【Cheat Ability No.26】神権公認・資産差押令状(フェイク・タックス・バイザー)
「……静粛に。私は天界中央税務審議会の特任徴収官である。日和、及びフェアカ。貴様ら、今回のケーキ取引において発生した莫大な経験値を正しく申告していない疑いがある」
重厚な法衣を纏い、威厳に満ちた白髭を蓄えた老神が、黄金の巻物を手に現れました。彼の背後には「税」と書かれた旗を持った屈強な役人たちが並んでいます。
「えっ、税金!? 天界にもそんなのあるんですか!?」
日和が青ざめてウィンドウを閉じようとすると、老神は鋭い視線でそれを制しました。
「当然だ。特に経験値の大量保有は世界の均衡を乱す。今すぐ全額をこちらに供託せよ。さもなくば、そのワゴンとネットスーパーの営業権を永久に剥奪する!」
あまりの迫力に、日和が経験値を転送しようとしたその時。横で爪を研いでいたフェアカさんが、鼻で笑って老神の前に立ちふさがりました。
「……ねえ、おじいさん。その法衣、裏地の刺繍が『初心者用・防御力プラス5』のままよ? それに、足元のブーツ。昨日うちのワゴンで売れ残った『歩くたびにキュッキュと鳴る呪いの靴』じゃない」
フェアカさんが指を鳴らすと、老神の足元から「キュッキュッ!」というマヌケな音が響き渡りました。
「な、何を言う! これは天界の神聖な……」
「日和、そいつの顔をよく見て。そいつが被っているのは、私が昨日裏メニューで紹介した『神権公認・資産差押令状』……の、偽物キットよ。三時間だけ神様のフリができるっていう、ボツになったおもちゃ」
フェアカさんが老神の髭をひっつかんで引き剥がすと、そこから現れたのは、経験値欲しさに目がくらんだ、かつての「性格が丸くなるキャンディ」の被害者、あの元農家勇者でした。
「ひ、ひぃ! バレたか! 経験値さえあれば、俺だって最強になれると思ったんだ!」
「……勇者が詐欺師に転職なんて、世も末ね。日和、こいつの『偽装キット』をネットスーパーで買い取ってあげなさい。買い取り価格は……そうね、経験値一ポイントでいいわ」
フェアカさんの冷徹な……いえ、合理的な判断により、偽の税務署長は一瞬にして身ぐるみを剥がされ、たった一ポイントの経験値を握らされて広場から追い出されました。
「フェアカさん、すごいです! よく偽物だって分かりましたね」
「まあね。本物の税務署なら、もっと『エモくない』方法で、根こそぎ持っていくもの。……さて、日和。その浮いた経験値で、明日の仕入れを倍にするわよ」
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。偽造神格、一ポイントの勇者、笑えない脱税、なんでもござれ」
日和は、偽物とはいえ「神様」に怯えた自分の心臓を抑えながら、フェアカさんの観察眼の鋭さに改めて舌を巻くのでした。
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
欲望に駆られた転生者の悪知恵を、フェアカが商品の知識で一蹴する展開になりました。




