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危機的状況なのに

 清水峠を越え越後に入った藤田信吉は、街道筋の押さえる直路城に到着。

「遠路はるばる御足労いただきありがとうございます。」

出迎えたのは城主の長尾伊賀守。

藤田信吉「迎え入れていただきありがとうございます。」

長尾伊賀守「沼田での御活躍。こちらにも届いています。5千もの兵を引き連れての越後入り。当主景勝も喜んでいます。」

藤田信吉「とんでもないことでございます。」

長尾伊賀守「こちらは景勝より

『当座を凌ぐのに役立ててください。』

と用意させていただきましたものであります。」


 上杉景勝が藤田信吉のために用意した物。それは……。

米千俵に黄金百両。上馬3頭に生活必需品一式。藤田に同道した者に対しても御合力米等。


藤田信吉「えっ!?」

長尾伊賀守「なにぶん幣家もいくさ続きであり、これだけしか用意する事が出来ず申し訳ありません。」

藤田信吉「いくさ続き。しかも……。」

滅亡の淵に立たされていたにも関わらず。

藤田信吉「いえいえ御心遣いいただきありがとうございます。大事に使わせていただきます。」

長尾伊賀守「これはあくまで……。」

第一便であります。

藤田信吉「えっ!?」

長尾伊賀守「織田の脅威が去り、新発田も動くに動けない状況。京からの船が戻り次第、更なる支援をする事が可能になりますので。それまではこれでお願い申し上げます。」

藤田信吉「京は全て織田方では?」

長尾伊賀守「確かにその通りであります。しかし……。」

名物の行き来までは止める事はできません。

長尾伊賀守「京の情勢を収集しつつ、織田の脅威を取り除く方法を模索している所であります。」

藤田信吉「(兵5千が入っても。と心配していたが、出浦が問題無いと言った理由はこれか……。)上杉様の国の豊かさはわかりました。そこで1つ答えに難い質問を投げ掛けても宜しいでしょうか?」

長尾伊賀守「答える事ができる範囲でありましたら。」

藤田信吉「これだけの国力を有していても……。」

長尾伊賀守「織田の脅威に抗するのは難しい?そう仰りたいのでありますね?」

藤田信吉「申し訳ありません。」

長尾伊賀守「答えはその通りであります。」

藤田信吉「武田が織田と相対したのは無謀以外の何物でも無かった?」

長尾伊賀守「昔はそうでは無かったと思います。その理由は……。」

大市場であり、武器弾薬の購入先でもある京や堺を織田は押さえていなかったから。

長尾伊賀守「しかし今は違います。京や堺、そこに至る道も織田が押さえています。武器弾薬はここを通らなければ手に入りません。そんな相手に喧嘩して……。」

勝てるわけがないでしょう。


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