勝利への誓い
午後の部が始まった。
生徒たちの熱気はさらに高まり、グラウンドには応援の声が響き渡る。
「午後の競技、最初は玉入れです! 準備がありますので少々お待ちください〜!」
アナウンスが流れると、各チームが作戦の確認をしたりしていた。
コウも、青チームのメンバーとして玉入れの位置についた。
隣には千織とケン。
そして、翔とセイラの姿もあった。
「よーし! 玉入れって意外とコツがいるからな、気を抜くなよ!」
翔が赤チームのメンバーに気合を入れている。
「ふふ、翔ったら張り切っちゃって」
セイラは紫チームのメンバーと談笑しながらも、余裕の笑みを浮かべている。
「ねえねえ、コウ! 玉入れってやったことある?」
セイラがコウに声をかける。
「ない」
「えっ、マジで?」
翔が驚いたように振り向く。
「じゃあ、ちょっと練習しとけよ! 俺とケン先輩で教えてやる!」
「俺もやるのか」
ケンはやれやれ…とした表情を浮かべた。
「──せーの!」
翔が掛け声をかけ、翔とケンが同時に玉を投げる。
「こうやって投げれば、入る確率が上がるんだ!」
翔は笑いながら言うと、コウに向かって玉を投げてよこした。
すると、「アタシ達もやる〜!!」とセイラと千織もやって来て、一緒にやる事になった。
コウは玉を受け取り、さっきの翔とケンのようにセイラ達と、せーので玉を投げる。
ボールはかご上でぶつかり合い、中に収まった。
「おっ!結構入ったんじゃない!?」
「へえ、初めてにしてはいい感じじゃないか?」
セイラとケンが感心したように頷く。
「ねぇ、今度は普通に投げてみようよ!ずっとみんなで一斉に入れる訳にもいかないからさ」
「そうだな」
千織に言われ、コウはもう一度玉を投げた。
玉は綺麗な放物線を描いて、カゴの中へ。
「いや、普通に上手いな!?」
翔がツッコミを入れる。
「ちょっと待ってよ、コウ! 私の方が先輩なのに、すぐに追い抜かされた気分なんだけど!」
セイラが拗ねたように唇を尖らせる。
「…玉入れに先輩もなにもないだろ?」
セイラを横目にコウはもう一度玉を投げる。
そして、再び成功。
「はぁ!? ちょっと、私にもやらせて!」
「あぁ」
「何よその冷静な態度!」
「じゃぁセイラ、競争してみるか?」
「……!負けないからね!」
コウとセイラが玉を投げ続ける中、翔が笑いながら肩をすくめる。
「なんか楽しそうだな」
「意外と、こういうの好きなんじゃない?」
千織も微笑みながらケイと共に2人を見守っていた。
そして、玉入れ、本番
───────────
「位置について──よーい、スタート!」
笛の音と共に、全チームが一斉に玉を投げ始めた。
コウはテンポよく玉を投げ、次々とカゴの中へ入れていく。
ケンも冷静に狙いを定め、正確な投球を見せる。
「よっしゃー! もっと投げろ!」
翔が声を張り上げ、赤チームも負けじと奮闘する。
セイラは軽快な動きで玉を投げながら、途中でコウに挑戦的な視線を向けた。
「コウ、どっちが多く入れるか勝負ね!」
「望むところだ」
二人の間でまた勝負が始まり、周囲の生徒たちもそれに乗っかる形で、玉入れは大盛り上がりとなった。
「終了!」
笛の音が響き、全員が投げる手を止める。
「現在の順位発表です! 1位、紫チーム! 2位、赤チーム! 3位、青チーム! 4位、緑チーム!」
「くっそー! 紫チーム、強すぎるだろ!」
翔が悔しげに拳を握る。
「ふふ、当然よ!」
セイラは誇らしげに胸を張る。
「まだ終わってない」
コウが静かに呟く。
「そうだな」
ケンも腕を組みながら頷く。
──最後の競技、リレーがある。
ここで1位にならなければ、青チームの優勝はない。
「リレーの選手、集まれー!」
アナウンスが流れ、コウたちはスタート位置へ向かった。
────────
リレー直前
「私、大丈夫かな……」
列に並んでいる時、千織が小さく呟いた。
「千織?」
「私、足が速いわけじゃないし……それに、バトンパスも、練習の時は他のチームより遅かったし……」
千織は不安げに自分の手を握る。
「もし、また私のせいで負けたら……」
「千織」
コウはまっすぐに千織を見つめた。
「絶対優勝させてやるから」
「……え?」
コウの声は、どこまでも自信に満ちていた。
「千織がバトンを落とそうが、遅れようが、俺が取り返してやる」
「……」
「だから気にせず走れ」
千織は驚いたようにコウを見つめた後、ふっと笑った。
「……うん」
そして、深く息を吸い込み、前を向く。
「私、全力で走るね!」
「あぁ」
「コウ!」
ふいに、ケンが声をかける。
「俺からのバトン、絶対に繋ぐぞ」
(…わかってる)
ケンとコウの視線が交わる。
「位置について──」
アナウンスが響き渡る。
千織はバトンを握りしめ、コウも静かに拳を握る。
(…勝ちたい…)
そして、体育祭最後の戦いが始まった。
閲覧ありがとうございました。
誤字脱字等ありましたらすみません。