや、内2人は変わっていないとは言い切れませんが」

1人は猫耳の可愛らしさを語り、1人はエルフ耳の美しさについて熱弁している。....控えめに言っても気持ち悪い。


そう語る少女は17,8だろうか。幼さを含む顔立ちだが、その赤瞳には強い意思を感じることができる。長めの赤みがかった茶髪は後ろでくくられており、雰囲気も相まってどこか騎士のようでもある。


「そうですか...くれぐれも目を離さないようお願いします。彼らはこの世界を救う『勇者』なのですから」


そう言う女性は25歳程で、先程の少女よりも大人びている。優しそうな相貌と、母性を感じさせる口調。神秘的な見た目を持ち、一見聖母のような彼女はしかし、どこか異質さも感じられる。


「...もう少ししたら接触を図ります。私の他にも青龍、白虎、玄武が出ますので、仮に敵対されたとしても対処は充分可能でしょう」


暗に、自分達には世界を救えないと言われたようで気の強い少女は苛立ちを含ませる。

少女の苛立ちを理解しているが、その程度で聖母は揺るがない。


「えぇ、あなた達には期待していますよ」

―――彼らの当て馬として―――


その言葉を最後まで聞かず、赤の少女はその場から消えた(・・・)。まるで、蜃気楼のように。


それを動揺することなく見送った聖母は1人、笑みを浮かべて呟いた。


「『聖女』『導師』『守護者』『勇者』そして、『魔王』」


「あぁ、なんて愛しいのでしょう」


「皆、私のためにわざわざ世界すら越えて来てくれるなんて」


「さぁ、一緒にこの世界を救い(こわし)ましょう?」


物語は続いていく。例え、演者達にその気がなくても。


私の思い描いた結末(ハッピーエンド)


なぜなら私は...


「■■なのだから」








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