【Cheat Ability No.6】資源再分配型・等価交換超越貨(グリード・コイン)
「フェアカ! 次は『豊穣』……そう、飽くなき向上心を持った勇者をプロデュースしたいの!」
ルミナリエ様が、黄金の光を撒き散らしながら売店に舞い降りた。手には「天界査定アップ項目:経済活性化」と書かれた資料を握りしめている。
「今の異世界は停滞しているわ! 何も持たない若者が、その渇望を力に変えて、世界中の富を動かしていく……そんな、富の再分配を促す『希望のチート』はないかしら?」
私は、表面がベタベタと脂ぎった、黒ずんだ金貨の束を無造作に差し出した。
「これですね。本名『強欲型・等価交換無効化金貨』。女神様風に言うなら……『等価交換超越貨』です。これを使えば、道端の石ころ一つを対価にして、伝説の武具でも王国の所有権でも、望むものすべてと交換できます」
「素晴らしいわ! 最小の投資で最大の幸福を掴む、究極のサクセスストーリーね! エモいわ、採用!」
私は、ルミナリエ様が差し出した承認印を書類に押し、冷淡に付け加えた。
「ただし、この金貨は『強欲』を吸って増殖します。手に入れた対価に対して、本人が『もっと欲しい』、あるいは『これにはもう飽きた』と思った瞬間、それまで支払わなかった差額分の『不幸』が、周囲に強制的にバラ撒かれます。神界の言葉で言えば『因果の帳尻合わせ』、私から言わせればただの『負債の押し付け』です」
数カ月後。異世界では、石ころ一つで手に入れた贅の限りを尽くす勇者が、黄金の城に君臨していた。
しかし、彼が「この生活にも飽きてきたな」と呟いた瞬間、隣接する商業都市で大火災が発生。彼が新しい美女を望めば、近隣諸国で疫病が流行る。
彼は望み通り世界の富を独占したが、その代償として、彼が欲をかくたびに世界が物理的に削り取られ、周囲を絶望の底に沈めていく「歩く経済災害」となっていた。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ〜。希望、豊穣、絶望、なんでもござれ」
私は今日も、豪華な城の窓から、自分が豊かになるたびに滅びていく世界を見て震える勇者を想像し、ワゴンを引く。
「あ、そちらのお客様。その『慈愛』……じゃなくて『嫉妬』を司る『共有型・能力平均化装置』は、他人の才能を奪うたびに自分自身の個性が消えて、最終的にただの透明人間になる仕様ですので、返品不可ですよ?」
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
これだともう、勇者じゃなくて災厄の魔人って称号に変わっていそう。




