【Cheat Ability No.18】強制的人格円満化円薬(マイルド・ボール・キャンディ)
「はい、新作のテスト販売です! 舐めるだけで心が穏やかになり、性格が丸くなるキャンディはいかがですか?」
私の明るい声が広場に響きます。指輪の効果でやる気がほどよく抜けているせいか、押し寄せる荒くれ者たちの威圧感も、今は「賑やかなBGM」程度にしか感じません。
今日のお客さんは、見るからに強面なドワーフの戦士や、常に周囲を睨みつけている暗殺者の男性たちです。彼らは半信半疑ながらも、一個百ゴールドという安値に釣られて、真っ赤な丸いキャンディを口に放り込みました。
「ふん、性格が丸くなるだと? 誰に向かって……んぐっ、お、おおお?」
一瞬でした。
キャンディを舐めた直後、筋骨隆々の戦士の目つきがトロンと溶け、角ばった肩のラインが「ふにゃっ」と丸みを帯び始めました。
「……なんだろう、この幸せな気持ち。戦うなんて、とっても無意味な気がしてきたよ。それより、あっちのベンチで日向ぼっこしながら、タンポポの数を数えたいな」
なんと、戦士の性格だけでなく、物理的な身体のラインまで「球体」に近づいていくではありませんか。さらに、常に殺気を振りまいていた暗殺者までもが、
「……ねえ、君。さっきは睨んでごめんね。お詫びに、この研ぎ澄まされたダガーで、美味しいうさぎさんのリンゴを作ってあげようか?」
と、ニコニコ笑いながら果物を剥き始めました。
広場は一気に、トゲトゲした空気から「ふにゃふにゃ」で「まるまる」な空間へと変わっていきました。
ところが、副作用はそれだけではありませんでした。
「日和、見て。あっちのワゴン」
フェアカさんが指差す先では、キャンディを舐めすぎたドワーフたちが、あまりに性格が丸くなりすぎて「自分の財産をすべて他人に譲り渡す」という極端な利他的行動に出始めていました。
「この聖剣? あげちゃうよ! 君のほうが似合うもん!」「私のワゴンの商品、全部タダでいいよ!」
あちこちで商売が破綻し、経済が崩壊しそうな勢いです。挙句の果てには、丸くなりすぎた人たちが地面をごろごろと転がり始め、広場は巨大な玉転がし大会のような惨状に。
「フェアカさん、これ、丸くなりすぎじゃないですか!?」
「……だから言ったじゃない。性格が丸くなるってことは、世の中の『角』をすべて失くすってことよ。競争も、所有欲も、自衛本能もね」
フェアカさんは、転がってきた元暗殺者の頭を足で軽く止めながら、冷たく言い放ちました。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。全自動無欲人、転がる幸福、破滅的な平和、なんでもござれ」
結局、その日の広場は「全員が丸くなって転がっている」という異様な光景のまま、日没を迎えました。
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
物理的にも精神的にも「丸く」なりすぎて、社会生活が困難になるという、いかにもフェアカらしい欠陥チート回になりました。




