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 幾日ぶりか、分からないほどの心地よい目覚めをシオンは迎えた。


 やはり人はある程度の閉鎖された空間のほうが落ち着くのだと、この朝を迎えて改めて知った。


 元の拠点である洞窟前までのルートを、どう行くか悩んだシオンだったが、今日中に引っ越しを終わらせるべく、既に慣れた道である、来た道を戻ることにした。


 道中何事もなく、無事拠点に戻ったシオンは引っ越しのために、寝床として作ったハンモックを網にして僅かばかりの荷物を背負えるように包んで準備を終えた。


 次にシオンは火を起こすと、短剣を使って洞窟の真正面の木の皮を一部剥いだ。


 その短剣を火にくべて、切っ先が赤くなると取り出して皮の剥がされた部分に押し当てて「白」の字を書き付けた。


 洞窟の出口前に、何かの目印を残すべきかと迷ったのだが、誰が来るか分からない以上、情報を多くは残したくなく、かといって同じルートを通った先駆者の存在を知らせたくもあったのだった。


 シオンは荷物を背負い、腰に剣を差すと新たな拠点に向けて歩き出した。


 帰りも特段問題はなく、陽が中天を越えて暫くした頃、シオンは新拠点に戻ってきていた。


 荷物を地下室に降ろしてから外に出たシオンは、この地下への入り口をどうにか隠すために先ずはと廃材を集めた。


 元々、大して期待はしていなかったが、意外にも柱として使われていたであろう太い木材が二本使えることが分かった。


 他にも目ぼしい木材が、思っていたよりも多くあり、元の小屋ほどにはならないが、入り口を隠すには充分の量があった。


 その日の夜、シオンは残された日記以外の二冊に心を飛ばしていた。


 まだ二冊についてはサラッと中を見ただけだが、特徴の違う筆跡が幾つか見受けられた。


 日記に「四雌雄の書」と書いてあったから四人で手分けして書いたのかなとシオンは考えていた。


 地下室の中は火が焚ける場所もあり、本を読もうと思えば夜でも読めるが、移動の疲れもあってシオンは眠ることにした。


 なんてことはない、シオンは読書が好きでは無かったのだった。


 そうして拠点替えの日は終わり、シオンは眠りについた。






 三日が経った。


 昼は食料集め、夜はすぐ寝る。こんな生活がシオンのサイクルとなっていた。


 二冊の本も気にはなっていたが、いかんせん、他人の字の癖の読みにくさもあり、読む気が中々起きなかった。





 それからまた三日、久しぶりに大規模な雨が降った。


 食料の貯蔵も十分で、雨に濡れてまで外でする何かなど無いシオンであったが、退屈を持て余し、とうとう本を手に取った。


 既に何度も読んだ五ページを超え、初めて次のページへと進むと文書の他に挿絵が描かれていた。


 挿絵は、結跏趺坐した男性の背中に手をあてる女性の絵であり、なんとなく魔力の導きをしている絵の様に感じた。


 シオンは閃いて、挿絵だけを拾うように見て、暇つぶしをしようと思った。


 そう決めるとページをめくる手は捗り、あっという間に一冊を読み切った。


 挿絵は先程の絵の、魔力の導きから始まっており、以降は男だけが書かれた絵が多く、ただ瞑想らしき事をしている絵、何かを我慢しているのか頬を膨らませた絵、身体中に矢印が書かれた絵、強靭な身体を得た事を現す絵、と幾つも種類があり、暇つぶしには持って来いだった。


 ただどうも身体中に矢印が書かれた絵を見ていた時に、不意にシオン自身の魔力が動いた気がした。


 試しにと、絵にある矢印の順番で循環法を行ってみると、何かいつもよりスムーズに行えるような感じがした。


 そのスムーズさが面白く、尚且つ心地良かったので、その次の日からは日課としている循環法の瞑想の際、ロウから教わったものを終えると続けて書の方法も行うようにした。


 雨が止んだこともあり、暫く読書を休んでいたシオンだったが、ある夜、異様に目が冴え、眠れぬ日があった。


 寝るのを諦め、なんとなく二冊目の書を手に取ったシオンは、より興奮して目が冴えた。


 二冊目の挿絵に描かれていたのは、男が様々な格好で剣を持つ姿だったのだ。


 連続して捲ると、多少のズレはあるものの、男が型を披露している様に見えたのだったのだ。


 すっかり朝が待ち遠しくなったシオンは、何度も挿絵を見返しては、頭の中で動きを想像して楽しんでいた。


 そうしているうちに空気取りの穴から光が差し、朝を迎えたのを知った。


 シオンは早速とばかりに剣を持ち、外へ走った。


 昔、カルシスに教わった様に構え、呼吸を整えてから剣を振るった。


 が、シオンはすぐに投げ出した。


 書にあった型は、なにか素晴らしいものと思いきや、所々で詰まってしまい、気持ち良く剣を振るうことができなかったのである。


 シオンは馬鹿らしくなり、その場に剣を突き立てて部屋に戻った。


 不貞腐れてベッドに寝転ぶや、先程までの興奮もあり、イライラから涙が出てきた。


 シオンは自分が思うよりも剣術に憧憬や渇望があったのだと知った。


 昨晩、徹夜だったこともあり、シオンはいつしか眠りについていた。


 昼も大分過ぎ、普段なら軽食を食べる頃、シオンは目覚めた。


 幾分、冷静さを取り戻したシオンは、今日の日課を済ませていないことに気が付いた。


 一日くらい休んでも良かったのだが、思いついてしまったからにはと、瞑想をするのだった。




いつも閲覧ありがとうございます。


誠に勝手ながら本日をもちまして

木曜日の更新を終了させて頂きます。


今後は月曜日更新のみとなりますが

引き続き、よろしくお願いします。


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