【Cheat Ability No.30】過剰在庫一掃・強制福袋(デッドストック・バースト)
「日和、今日は一歩も引いちゃダメよ。在庫を捌き切るまで、この広場を占拠するわ」
フェアカさんはいつもの気だるげな表情を封印し、ハチマキを締めてワゴンの前に立っていました。今日は月に一度の在庫売り尽くしの日。普段は慎重に売るフェアカさんも、今日ばかりは「返品不可・苦情無視」の叩き売りモードです。
「ネットスーパー日和、タイムセール開始です! 今から一時間、不人気商品セットを経験値一時間分で投げ売りします!」
私の合図と共に、広場にいた転生者たちがワゴンに殺到しました。
「はい、そこの勇者様! こちら『絶対に折れないけれど、振るたびに持ち主の恥ずかしい秘密を叫ぶ聖剣』と、『防御力は高いが、装備中はずっと語尾がピョンになる鎧』の抱き合わせセットです! 今ならおまけで『一生消えない呪いの付け髭』も付いてくるわよ!」
「ちょ、そんなの誰が買うんだよ! ……いや、でもこの安さは魅力的……ぐぬぬ!」
フェアカさんは、ダブりまくった「使い道の分からない魔道具」を次々と福袋に詰め込んでいきます。
「次はこれ! 『一分間だけ無敵になれるが、その間だけ全力で阿波踊りを踊り続けなければならない薬』十個セット! タイムセールであと三回分、おまけするわ!」
広場はもはや商売というより、押し付け合いの戦場でした。日和のネットスーパー画面には「在庫処分! 返品不可!」の文字が躍り、注文ボタンを押した瞬間に、空から望んでもいないセット商品が降ってきます。
「フェアカさん、これ! 『自動で敵を追尾するが、味方も等しく攻撃する手斧』が百本も余ってます!」
「それは『友情崩壊・バーベキューセット』として、火打ち石と抱き合わせで売りなさい! ほら、そこのパーティ解散危機の冒険者たちに!」
中には、レベル1に落ちぶれてアルバイト中のルミナリエ様とメトリー様が、「これ、私たちの神権を取り戻すのに使えないかしら……」と、売れ残った『光るだけの泥団子』を真剣に品定めしている姿もありました。
日が暮れる頃には、ワゴンの棚はスカスカになり、代わりに広場には「変な装備」を身につけて途方に暮れる勇者たちの山が築かれていました。
「……ふぅ。これでようやく、引き出しの奥に風が通るわね。日和、お疲れ様。売上は……まあ、端金だけど、ゴミを処分できた爽快感はプライスレスよ」
フェアカさんは満足げに、空になったワゴンでコーヒーを啜りました。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。恥辱の聖剣、阿波踊りの無敵、友情破壊の斧、なんでもござれ。……あ、日和、その売れ残った『一生脱げないアヒル型ヘルメット』、アルバイトの二人にでもあげておきなさい」
「フェアカさん、最後まで容赦ないですね……」
日和は、経験値以上に「売ってはいけないものを売った」という奇妙な達成感に包まれながら、祭りの後のような広場を片付け始めるのでした。
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いかがだったでしょうか?
不人気商品のオンパレードをクリックしたことで、ワゴンがすっきり綺麗になりました。




