精神科とエヴァとサイヤ人と
パビナール中毒になれなくても、精神病院に入院しなくては。太宰の人生でもここは重要なポイントなのだ。
俺は近所にある総合病院の精神科を受診した。予約も抜かりないぜ。
さすが大きい病院だけあって綺麗だ。選んだのはもちろん、入院施設があるからだ。
名前を呼ばれて、診察室へ入る。
そこには禿頭のタコ入道が椅子に腰かけていた。
診察室はエッチしやすそうな二人掛けのソファ―に、観葉植物。
机にはパソコン、薬の事典やらの書籍、花瓶には花一輪。
壁には、エヴァンゲリオンのキャラである、真希波・マリ・イラストリアスの絵が。なぜ?
医者のタコは、ニコニコ笑みを作って、こちらを見ている。
俺もこのタコを眺めた。無言。
が、「先生! 俺、精神病院に入院したいんです!」と強い語調で訴えた。
「ほう・・・」タコは禿頭をなでながら、「いきなり、どうしてですか?」
「太宰治がパビナール中毒で入院しているからです。だから!」
「太宰治はもちろん知っていますが、あなたと何の関係が?」
「『人間失格』を読んでください! 主人公は閉鎖病棟に入れられ、こう書いてます。〈人間、失格。/もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。〉って。だから、閉鎖病棟に入れてください!」
「なぜ太宰と同じことをするのか、話が見えてこないんですが・・・」
「舐めんなよ、タコ先生。太宰の人生を真似て生きることはな、スーパーサイヤ人になる特訓より難しいんだ。そうだ、俺はスーパーサイヤ人ゴッドになるんだよ」
「落ち着いて、初めから話してもらえませんか。家族構成は?」
「太宰の人生だと2回結婚することになる」
「ご両親はご健在ですか。今日ここに来ることを相談しましたか?」
「俺は重度の目薬中毒なんだよ。早く閉鎖病棟に入院させろ。さあ、入れろ。すべてゼーレのシナリオ通り」
「無茶を言わんでください」
「ただし絶対、個室にしてくれよな。神経質なんだからな」
「うちは差額ベッドはありません。閉鎖病棟で個室って言ったら、手足を拘束されて、独房みたいなものですよ」
これは究極の難問だ。大部屋では1日も俺の神経は持たない。同室の奴らにイライラしっぱなしだ。
負けた・・・負けたよ、個室がないことに負けた。
「誇大妄想があるようですが、幻聴はありますか?」
「ない。太宰と霊界通信したいぐらいだ」
「夜はちゃんと眠れてますか?」
「おい、ニートを馬鹿にすんなよ。日課と言えば、食って寝ることだけだ」
「私ではお役に立てることはないようです」。医者は慇懃無礼に頭を下げた。
しかし、この時、俺は別のあることを考えていた。
太宰の年譜によると、そろそろ2回目の自殺未遂を起こす頃だ、と。




