【Cheat Ability No.25】甘味依存型・精神安定糖(スウィート・ピース・キャンディ)
休日明けの転生前広場。フェアカさんは珍しく機嫌が良いのか、ワゴンの看板を書き換えていました。
「日和、今日はこれで行くわよ。昨日の手料理のお礼に、少しだけ『毒』を抜いた特別製」
フェアカさんが並べたのは、パステルカラーの柔らかな飴玉。能力名は、スウィート・ピース・キャンディ。
これを舐めると、日々の過酷な冒険や女神からの無茶振りで荒んだ心が、まるでお花畑にいるかのように多幸感で満たされるという、彼女にしては珍しく「純粋に良いもの」に近い商品です。
「わあ、これなら安心して売れますね!」
私が感心していると、私のネットスーパーのウィンドウが、これまで聞いたこともないようなけたたましいアラート音を鳴らしました。
「えっ、何!? ……フェアカさん、とんでもない注文が入りました! 依頼主は……『冥界の最下層に封印されし古の魔王』!? 注文内容は、最高級の……苺のショートケーキ、一万個!?」
画面には、どす黒いオーラを放つ注文票が浮かんでいます。支払いは「魔王の寿命三千年分」という、これまた桁外れな経験値換算のエネルギーでした。
「一万個って、うちの在庫全部ひっくり返しても足りませんよ! それに、冥界の最下層なんてどうやって配送すれば……」
私がパニックになっていると、広場には甘い飴の香りに誘われて、いつも以上に殺気立った「甘いもの中毒」の勇者たちが押し寄せてきました。
「おい! その飴をくれ! さっさとしないと暴れるぞ!」
「日和ちゃん、ケーキはまだ!? 魔王軍の公式SNSで『今からケーキパーティーだ』って告知が出てるんだけど!」
フェアカさんの「甘口チート」を求めて狂喜乱舞する勇者たちと、魔王からの「超巨大ケーキ発注」という無理難題。広場は休日の静寂が嘘のような、甘ったるくて混沌とした戦場へと変貌しました。
「……ふふ、日和。どうやら私の甘口チートも、使い方次第では立派な凶器になるみたいね。ほら、勇者たちが多幸感のあまり、魔王へのケーキ配送を『ボランティアで手伝う』って言い出してるわよ」
フェアカさんは、飴を舐めてヘラヘラと笑いながら「冥界までケーキ運び競争」を始めた勇者たちを眺めて、楽しそうに目を細めました。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。糖分過多の幸福、命がけの配送、魔王のティータイム、なんでもござれ」
私は、空飛ぶワゴンから次々と射出されるショートケーキの山と、それを追いかける勇者たちの群れを見送りながら、これが天界の「日常」なのだと改めて思い知らされるのでした。
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
フェアカの甘いチートがきっかけで、勇者と魔王が(ケーキを通じて)奇妙な繋がりを持つという、カオスでスウィートな新展開になりました。
《ご連絡》
明日以降の掲載する時間帯と投稿数の変更をお伝えいたします。
時間帯は正午。投稿数は1回。
今後ともよろしくお願いいたします。




