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チート売りの少女/女神は最近の転生者が「普通すぎるチート」に飽きていると嘆き、斬新なアイデアを求めて私のところにやってくる!  作者: 弌黑流人


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【Cheat Ability No.7】自己防衛型・正義感情増幅器(ジャスティス・フレア)

「フェアカ! 世界には今、圧倒的な『正義の熱量』が必要なのよ!」


ルミナリエ様が、聖歌のようなBGMを背負って売店に現れた。その手には「天界治安維持月間」と書かれた、やけに派手なタスキが掛けられている。


「悪を断固として許さない、燃えるような心を持った勇者。彼が怒れば怒るほど、世界から邪悪が浄化されていく……そんな、清々しいほどに熱いチートはないかしら?」


私はワゴンの引き出しから、赤黒く拍動し、触れるだけで火傷しそうな熱を放つオーブを取り出した。


「ありますよ。女神様のお言葉を借りるなら『自己防衛型・正義感情増幅器』。……私流に呼ぶなら、ただの『憤怒の起爆剤』です」


「あら、かっこいい名前じゃない! どんな救済をもたらすの?」


「使い方は簡単。本人が『許せない』という憤怒を感じた瞬間、周囲の酸素を燃料にして、視界に入るものすべてを焼き尽くす聖なる炎を放ちます。文字通り、悪を根絶やしにする火力です」


「素敵! 悪を焼き払う救世主の誕生ね! エモいわ、採用!」


ルミナリエ様が快活に笑い、承認印を叩きつける。私はその書類をファイルに閉じながら、消え入りそうな声で付け加えた。


「ただし、この炎は『怒りの原因』がこの世から完全に消失するまで止まりません。もし、悪党を倒した後に『こいつのせいで私の家が壊れた、腹立たしい』と少しでも思えば、今度は壊れた自分の家を焼き尽くし、隣人を焼き、国を焼く。本人の心が完全に鎮火しない限り、世界が灰になるまで止まらない仕様です」


数カ月後。異世界では、一人の勇者が涙を流しながら、自分が守りたかったはずの王国を更地に変えていた。


彼は正義感に溢れていた。ゆえに、惨状を見ては「なぜこんな悲劇が起きるんだ」と憤り、その怒りがさらに周囲を焼き尽くす。


救済の炎は、彼の「正義の心」がある限り、燃料を求めて広がり続けていた。


「チート、チートはぁ、いらんかねぇ〜。正義、熱情、焦土、なんでもござれ」


私は今日も、水平線の彼方まで赤く染まった空を眺めながら、ワゴンを引く。


「あ、そちらのお客様。その『博愛』……じゃなくて『色欲』を司る『全生物全方位求愛フェロモン』は、対象が人間だけじゃなく、魔物や植物、果ては無機物にまで熱烈に言い寄られて物理的に押し潰される仕様ですので、返品不可ですよ?」


ご拝読ありがとうございます。

いかがだったでしょうか?

悪を焼き払うとは限らなかったようだ……。

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