【Cheat Ability No.38】純愛執着型・等価羨望鏡(エンヴィ・ミラー・バインド)
「日和ちゃん! 今日の新作は、胸の奥がキュンと締め付けられるような、切ない乙女心の結晶よ! 題して『誰よりも輝きたい貴女のための、ミラクル・チェンジ・ミラー』!」
ルミナリエ様がワゴンの前で、キラキラした装飾のコンパクトを掲げています。
「ルミナリエ様、それ……どう見ても『嫉妬』の能力ですよね? 商品説明に『対象の才能を自分と入れ替える』って不穏なことが書いてありますけど」
「違うわよ日和ちゃん! これは嫉妬じゃなくて、理想の自分への『最短距離』なの! あの人の素敵な剣技、あの人の美しい魔法……それを鏡に写すだけで、自分とシャッフルできちゃうの。憧れを形にする、最高にエモい魔法だと思わない?」
日和は、ワゴンの隅で古い硬貨を磨いているフェアカさんに助けを求める視線を送りました。
「……フェアカさん、これ絶対まずいですよ。才能を奪われた方はどうなるんですか?」
フェアカさんは顔を上げず、淡々と答えました。
「入れ替わるだけよ。鏡の持ち主は対象の才能を手に入れ、対象は持ち主の『無能さ』を押し付けられる。……でも、ルミナリエ様。その鏡が『嫉妬』を糧に動いている以上、代償は免れないわよ」
フェアカさんは鏡の裏側にある、どす黒い刻印を指差しました。
「これは『純愛執着型・等価羨望鏡』。他人の才能を奪った瞬間、奪った本人には『自分より優れた者への猛烈な恐怖』が植え付けられるわ。常に誰かに抜かれるんじゃないか、奪われるんじゃないかと怯え続け、最後には鏡に映る『今の自分』さえも他人に思えて、自分自身を呪い殺すことになるわね」
「……え、自分を呪うの? それはちょっと、ドロドロしすぎてエモくないわね……」
ルミナリエ様が引いている間に、フェアカさんは鏡を布で覆い、奥の方へ追いやってしまいました。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。才能の略奪、終わらない疑心、鏡の中の他人、なんでもござれ」
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
嫉妬の醜さを、ルミナリエ様のキラキラした解釈と、フェアカさんの救いのない副作用で描きました。




