【Cheat Ability No.20】神域限定・次元超克お取り寄せ(ルミナリエ・セレクト・スイーツ)
「日和ちゃん! ネットスーパー開店おめでとう! 私、とっても良いアイデアを思いついちゃったわ!」
ルミナリエ様が、背後に後光を撒き散らしながら「ネットスーパー日和」のカウンターに身を乗り出しました。その手には、キラキラとデコレーションされた企画書が握られています。
「あのね、このスーパーの流通ラインを使って、天界で今一番バズってる『神域お取り寄せスイーツ』を限定販売しましょう! ターゲットは異世界の孤独な勇者たち。甘いもので彼らの心をエモく癒やすのよ!」
「あ、ルミナリエ様。お話は嬉しいんですけど、今すでに注文が立て込んでいて……」
日和が困り顔でウィンドウを操作しますが、女神様は止まりません。勝手に日和のシステムに「神権限」で割り込み、特設バナーを作成してしまいました。
「はい、公開完了! 題して『女神の気まぐれ・虹色雲のマカロン』! 一個につき経験値一ヶ月分、あるいは魂の輝き十グラムで販売よ!」
その瞬間、日和のウィンドウが激しく点滅し始めました。
天界のスイーツが買えると知った転生者や、さらには異世界の魔王軍にまで通知が飛び、アクセスが集中したのです。
「ちょっと、ルミナリエ様! サーバーが……いえ、私の指先の演算処理が追いつきません! 商品の発送準備はどうなってるんですか!?」
「あ、発送? それは日和ちゃんのスキルでなんとかしてくれると思ってたわ!」
ルミナリエ様はテヘペロと舌を出して笑っていますが、現場は地獄です。
注文された「虹色雲のマカロン」は、その名の通り雲でできているため、発送から数分で消滅してしまうという致命的な欠陥がありました。届いた頃にはただの「甘い空気」になっているマカロンに対して、経験値を支払った勇者たちから怒りの問い合わせメールが殺到します。
「『届いたら箱が空だったぞ!』って、ものすごい数のクレームが来てます! フェアカさーん、助けてください!」
隣のワゴンで欠伸をしていたフェアカさんは、目も合わせずにコーヒーを飲み干しました。
「言ったでしょ、そこはあなたのワゴン。女神の無茶振りに応えるのも、立派な店主の仕事よ。……まあ、アドバイスをあげるなら、そのマカロンを『ダイエット用・ゼロカロリースイーツ』として再出品して、差額を上乗せすれば?」
「それだわ! さすがフェアカ、エモいわ!」
ルミナリエ様は勝手に納得し、日和のウィンドウを書き換え始めました。
結局、日和は一日中「消えかかるマカロン」の梱包と、怒れる顧客への言い訳に追われることになったのです。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。って、日和、あんまり泣かないの。これが天界で働くっていう『代償』なんだから」
フェアカさんは、少しだけ同情したような目で、半泣きでマカロンを詰め続ける日和の背中を眺めていました。
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
ルミナリエ様のミーハーな乱入により、日和が天界での商売の洗礼を受ける回になりました。




