【Cheat Ability No.8】愛玩動物型・全自動感情翻訳機(メルヘン・ボイス)
「フェアカ! 癒やしよ! 今、天界で一番求められているのは癒やしなの!」
ルミナリエ様が、ファンシーなリボンを頭に付けて、ふわふわの雲に乗って現れた。
「戦い疲れた現代人の魂には、動物たちとの触れ合いが必要だわ。動物と心を通わせ、森の仲間たちと一緒に魔王城へピクニックに行くような……そんな、絵本みたいにメルヘンで平和なチート、ないかしら?」
私はワゴンの隅で、ピンク色に光るマシュマロのようなオーブを拾い上げた。
「ありますよ。女神様の言い方なら『愛玩動物型・全自動感情翻訳機』。……私から言わせれば、ただの『夢壊し拡声器』です」
「あら、可愛いじゃない! どんな素敵なチートなの?」
「これを持っていれば、周囲のあらゆる動物の心の声が、可愛らしい少年の声で脳内に翻訳されます。言葉の壁を越えた友情が芽生えること間違いなしです」
「素敵! 小鳥たちとお喋りしながら旅をするなんて、最高にエモいわ! 採用!」
ルミナリエ様がピンクの羽根ペンでサインする。私は耳を塞ぎながら、小声で付け加えた。
「ただし、野生の厳しさを忘れないでください。翻訳されるのは、彼らの『本音』だけです」
数カ月後。異世界では、一人の勇者が森の中で膝をつき、耳を塞いで震えていた。
彼の周りでは、可愛らしい小鳥たちが「おい、あの二本足、美味そうじゃね?」「あっちのリスの縄張り、明日の朝には血の海にしてやんよ」と、ショタボイスでえげつない殺伐とした会話を繰り広げている。
さらに、彼が愛馬として大切にしていた白馬からは、「……今日も重てぇな、この無能。早く落馬して死なねぇかな」という毒言が、鈴を転がすような美声で四六時中聞こえてくるようになった。
勇者は、メルヘンな世界で「誰も信じられない」という孤独な真実を知ることになった。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ〜。癒やし、友情、絶望の本音、なんでもござれ」
私は今日も、馬に全力で無視されながら歩く勇者の背中を眺め、ワゴンを引く。
「あ、そちらのお客様。その『お菓子の家生成』チートは、自分の家の壁を食べると自分のカロリーとして計算されるので、食べすぎると家ごと消滅する仕様ですので、返品不可ですよ?」
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
動物たちの声が可愛いのに内容がエグいという、シュールなメルヘン回になりました。
知らないほうが良いこともあるとはこのことか。




