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 瞬く間に三日程、日が経った。


 魔力欠乏症の発作も、初めの日こそ痛みが残っていたが、既に回復していた。


 この数日、テムルとロイは甲斐甲斐しくとはいかなかったが、何かと世話を焼いてくれた。


 但し、シオンと二人の時のロイの態度は酷く、非友好的でシオンはそうなる心当たりが解らなく、どう接すればよいのか分からなかった。


 この日も、ロイが机に叩きつける様に置いていった朝食を終えて、まったりとしているとテムルがやって来た。



「シオン、村長のところへ行くから用意してくれ」



 目覚めてから三日、初めての外出であったが、貫頭衣のような物を着せられて寝ていたシオンは、どう用意すればよいか迷った。



「ん? どうした…?」



「いえ、僕の着ていた服とかが…」



「え? ロイが持ってきてないか?」



「え? 貰っていませんが…」



「あんの野郎…

 シオン、ちょっと待っていてくれ!」



 そう言って部屋を出て行ったテムルだったが、暫くするとシオンの服や装備を持って戻ってきた。



「すまなかったなシオン、これで全部だと思うが…」



 服も装備も明らかに雑に扱われていた後があったが、それには触れず、シオンは服に袖を通した。



「すみません… 短剣は有りませんでしたか?」



「うん? どうだかな… 管理はロイがしてたから後で聞いてみてくれ」



 シオンの用意が済んだとみたか、テムルは部屋の戸を開けてシオンに出るように促した。



(眩しい!)



 目が眩む程の陽の光が、シオンの瞼に容赦なく降り掛かった。


 三日ぶりの外出とはいえ、目が眩む程の陽の角度に草庵との差を感じ、白掌山の大きさを改めて感じたシオンであった。


 一度、目を閉じてゆっくりと目を開き、辺りを見回すと、植生の違いによるものなのか、屋根まで板作りの家が十数軒あるのが分かった。


 そんな家の影の中から、数名がこちらを伺っている気配を感じたが、あくまで遠巻きに見るに留めるつもりのようで、シオンがテムルに続いて歩き始めると、殆どの者は何事も無かったように姿を消していった。


 最後まで感じていた視線に、さりげなく目をやると、顔を腫らしたロイが此方を睨み付けていた。


 シオンは、ここ数日の事も含め、何故、そうまでロイに敵対視されるのか疑問だったが、今はテムルの後を追うことに気を向け、ロイの視線は無視することにした。



「この家だ!」



 テムルが戸を叩いた家は、他の家よりも多少は大きな家ではあったが、威厳の為というよりは単に来客のためのようであった。


 テムルのノックに中から、誘いの声があり、テムルに続いてシオンも家に入った。



(香? 煙草?)



 部屋の中は、何か匂いのある靄の様なものに包まれていた。


 決して不快な匂いでは無いのだが、部屋の暗さもあり、怪しげな雰囲気を醸し出していた。



「そちらに掛けなさい」



 白髪の老人が、優しげな声を発した。


 老人の目は白く濁り、瞳の動きの無さから盲目なのが分かった。



「テムルもよいから掛けなさい」



 気をまわしたか、お茶の準備をしていたテムルにも老人は声をかけた。



「もう終わりますので…」



 ポットと湯呑みを乗せたお盆を机に置いて、テムルも椅子に腰掛けた。



「儂の名はホジン、この村の長をしている。君がシオンだな?」



「はい、シオンといいます。

 命を救ってもらっただけでなく、数日お世話になりっぱなしで、とても感謝しています」



 シオンは、ここ数日の事を思い浮かべながらホジンに感謝を伝えた。



「失礼…」



 ホジンは徐ろに手を伸ばし、机の上でシオンの手を軽く握った。



「この通り、儂は目が不自由での…

 暫くこうさせておいてくれ…」



 手を乗せられたシオンは、ほんの軽く乗せられただけで、特に変な感じもしなかったので、されるがままにしておいた。



「この村の事は聞いたかな?…

 村の成り立ちもあり、猜疑心の強い者もある、すまんが君の事情をもう一度、聞かせてもらえんか?」



 ホジンの問い掛けに、含むことの無いシオンは、スゥとの出会いから自分の病、ロウの情けにより救われた事、敵との戦い、逃走の全てを話して聞かせた。


 シオンの話が終わるまで、ホジンの手は変わらずシオンの手の上にあったが、途中で質問することも無く、所々、相槌を打つだけで、静かに聴いていた。



「テムル、この子の言う事に嘘は無いようだ…」



 ホジンはシオンの手を離し、お茶を飲みながらテムルに言った。



「ええ、私もそう思います。

 見てきましたが、中峰との境に争いの後がありました」



「ふむ、その悪党の死体はあったかな?」



「いえ、シオンを引き上げた川岸から少し下がった場所で服の切れ端は見つけましたが死体は…」



「そうか…

 捨て置くわけにはいかんかも知れないな…

 村人を出すか?」



「難しいと思います…

 もし生きていて刃向かわれると…」



「危険か…」



 シオンは、ホジンとテムルの会話を静かに聞いていたが、自分がこの村の平和に石を投げた自責の念に居ても立ってもいられなくなっていた。



「すみません…

 もし捜索するなら僕も加えて下さい!」



 シオンは、机に前のめりになってホジンに頼んだ。






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