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「僕に何かご用ですか?」


「「……?!」」

突然聞こえてきた声に驚きつつ振り返ると、今まさに話していた話題の人物、エイナリ様がいらっしゃった。青みのかかった銀色の髪と、それと同じ色の瞳。この王国では珍しいその特徴と、彼が身に纏う純白の騎士服は、彼がエイナリ様であるという何よりの証拠。

そして、さらに私たちを驚かせたのは、エイナリ様の後ろにいた人物。


「カイ王子…」


王妃様と同じ緑がかった金色の髪と、現国王と同じ澄んだ濃い緑色の瞳。大変美丈夫な方なのだが、表情と呼ばれる類のものが一切浮かんでいない。その無表情が私には少し恐ろしい。

「王妃様がカイ王子とお会いしたいと申しておりまして、ご公務の終わる時間帯のご都合をお聞きしたかったのですが…」

いつまでもほうけていられない。そう思った私は気を取り直して臣下の礼をとり、要件を述べた。隣でドロテアがぎこちなく礼をとる様子が見えた。

「そうでしたか。まあ、カイ王子でしたらここにいらっしゃいますし、僕ではなく、ご本人にお聞きしてはいかがでしょうか?」

「そんな…私などが直接話しかけることは出来ません」

今、私はただの侍女でしかない。

生まれがどうであろうと、侍女服を纏う私は王族に仕える身分。侍女は自分がお仕えする貴人以外に直接話しかけることは禁じられているのだ。禁を破れば、不敬罪で捕まる。

「それは彼女のような侍女の話でしょう。国王陛下ですら、貴女を捕らえることは難しいというのに、王子にそれが出来るわけないじゃないですか。ねえ王子?」

彼女のような、というのはドロテアのことか。ドロテアは男爵、それも到底要所とは呼べない北の領地を任されている家の次女だ。確かに彼女なら不敬罪で捕まえることは容易いだろう。比べて私は大公家の娘。五女とはいえ、身分は王族の次に序列される。だけど、身分で罪を軽くしたり、消すことはあってはならないと思う。


「…知らん。俺に聞くな。まったく…おい、アイリ・ハルスカイネ」

冷たい、感情の読めない声。

数年前に城で行われた王族主催の舞踏会でも彼はこんな声で話されていた。


あの時から変わっていないのね。


「……」

「おい、アイリ・ハルスカイネ。聞いているのか?」

「え、あ…申し訳ありません」

一度だけ会話を交わしたことを彼は覚えているのだろうか。

そんなことを考えていると、返事がワンテンポ遅れてしまう。

「何でしょうか、カイ王子」

「母上に伝えろ。今日の午後は仕事がない、と」

「…かしこまりました。では、失礼いたします」

礼をして、下がろうとする。だが、それはカイ王子によって阻まれてしまう。

「カイ王子…?」

右の手首をカイ王子が左手で掴んでいたのだ。

一瞬の沈黙の後、手を離される。カイ王子の行動に首を傾げたいのを我慢しつつ、再び礼をして下がった。




あらすじに追いつきませんでした。もう少し回想にお付き合いください。

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