第6話 社畜だった男はかみの逆鱗に触れる
「ずばり雷魔法だ。
どっか~ん、と相手に雷を叩きつける爽快さ。」
「・・・・・何とかに刃物じゃな、これは渡せんのぉ(ボソ)・・・・・」
「あん、なんか言ったかぁ。」
「いや、特に何も言うてないのじゃ。
風魔法と雷土魔法は素晴らしい魔法じゃが、一つ懸念されることがあるのじゃが。」
何か深刻そうな、かみだじじい。
「風と雷魔法に何か懸念事項があるのか。」
「風と雷魔法というより、貴様自身への懸念事項じゃな。」
「俺にぃ?
何が?
俺自身にいったいどんな懸念事項があるというんだ。」
「・・・・・何とかに刃物じゃて(ボソ)・・・・・」
かみだじじぃは何か深刻そうにつぶやく。
「なんだってぇ? 」
「いやなぁ、これから貴様が行く世界は元の世界の中世欧州といったところなのじゃ。」
「中世ヨーロッパかぁ。」
「風魔法なんか使って素早く街道を走ったりしたら道端に転がって乾いた馬糞を舞い上げて、隣の町に着くころには馬糞まみれになるのじゃな。」
「馬糞まみれはごめんだな。」
「それにその馬糞に変な菌が混じとったらあっという間に謎の感染症に罹ってしまうじゃろ。
そうなるとじゃ、その世界の医療なんぞは期待してはいかんぞ。
元の世界ではちょっとした風邪でも、かの地ではそれこそ命に係わる事態になりかねぬのじゃな。」
「うぁぁぁぁ、そんな世界なんだぁ。
やっぱ、風魔法はやめとくか。」
「そうじゃな、それが無難じゃな。。
そうなるとまずは攻撃よりも防御を考えた方が良いのではなかろうかのぉ。」
うんうん頷く、かみだじじぃ。
「防御かぁ。」
「そこでじゃ、治癒魔法に結界魔法というのはどうじゃ。
治療魔法であればケガや病気でも対処できるし、結界魔法があれば舞い上がる馬糞を浴びずに済むのじゃ。」
指で俺をびしっとして、したり顔の、かみだジジイ
「確かに治癒魔法と結界魔法があれば安全ではあるけども。
攻撃魔法がないと敵に囲まれた場合にそのまま動けなくなるんじゃないの。」
「攻撃力が不安というのなら、治癒魔法の上位魔法である光魔法もセットでくれてやろう。
光の矢、シャイニングアローであればそこそこの敵にも十分に通用するじゃろうしのぉ、
それにアンテッド系の魔物であれば無双できるのじゃぞ。」
「無双かぁ、それは良いな。
鉄壁の防御と治療、そして、攻撃魔法も使える。」
「そうじゃぁ。
冒険者となりパーティを組むのなら引っ張りだこじゃな。」
「パーティに必須の人員かぁ・・・・・・・・
引っ張りだこの人気者。
あっ、でもそれだけ重要な役割なら目一杯働かされそうじゃねぇか。
もう社畜はいやだって、何度言ったら。
ぐずぐずと働かせ続けられるぐらいならここはやっぱり火の魔法で、ドカンと一発、爽快に殲滅で後腐れはなしっていうのでどうだ。」
「いやいやいや,まてまてまて、火の魔法ではケガや病気を防げまい。
火の魔法でドカンと一発なんてやったら、爆風で馬糞が飛び散り、前が見えなくなるほどじゃに。
それに光魔法と結界魔法があれば無理にパーティを組む必要はないのじゃ。
ソロでもそこそこのダンジョンであれば潜れるのじゃないかのぉ。」
なぜか必死に火の魔法を否定して、俺に光魔法を勧めて来る、かみだじじぃ。
「なるほど、無理にパーティを組まなくても俺次第でソロでもやって行けるのか。
社畜化の危険がないのなら、それは良いな。
よし、それに決めた、光魔法と治癒魔法、それに結界魔法でよろしく頼むよ。」
「うむ任された。
それでは着替えやテント、フライパンなどの野宿用品一式をこの袋、アイテムボックスにいれておうかのぉ。
それに魔法は光魔法と治癒魔法、それに結界魔法じゃな。
魔法はあの世界に降臨したときに使えるようにしておくのじゃ。
ほれ。
ほっ。」
言葉の最後に心底安どのため息を漏らしながら、俺に黒いリュックを差し出す、かみだじじぃ。
「このリュックの中に当然あれは入っているんだよな。」
「あれ? 」
俺が何を言っているのか理解できない様子のかみだじじぃ。
「あれだよ、あれ、察しが悪いなぁ。
腹が減ってはなんと言うだろうが。」
「おっ、あれか。
抜かりはないのじゃ。ちゃんと入っておるは。」
「おぉ、入れてくれたのか、気が利くな、かみだじじぃ。」
「神である儂に抜かりはないのじゃ。
2日分の食料として、ほっ〇●っか亭ののり弁と唐揚げ弁当、ハンバーク弁当を2個づづ入れといたわい。
それに緑茶1Lを2本。
気が利くじゃろ。」
どうだと言わんばかりに胸を張る、かみだじじぃ。
「食料じゃなくて、あれだよ、あれ。
わかってるくせに。
それにほか弁なんて、社畜時代を思い出すからなぁ、いまいちだよな。
まぁ、せっかくだから食べるけどな。
それよりもあれは入っているんだよな。」
「あれ? 」
首を傾げる、かみだじじぃ
わかってねぇのか。
「あぁ、あれだな、あれ。
そうじゃそうじゃ。
ちゃんと入れたぞ、儂に抜かりはないわい。」
再び胸を張る、かみだじじぃ。
「おぉ、入れてくれたのか。
ありがとな。
所でその単位は何なんだ。
どんな種類があるんだ。」
「単位?、種類?・・・・・・・」
あれにたいする俺の当然の問いに首を傾げる、かみだじじぃ。
もしかして分かってねぇのか。
「いやいや、ちゃんとわかとっるわい。
単位は個じゃな。
種類は紅映、白加賀、南高などがあるのじゃ。
今回は奮発して南高を入れといたぞ。」
「紅映、白加賀、南高って、いったい何の話だ。」
「だから貴様が種類を聞いてきたから答えたまでじゃ。」
何を言ってんだと言わんばかりの、かみだじじぃ。
「だから何の話だってぇの。」
「貴様がマジックバックに入れたものの単位と種類を聞いてきたので、ちゃんと答えたまでじゃ。
ひとに聞いといてなんだその態度は。」
プンスカし出した、かみだじじぃ。
「だから入れたのは何だって聞いてんの。」
「だからぁ、日本人が遠い国に行くときの必需品の梅干しじゃ。
これから異世界に行くんじゃから、ぜったいほしいじゃろ。
他にも醤油と米も入れといたぞ。
どうしてもこの世界が恋しくなったら少し食すると良いぞ、せめてもの神心じゃ。」
どや顔のかみだじじぃ。
「まぁ、確かにこの世界から離れるにあたってはほしいものばかりなことは確かだが・・・・・・・
俺がほしいと言ってんのは金だよ、金。
これから行く世界の通貨だよ。
まさか通貨もない秘境の地に送り込むつもりじゃないよな。」
「あぁぁぁ、通貨はあるようじゃが・・・・・・・」
テンションがダダ下がりのかみだじじぃ。
「だったら、入れてくれよ。
そのぐらいの餞別は当然だよな、気の利くかみさまなんだろぉ。」
「えぇぇぇぇい、もうあれこれとうるさいわぁぁぁぁ。」
一転、大声で怒鳴り散らし始めた、かみだじじぃ。
年寄りは短気でいかん。
「金は自分で稼げヤァぁぁぁ。
もううだうだ言ってないで早く行け、とっとと行け。
二度とここにくんなぁぁぁぁぁぁ。」
「ちょっ、ちょっ・・・・・・・・・」
突然、激怒したかみだじじぃを見て動揺していた俺の視線が白い靄で覆われた。
以降の更新は5の倍数の日になります.
次は5/15にep.7を公開です。
よろしくお願い致します.




