【Cheat Ability No.37】無限蒐集型・黄金郷の残照(ゴールデン・グリード・アーカイブ)
「ちょっと日和ちゃん聞いて! 今日の新作、最高にエモいわよ! 題して『愛する世界を丸ごと抱きしめたい、欲張りな貴女への贈り物』!」
広場に響き渡るルミナリエ様の華やかな声。彼女が指差したワゴンの棚には、黄金色に輝く奇妙な砂時計が並んでいました。
「ルミナリエ様、それ……平たく言えば『強欲』のチートですよね? 説明書きに『視界に入るもの全てに所有権を上書きする』って書いてありますけど……」
「日和ちゃん、言い方が可愛くないわ! これは『強欲』じゃないの、あふれんばかりの『情熱』よ! この砂時計を掲げれば、道端の石ころから敵の武器、さらには魔王の城まで、全部『自分のもの』として定義し直せちゃうの。究極の独占欲、まさに愛のカタチじゃない?」
日和は引きつった笑顔で、隣で冷めたお茶を飲んでいるフェアカさんを見ました。
「……フェアカさん、これ本当に売るんですか? 世界中の所有権がぐちゃぐちゃになりますよ」
「いいんじゃない? そもそもこの世界に、最初から誰かのものなんて決まってるものは一つもないわ。……ただし、ルミナリエ様。そのチート、最後にどうなるか教えたかしら?」
フェアカさんは、砂時計の底に溜まった「黒い砂」を指差しました。
「これは『無限蒐集型・黄金郷の残照』。手に入れたものの質量は、そのまま持ち主の『魂の重さ』に加算されるわ。世界を丸ごと手に入れた瞬間、その重さに耐えきれず、持ち主は自分自身の欲に押し潰されて、ただの黄金の像に変わる。……まあ、強欲な最後としてはお似合いね」
「……えっ、像になっちゃうの? それはちょっと、重たすぎてエモくないかも……」
ルミナリエ様が頬を膨らませて退散する横で、フェアカさんは次の商品を並べ始めました。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。終わりのない収集、魂の過積載、黄金の孤独、なんでもござれ」
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
七つの大罪の一つ「強欲」を、ルミナリエ様流のキラキラした解釈と、フェアカさんの冷徹な副作用で描きました。




