【Cheat Ability No.2】強制好感度調整型・集団心理操作術(ハーレム・プランナー)
「フェアカ! 大変よ、少子高齢化が止まらないわ!」
ルミナリエ様が、今度は血相を変えて売店に飛び込んできた。彼女が広げたのは、とある中堅異世界の人口統計グラフだ。
「このままだと、100年後には魔王と戦う人間がいなくなるわ。一刻も早く、効率的に血統を増やせる勇者を送り込まないと!」
私は補充用の『無限に湧き出るミネラルウォーター(ただし味が薄い)』を棚に並べながら、冷めた声を出す。
「……つまり、勇者にハーレムを作らせろ、と?」
「そう! それも、ただのハーレムじゃないわ。相手は『ツンデレ魔法使い』『おっちょこちょい騎士』『薄幸の聖女』という黄金比率。これをパッケージ化して、勇者に斡旋するのよ」
「女神様、それはもはやチートじゃなくてただの結婚相談所です。第一、勇者が全員女好きとは限りませんよ」
私はため息をつき、在庫の奥から埃を被ったスキルオーブを取り出した。
「これを使ってください。『強制好感度調整型・集団心理操作術』。通称、ハーレム・プランナーです」
「あら、素敵な名前じゃない。どんな能力なの?」
「勇者の半径10メートル以内にいる異性の好感度を、強制的に『最大値』まで引き上げます。ただし、その代償として、勇者本人の『異性に対する興味』が、半径1メートル以内に近づくほど『反比例して減少』します」
ルミナリエ様は少し考え、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「つまり……周りは死ぬほど求愛してくるのに、本人は死ぬほど嫌悪感を抱くってこと? その究極のじれったさ、エモいわ! 採用!」
数カ月後。異世界では、絶世の美女三人に囲まれながら、極度の人間不信に陥った勇者が、唯一心を通わせられる「商人の馬」と共に荒野を旅する姿が目撃されていた。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ〜。無双、ハーレム、なんでもござれ」
私は今日も、噛み合わない愛の悲鳴を背中で聞きながら、ワゴンを引いている。
「あ、お客様。そちらの『寝ているだけで世界を救う』チートは、本人の寿命を前借りして眠るタイプですので、寝すぎにはご注意くださいね?」
この物語は「救済」ではなく「業」の物語。
フェアカが売るチートは「便利さと引き換えに、何か大事なものが壊れる」というブラックな代償がセットになっています。
この「皮肉」や「毒」こそが、大人も楽しめる魅力のひとつ。
それでは、今後ともご贔屓のほど、よろしくお願いいたします。




