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大変失礼致しました。

 この一年というもの、ギュウチは暗く歪んだ一つの野望を胸に抱えていた。


 白掌山派のロウとの腕の差は、どれだけ濃密に過ごそうと、一年足らずで埋まるものではない事を自信過剰なギュウチといえでも十分に解っていた。


 シオンの野郎はどうせ死んでいるだろうが、間王の兄ぃの敵と自分の復讐の為、ロウに一泡吹かせたかったのだった。


 そうやって一年も過ぎた頃、白掌山の周囲の街や村に出没して態と目撃させ、噂を流し、今日をむかえたのだった。


 山の麓の茶屋に忍び込み、登山道を見張ること四日、旅装のロウをやり過ごして夜を待った。


 まもなく訪れる復讐の時を思い、甘美な想像と期待に身を悶えさせて暗闇の中、登山道を進んだ。


 …が、この状況はなんだ!


 自分らしい方法で、ロウへの復讐に弟子とか言ってた少女の部屋に忍び込めば、持っていたロウソクの火が消され、脚に痛打を浴び、地に伏している。


 ましてや、転んだ時に打ったのか歯が欠けた様で、口の中に充満するのは血の味だ。


 耳に聞こえしは、あのムカつく小僧、シオンの声であるが、声の張りからもすこぶる健康そうではないか。


 ギュウチは何が起きたのか、頭をフル回転させて考えようとしたが、頭に血が上った今、どこまでいっても浮かぶのは二つの感情、怒りと殺意だけだった。



「グッホッ!」



 既に三度目となる突きを今度は腹に食らった。


 杖による刺突であるから、相手は小娘であろうと捕らえようと突かれたら即座に手を伸ばすが、どうにもスルリと逃げられ、闇に逃げ込まれるのを繰り返していた。


 ギュウチには何故、暗闇の中、小娘がこうも此方の居場所を正確に把握して突きを繰り出せるのか解らなかった。


 しのぶものの定跡として新月を選んだのも裏目に出ていた。


 忍び込みを生業にしているギュウチは、夜目に関してそれなりの自信を持っていた。が、灯りのない部屋に、差し込むことのない月光の中、それまたと鋭い突きが頬を削っていった。



「ク、クソッぅ、汚ねーぞ、テメェら!」



 どれだけ悪態を吐いたところで、襲いくる突きの回転は速まるばかりで、ギュウチは次々と身体中にダメージを受け続けるだけであった。



「いつまでも…舐めんじゃねーぞ!」



 ギュウチの腕が妖しく光った。その光が映し出したギュウチの顔は、醜く歪んだ笑みを浮かべていた。


 その光を頼りにしたか、ギュウチは動き出した。


 手にしていた燭台を投げつけ、踵を返し、逃げ出したのだった。



「テメェら、ゼッテーに赦さねぇからな!」



 部屋の戸口で振り向き、暗がりに向けてギュウチが叫ぶと同時に、



「グッハァ!」



 ギュウチは倒れ伏した。






 闇に目を慣らしたつもりのシオンだったが、光源の全く存在しない部屋では、その目も何ものをも捉えることは出来なかった。


 闇の中に響く打撃音は、スゥの杖に違いなく、状況は想定通りに自分達に傾いていると思っていた。


 相手がギュウチであったことについて、少なからずの動揺が有ったが、今はもう落ち着きを取り戻していた。


 スゥに任せっきりの現状を打破したい気持ちと、不甲斐なくも邪魔にしかならないであろう現実を天秤に乗せてシオンは息を殺している事しか出来ないでいた。


 そんなことを考えていると、数回の鈍い打撃音の後、ギュウチの苛立ちの叫びが聞こえてきた。


 そして、叫ぶ声の辺りで光が立ち、凶悪なギュウチの顔が闇の中に浮かび上がったが、顔が照らされたのは腕に魔力を回したからであろうと思った。


 しかし、シオンは見逃さなかった。


 腕の発光の際、それは僅かではあったがギュウチの足元も光ったのだった。



(脚にも魔力を回している!逃げる気だ!!)



 何度もギュウチの遣り口は見てきた。強気な言葉を吐いた時こそ、奴は冷静な行動を取ると、シオンはもう知っていた。


 だからシオンは、急いで部屋を出た。


 案の定、ギュウチも部屋を出てきた。


 余りの急な接近に、此方の企みがバレていたかとヒヤヒヤしたシオンだったが、ギュウチはシオンの目の前でクルリと背を向け、部屋に向かってまた悪態を吐いた。


 シオンは、その無防備な背中に一撃を加えた。



「シオン、やったの?」



「あぁ、手応えは有った!」



 暗闇の中、スゥからの問い掛けに満面の笑みで応えた。



「貴方は燭台を探して灯りを着けて

 私は縛るものを取ってくる!」



 シオンはスゥに言われ、手探りながらもギュウチの持ち込んだ燭台を探した。



「キャーッ!」



 その時、外の納屋にロープを取りに行ったスゥが、悲鳴をあげた。


 その声に反応してシオンが裏庭に飛び出すと、見知らぬ男が、スゥを後ろから抱えるようにしてスゥの両手首を拘束していた。



「お前は誰だ、スゥを離せっ!」



 目は窪み、頬は痩せこけたその男は、聞いているのか判らないが、虚ろな目をシオンに向けた。



「お前達がロウの弟子か?」



 シオンを睨みながら発した男の嗄れた声は、この世の人とは思えないほどの不気味さを持っていた。





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