転
次に娘に求婚したのは、国の王子でした。
そこで娘は森の奥深くにひっそりと暮らしている魔法使いの家のドアを叩きました。
魔法使いは娘を見ると言いました。
「どうしたのですか?娘さん。今度も僕に何か用ですか?」
娘は言います。
「私は求婚をされて悩んでいます。私は真実の愛が欲しいのです。求婚者が本当に私を愛しているのか確かめたいのです。どうか私に真実の愛を確かめるために魔法をかけてくれませんか」
“世の中の人のために魔法を役立てよう”という志を持った魔法使いでしたので
「わかりました。協力いたしましょう」
と、魔法をかける事にしました。
娘が魔法使いの所から返ると、国の王子の所に一羽の小鳥が届けられました。
カゴに手紙がついています。
《俺は悪い魔法使いだ。娘を小鳥の姿に代えてやったぞ》
王子が手紙を読み終わると同時に小鳥を入れていたカゴが消え、小鳥が空に飛び去っていきました。
王子は少しの間途方にくれた様子でしたが、間もなく隣国の姫をお后にしました。
小鳥になった娘が赤い実を加えて、魔法使いの家のドアをつつくと魔法使いが出てきて、娘にかけた魔法を解いてくれました。娘は元の姿に戻りました。
魔法使いは言います。
「これで良かったのですか?娘さん」
娘は答えました。
「構いません。真実の愛ではなかったのです」
娘はこう続けます。
「魔法使いさん、私は気がつきました。こんな私の我がままに付き合ってくれるのは魔法使いさんぐらいです。貴方なら私に真実の愛を与えてくれるでしょう。どうか私と結婚してくれませんか?」
魔法使いは悲しげに微笑むとこう言いました。
「それはとてもうれしい申し出です。しかし、僕は魔法を使い果たしてしまい、間のなく寿命がつきそうなんです」
そして魔法使いの体は煙のように消えてしまいました。