【Cheat Ability No.19】等価交換型・次元接続市場(ネットスーパー・キャンディ)
「フェアカさん、もう嫌です! あんなに丸くなって転がってる人たちに、これ以上キャンディは売れません!」
日和は、広場をピンボールのように跳ね回る「元」戦士たちの球体を見ながら、半泣きで訴えました。
「落ち着きなさい、日和。あと六時間もすれば勝手に角が戻って、また元のトゲトゲした連中に戻るわよ。だから放置でいいわ。……でも、そんなに飴売りが嫌なら、これに変えてみる?」
フェアカさんはワゴンの奥から、液晶画面のように七色に発光する不思議な飴玉を取り出しました。
「これは『ネットスーパー・キャンディ』。日和、これを精製して自分で食べなさい。そうすれば、指先一つで異世界のあらゆる物資を注文・販売できるスキルが手に入るわ。……ただし、これまでの特殊な飴を精製する能力は失われるけど、いい?」
「飴を売らなくて済むなら、なんでもします!」
日和がその飴を口に含むと、彼女の目の前に半透明のウィンドウが浮かび上がりました。そこには「生鮮食品」から「魔導ポーション」まで、あらゆる商品がリストアップされています。
こうして、チート売りワゴンの隣に、新しい看板が掲げられました。
「さぉ、みなさん!ネットスーパー日和!堂々オープンでーす!」
「いらっしゃいませ! ここでは現世の品物から異世界の希少素材まで、なんでも取り扱っています! お支払いは現金、または余っている経験値からお選びください。買取も行っていますが、一度取引した現金や経験値の返却、交換、払い戻しは一切できませんのでご注意を!」
日和が明るく声を張り上げると、さっそく「丸さ」から戻り始めた冒険者たちが集まってきました。
「おい、その『最高級カップラーメン』を経験値三日分でくれ!」
「こちらの『魔王の角』、現金で買い取ってくれないか?」
日和のウィンドウを通じて、莫大な富と経験値がやり取りされ始めます。日和自身には、フェアカさんが施した調整のおかげで副作用は出ませんが、利用する側には「生活のすべてをネットスーパーに依存してしまう」という、現代人には馴染み深い中毒症状が広がりつつありました。
フェアカさんは、隣でテキパキと注文を捌く日和を眺めながら、満足げにコーヒーを啜ります。
「……私の仕事が半分減って、しかも手数料が入る。これこそが、労働環境の本当の改善ね」
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。って、フェアカさん! 注文が多すぎて指が止まりません! 手伝ってください!」
「お断りよ。それはあなたのワゴンなんだから」
商売敵か、あるいは頼もしい相棒か。二つのワゴンが並ぶ転生前広場は、今日もまた新しい欲望で活気づいていくのでした。
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
日和が「ネットスーパー」という強力な(そして依存性の高い)インフラを手に入れ、独自のテナントを構えることになりました。




