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チート売りの少女/女神は最近の転生者が「普通すぎるチート」に飽きていると嘆き、斬新なアイデアを求めて私のところにやってくる!  作者: 弌黑流人


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【Cheat Ability No.21】記憶対価型・終焉執行剣(メモリアル・エッジ)

「日和、しばらく店を任せるわ。……ああ、ルミナリエ様が来ても適当に流しておいて。在庫が底をつきそうだから、少し『裏庭』まで素材を拾いに行ってくる」


フェアカはそう言い残すと、いつもの気だるげな様子で、しかしワゴンから一振りの「鞘のない剣」を取り出しました。それは、かつて彼女が勇者として世界を救った際に使っていた、彼女自身の「最強のチート能力」の成れの果てです。


彼女が向かったのは、転生前広場から遥か下層にある「境界の塵溜め」。


そこは、打ち切られた物語や、消滅した世界の残滓が、バグやノイズとなって積み重なっている、神々ですら避ける殺伐とした場所です。


「……さて、今日の仕入れは何があるかしら」


フェアカの前に、ノイズの塊のような異形の怪物が現れます。消えたはずの魔王の怨念が、バグとして再構成された存在です。


彼女は無造作に、手に持った剣を振るいました。

能力名は、メモリアル・エッジ。

一撃でどんな因果も断ち切る「一撃必殺」の剣。ですが、その代償はあまりに酷薄です。


「……あ。今、実家の庭に咲いていた花の名前を忘れたわ」


一振りするごとに、使用者の大切な記憶がランダムに一つ、完全に消去される。

フェアカはこの剣を使って世界を救い、その過程で故郷の景色も、両親の顔も、自分が何のために戦っていたのかという理由さえも、すべて失ってしまいました。


今の彼女に、戦う動機は残っていません。ただ、剣を振るうという「技術」だけが、空っぽになった心に刻まれているのです。


バグの怪物を一瞬で塵に変えたフェアカは、その核となっていた「歪んだ因果の結晶《混沌石》」を拾い上げました。これこそが、ワゴンに並ぶ「欠陥チート」の原材料です。


「……よし、これで『必ず当たるけれど、当たるたびに親友が自分を忘れる弓矢』が三本は作れるわね」

彼女は消えた記憶の分だけ軽くなった頭で、淡々と仕入れの計算をします。


彼女が売っているのは、かつての自分と同じように「何かを得るために、取り返しのつかない何かを失う」という残酷な選択肢そのもの。


「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。大切な思い出、捨て去った誇り、見返りのない勝利、なんでもござれ」


広場に戻ったフェアカは、メイドの淹れた最高級の紅茶を飲みながら、失った記憶の穴を埋めるように、無心で新作の呪物を組み上げ始めました。


「フェアカさん、おかえりなさい! ……あれ? なんだか少し、顔色が悪い気がしますけど、大丈夫ですか?」


心配そうに駆け寄る日和に、フェアカは力なく笑って答えました。


「大丈夫よ。ただ、今日食べたお昼ご飯の内容を忘れちゃっただけ。……日和、あなた、私のこと忘れないでね」


冗談とも本気ともつかないその言葉に、日和は少しだけ胸が締め付けられるような予感を覚えるのでした。


ご拝読ありがとうございます。

いかがだったでしょうか?

フェアカの「一撃必殺」の代償が、彼女自身の人間性を削り取ってきたというシリアスな背景が見えてきました。

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