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わざと芥川賞落選する

 俺は一人、大阪南港にいた。汚い海。


 キャバ嬢が一緒に死んでくれないんだもん。自分だけ、この海へ飛び込み自殺するつもりだった。


 なのに、近くにある海遊館という大きな水族館へ入ってしまい、しかもイルカに癒されて、死ぬ気が失せた。


 小説でも書こうか。


 太宰の年譜によると、〈昭和十年 八月、『逆行』が第一回芥川賞候補となったが、次席。〉


 俺はたぶん才能があるから、芥川賞を取ることはできる。ピースの又吉が受賞したぐらいだから、俺なんて楽勝に違いない。


 マイナーだが、太宰治賞ももらっておいてやろう。


 だがしかし、だがしかし・・・太宰と同じになるためには、芥川賞の候補になりながら、落選しないといけないのだ。


 ぬおおおぉぉ、なんちゅうー高等技術。


 小説は、なーんにも考えてない。


 タイトルは「生れて、すんまそん」、でどうだ? 太宰的じゃないか。


 世界中を旅して、世界の人に「生れて、すんまそん」と土下座して廻るという話。


 太宰治は候補作を落選になり、選考委員の川端康成にボロカスに酷評され、川端を「刺す」とまで書いている。


 よし、俺もわざと落選になって、選考委員を刺してやろう。


 うひひ。これはセンセーショナルな話題になり、マスコミも連日、俺を取り上げるだろう。


 一夜にして新しいスター誕生だ。うひひ。

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