【Cheat Ability No.4】因果強制執行型・物語整合性維持装置(プロット・コレクター)
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ〜。伏線の見落とし、ありませんかぁ〜?」
転生前広場に、私の声が虚しく響く。最近の転生者は「俺、何かすごいことやり忘れてない?」という漠然とした不安を抱えやすい。そんな彼らにうってつけの商品がある。
「フェアカ! 今回の転生者、すっごく几帳面なのよ!」
ルミナリエ様が、几帳面に整頓された魂の履歴書を手に現れた。
「『物語の途中で投げ出された謎をすべて解明したい』『モヤモヤする結末は嫌だ』って言うの。完璧なハッピーエンドを目指す、志の高い勇者様よ。何か彼をサポートするチート、あるかしら?」
私はワゴンの引き出しの奥から、カチカチと時計のような音を立てる機械仕掛けのオーブを取り出した。
「これですね。『因果強制執行型・物語整合性維持装置』。通称、プロット・コレクターです。これを所持していれば、本人が忘れていても、過去にばら撒いた『伏線』を世界が勝手に回収してくれます」
「素晴らしいわ! 謎がすべて解ける快感……まさに知的でエモいわね! 採用!」
「……一応、言っておきますけど、女神様。この装置は『整合性』を優先します。つまり、ご都合主義は一切許されませんよ」
「いいのよ、完璧なら!」
数カ月後。異世界のラスボス戦直前。勇者は叫んだ。
「なぜ、あの時あの村の老婆は、俺にこの古びた鍵をくれたんだ……!?」
その瞬間、装置が作動した。勇者の背後で、かつての老婆(に変装していた派遣社員)が猛スピードで現れ、脚本通りに鍵の正体を説明し始めた。
しかし、装置の「整合性維持」は暴走した。
勇者が幼少期に言った「お前を一生守るよ」という幼馴染への適当な約束(伏線)を回収するため、既に他国へ嫁いでいた彼女を無理やり連行し、魔王城の真っ只中に転送。
さらには、勇者が序盤で「腹痛い」とついた嘘の伏線を回収するため、決戦の最中に勇者の腹部へ強制的に激痛を走らせた。
魔王との最終決戦は、伏線回収という名の「過去の精算」に追われ、勇者は感動する暇もなく、ただただ自業自得の地獄を味わうことになった。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ〜……」
私は今日も、過去の自分の発言に首を絞められている勇者の断末魔を遠くに聞きながら、ワゴンを引く。
「あ、そちらのお客様。その『死に際に必ず辞世の句を詠める』チートは、五七五にまとまるまで死ねない仕様ですので、苦痛が長引いても返品不可ですよ?」
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
伏線回収はもしかしたら地獄の仕様なのかもしれない。




