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蒼炎の刃  作者: 夏目
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海風の町

前回の投稿からかなり期間が空いてしまいましたが、またぼちぼち投稿していきます。

○登場人物紹介

中林(なかばやし) (しょう)

・柳田学園高等部1年

・活発でまとめ役

青木 セイラ

・柳田学園高等部1年

・オシャレなものや可愛いものが好き

穏やかな風が吹いていた。


柳田町。


海の見えるこの町は、コウが暮らす柳田学園のある町でもあり、どこか懐かしさを感じさせる静かな田舎町だった。


商店街には昔ながらの木造の店が並び、道端には地元の老人たちが世間話をしながらのんびりと座っている。


──こんな穏やかな世界が、かつてあっただろうか。


コウは、歩きながらふとそんなことを考えていた。


「よし、それじゃあ今日の買い出しリストを確認するよ!」


先頭を歩く千織が、元気よく手に持ったメモを掲げる。


「ポスター用の紙、絵の具、紐、それから……翔とセイラが言ってた小物も買うんだっけ?」


「そうそう! 立て看板の飾りつけ用にね」


セイラが軽やかに頷く。


「それと、俺ら運営係が使う道具も見ておきたいな。鐘とか、競技用の表示板とか、足りないものがあるかも」


そう言ったのは翔だった。


「……なるほど」


コウは短く相槌を打つ。


少しずつ、この世界の"日常"に慣れてきた。


クラスメイトと会話をし、行事に関わり、こうして買い出しに同行することも、ごく普通のことなのだと理解している。


だが、それでも。


心の奥には、拭えない"孤独"が残っていた。


──本来、ここにいるべきなのは、俺ではないのではないか。


そんな考えが、時折よぎる。


「コウ?」


千織が振り返る。


「ぼーっとしてるけど、大丈夫?」


「ああ……考え事をしていただけだ」


「ふーん……」


千織はじっとコウを見つめたが、すぐに微笑んで言った。


「じゃあ、行こっか!」


---------


「ここの文具店、結構品揃えいいんだよね」


セイラがそう言いながら、古びた木造の店の前で足を止めた。


店内には色とりどりの画材や紙が並んでいる。


千織とセイラはすぐに飾り付け用の材料を選び始め、翔は店の奥にある運営用の小物を探しに行った。


コウは静かに店内を歩く。


──ふと、視線があるものに止まった。


端の棚に並べられた、何冊ものノート。


その中の一冊を、手に取る。


黒い表紙の、無地のノート。


(……昔、こんなものを持っていた気がする)


どこか懐かしい感触だった。


戦場にいたはずなのに、ノートなど何に使っていたのか。


記憶の霧の向こうに、それを開く誰かの姿が見えた気がした。


──いや、違う。


"誰か"ではない。


(……センセイ)


その名を、心の中で呼ぶ。


ピアノを弾く横顔。

戦場で共に背を預けた日々。

酒を酌み交わし、共に語らった夜。


あまりにも鮮やかで、あまりにも遠い。


ここにいれば、またあの時間が戻ってくるのだろうか。


「……」


コウはそっとノートを棚に戻した。


(今は考えても仕方がない)


この世界にセンセイはいないのだから。


それだけのことだ。


「コウ、何見てたの?」


千織が覗き込んでくる。


「……何でもない」


「ふーん?」


千織は少し不満そうにしながらも、それ以上は何も聞かなかった。


---------


買い物を終えた後、四人は海沿いの道を歩いていた。


柳田町の海は、穏やかに波が揺れている。


「ねえねえ、ちょっと休憩しよ?」


セイラが砂浜へと駆け出す。


「お前、さっきから歩きっぱなしだもんな」


翔も後を追い、千織も「じゃあ、ちょっとだけね」と笑いながらついていく。


コウは、海を見つめたまま立ち止まっていた。


──波の音が響く。


静かな町の音。風の音。人々の話し声。


これが、"日常"なのか。


ふと、千織の声がした。


「コウも来なよ!」


振り向くと、千織が手を振っている。


翔は砂浜に座り、セイラは貝殻を拾っていた。


コウは、少しだけ考えた後、ゆっくりと砂浜へと歩き出した。


──この日常に、まだ馴染めなくても。


今はただ、ここにいる理由を探していけばいいのかもしれない。

閲覧ありがとうございました。

誤字脱字等ありましたらすみません。

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