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伏兵

 藤田信吉による挑発に北条氏邦は激昂。

「こちらに向かって来ましたぞ。」

「善し。兵を退くぞ!!」

と退却を試みる藤田信吉。

「逃がすな!!」

と追撃を指示する北条氏邦。片品川を渡る藤田信吉。これを追い掛ける北条氏邦も片品川を渡った丁度その時。

「撃て!!」

の合図と同時に北条氏邦隊の横から轟音が。

「っく!伏兵か!?小賢しい真似しやがって!!」

と態勢の立て直しを図るべく氏邦が新たな指示を出そうとした。その時。

「突撃!!」

の合図と共にこれまで逃げていた藤田信吉が反転。前方から藤田。左右から伏兵の攻撃をまとも受けた氏邦はここでのいくさは困難と判断。退却を指示。氏邦は片品川を越える事に成功するも残された北条兵は……。


北条氏邦「申し訳御座いませんでした。」

北条氏直「だから言ったであろう。仕掛けがされていると。」

北条氏邦「……。」

北条氏直「叔父上の無事が何より。」

北条氏邦「以後、軽挙は慎みます。」

北条氏直「ところで用土は沼須に?」

北条氏邦「入った様子は見られません。」


藤田信吉「出浦様。ありがとうございました。」

出浦盛清「てっきり氏直が川を渡ると思っていたのでありましたが、氏邦でありましたね。」

藤田信吉「氏直は冷静な……。」

出浦盛清「いや。藤田様を見た氏邦に付いて行く事が出来なかったが正しいかと。」

藤田信吉「ところで出浦様。」

出浦盛清「如何為されましたか?」

藤田信吉「この状況。敵はまだ片品川の対岸でありますが、当初の予定通り……。」

沼須は放棄するのでありますか?

出浦盛清「はい。守りに長けた構造物ではありませんし、沼須にはほとんど兵糧がありません。沼田からの援軍も期待出来ませんので。」

藤田信吉「では予定通り沼田に?」

出浦盛清「それでも構わないのでありますが、折角ですので……。」


北条氏直「何!?用土はまだ……。」

北条氏邦「はい。沼須にも沼田にも入らず外で陣を構えています。」

北条氏直「適当に打撃を加えて。では無く、我らと雌雄を決する?」

北条氏邦「その覚悟かも知れません。」


藤田信吉が陣を構えたのは片品川北方を流れる薄根川。


北条氏邦「我らの進出路の対岸に留まっています。」

北条氏直「彼の地は?」

北条氏邦「自然が作った要害ではありますが、沼田程ではありません。これを私が知っているのは承知の上では無いかと?」

北条氏直「攻め落とせるものなら攻めて来い?」

北条氏邦「恐らく。」

北条氏直「どうする?」

北条氏邦「後れを取ったままでは藤田家当主としての沽券にかかわります。」

北条氏直「わかった。出陣を許可する。」

北条氏邦「ありがとうございます。」

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