表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

3



穏やかに繰り返される呼吸のリズムが、彼の深い眠りを匂わせる。


ああ、そうか。こんなことになったのは、エイナリ様のせいだったんだ。




「急用が出来てしまったから、会いに行けないということをカイに伝えてきて貰えるかしら」

「かしこまりました」


私は王妃様に急用が入ったことをカイ王子に伝えるためエイナリ様を探していた。しかし見つけることができないまま、仕方なしにカイ王子の執務室へ向かった。



執務室にいたのは、扉の近くで控えるエイナリ様と、机に突っ伏したカイ王子。

「さっきは他人行儀に話しちゃったけど、改めて。久しぶりだね、アイリちゃん」

カイ王子は寝ているのだろうか。エイナリ様の声は小さく、近くにいる私にだけ聞こえるであろう声で話していた。

「お久しぶりです、エイナリ様。お元気そうで何よりです。カイ王子に王妃様は急用でいらっしゃれないということをお伝え願います」

「分かったよ。ねえ、いきなりで何だけど、頼みがあるんだ。いいかな?」

「頼み、ですか。構いませんが」

「今日だけでいいから、アレ…じゃなかった、王子の世話をしてあげてくれないかな。王妃様には僕から話を通しておくからさ」

「王子付きの侍女がいるのでは?」

「そこは気にしないで。ね、だめかな」

「…分かりました」

肯定の言葉を聞くと、エイナリ様は優しく微笑んだ。細められた目の上の、銀色の睫毛に夕日の赤が映る様は、只々美しかった。

「ありがとう。アイリちゃん」





カイ王子の自室。

「お仕えさせていただきますアイリです。よろしくお願いします」

「ああ」

お仕えするといっても、カイ王子はすぐにお休みになられるとのことで私に出来ることは少ない。

寝間着に着替えるのをお手伝いし、ベッドに入られたのを確認して下がることにした。

「お部屋の外におりますのでご用がありましたら鈴をお鳴らしくださいませ…王子?」

しかし、それは阻まれてしまう。

先程と同じように、カイ王子に手首を掴まれることによって。

「カイ王子…?」

手首を掴んだまま黙り込んでしまった王子。ベッドに座っているためだけでなく、俯いてしまっているために表情は伺えない。

「…う、わっ」

自宅の城の自室にあるベット以上に滑らかな肌触りが、背中ごしに伝わる。



私は押し倒されていた。





回想はあと1話で終わる予定です。あくまでも、予定ですが…。


お気に入り登録、ありがとうございます。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ