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蒼炎の刃  作者: 夏目
14/17

勝利への誓い

午後の部が始まった。


生徒たちの熱気はさらに高まり、グラウンドには応援の声が響き渡る。


「午後の競技、最初は玉入れです! 準備がありますので少々お待ちください〜!」


アナウンスが流れると、各チームが作戦の確認をしたりしていた。


コウも、青チームのメンバーとして玉入れの位置についた。


隣には千織とケン。


そして、翔とセイラの姿もあった。


「よーし! 玉入れって意外とコツがいるからな、気を抜くなよ!」


翔が赤チームのメンバーに気合を入れている。


「ふふ、翔ったら張り切っちゃって」


セイラは紫チームのメンバーと談笑しながらも、余裕の笑みを浮かべている。


「ねえねえ、コウ! 玉入れってやったことある?」


セイラがコウに声をかける。


「ない」


「えっ、マジで?」


翔が驚いたように振り向く。


「じゃあ、ちょっと練習しとけよ! 俺とケン先輩で教えてやる!」


「俺もやるのか」


ケンはやれやれ…とした表情を浮かべた。


「──せーの!」


翔が掛け声をかけ、翔とケンが同時に玉を投げる。


「こうやって投げれば、入る確率が上がるんだ!」


翔は笑いながら言うと、コウに向かって玉を投げてよこした。


すると、「アタシ達もやる〜!!」とセイラと千織もやって来て、一緒にやる事になった。


コウは玉を受け取り、さっきの翔とケンのようにセイラ達と、せーので玉を投げる。


ボールはかご上でぶつかり合い、中に収まった。


「おっ!結構入ったんじゃない!?」


「へえ、初めてにしてはいい感じじゃないか?」


セイラとケンが感心したように頷く。


「ねぇ、今度は普通に投げてみようよ!ずっとみんなで一斉に入れる訳にもいかないからさ」


「そうだな」


千織に言われ、コウはもう一度玉を投げた。



玉は綺麗な放物線を描いて、カゴの中へ。



「いや、普通に上手いな!?」


翔がツッコミを入れる。


「ちょっと待ってよ、コウ! 私の方が先輩なのに、すぐに追い抜かされた気分なんだけど!」


セイラが拗ねたように唇を尖らせる。


「…玉入れに先輩もなにもないだろ?」


セイラを横目にコウはもう一度玉を投げる。


そして、再び成功。


「はぁ!? ちょっと、私にもやらせて!」


「あぁ」


「何よその冷静な態度!」


「じゃぁセイラ、競争してみるか?」


「……!負けないからね!」


コウとセイラが玉を投げ続ける中、翔が笑いながら肩をすくめる。


「なんか楽しそうだな」


「意外と、こういうの好きなんじゃない?」


千織も微笑みながらケイと共に2人を見守っていた。


そして、玉入れ、本番


───────────


「位置について──よーい、スタート!」


笛の音と共に、全チームが一斉に玉を投げ始めた。


コウはテンポよく玉を投げ、次々とカゴの中へ入れていく。


ケンも冷静に狙いを定め、正確な投球を見せる。


「よっしゃー! もっと投げろ!」


翔が声を張り上げ、赤チームも負けじと奮闘する。


セイラは軽快な動きで玉を投げながら、途中でコウに挑戦的な視線を向けた。


「コウ、どっちが多く入れるか勝負ね!」


「望むところだ」


二人の間でまた勝負が始まり、周囲の生徒たちもそれに乗っかる形で、玉入れは大盛り上がりとなった。


「終了!」


笛の音が響き、全員が投げる手を止める。


「現在の順位発表です! 1位、紫チーム! 2位、赤チーム! 3位、青チーム! 4位、緑チーム!」


「くっそー! 紫チーム、強すぎるだろ!」


翔が悔しげに拳を握る。


「ふふ、当然よ!」


セイラは誇らしげに胸を張る。


「まだ終わってない」


コウが静かに呟く。


「そうだな」


ケンも腕を組みながら頷く。


──最後の競技、リレーがある。


ここで1位にならなければ、青チームの優勝はない。


「リレーの選手、集まれー!」


アナウンスが流れ、コウたちはスタート位置へ向かった。


────────


リレー直前


「私、大丈夫かな……」


列に並んでいる時、千織が小さく呟いた。


「千織?」


「私、足が速いわけじゃないし……それに、バトンパスも、練習の時は他のチームより遅かったし……」


千織は不安げに自分の手を握る。


「もし、また私のせいで負けたら……」


「千織」


コウはまっすぐに千織を見つめた。


「絶対優勝させてやるから」


「……え?」


コウの声は、どこまでも自信に満ちていた。


「千織がバトンを落とそうが、遅れようが、俺が取り返してやる」


「……」


「だから気にせず走れ」


千織は驚いたようにコウを見つめた後、ふっと笑った。


「……うん」


そして、深く息を吸い込み、前を向く。


「私、全力で走るね!」


「あぁ」


「コウ!」


ふいに、ケンが声をかける。


「俺からのバトン、絶対に繋ぐぞ」


(…わかってる)


ケンとコウの視線が交わる。


「位置について──」


アナウンスが響き渡る。


千織はバトンを握りしめ、コウも静かに拳を握る。


(…勝ちたい…)


そして、体育祭最後の戦いが始まった。

閲覧ありがとうございました。

誤字脱字等ありましたらすみません。

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