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「シオン、お主に一つの魔術を授けよう…

 その術の名は「回路循環法」という。

 お主の生命を繋ぐかも知れぬこの術は、本来、門外不出のもので白掌山派の秘技と呼べるものだ。

 今のお主に言っても詮無きことだが、会得しても努々悪用だけはしてくれるなよ」



 シオンが目で同意を示すとロウはそれで満足したのか話を続けた。



「この術は魔力操作ができるのであれば、会得はそこまで難しいものでもない…

 また、お主のように寝たきりでもできる修行なので適していると思われるぞ」



 そしてロウは、「回路循環法」を詳しくシオンに言って聞かせた。


 シオンが行なう事は、次に魔力を感じたら、その魔力を直ぐに左手に伝えることだった。


 体内に発生する魔力を直ぐに感知するのにはコツが必要だったが、元がゼロの今の状況はその感知には有利に作用してくれた。


 魔力を手に回すのは、今までもやってきた事なのでさして難しく無かったのだが、「回路循環法」では、その魔力を手に留めることなく発生元の魔袋付近に戻すとの事だった。


 これは普段とは逆の動きであり、それだけでも難しかったが、魔袋付近に魔力を戻すと、穴の影響か、魔力の制御がかなり難しく何度かは流出させて発作を起こしてしまった。


 だが、修行を始めて三日もすれば循環させることに慣れて、日中、起きている間は発作を起こすことは無くなっていった。


 発作を起こさなければ体力を無駄に奪われることもなく、少しづつではあったが復調の兆しが見えてきた。


 シオンにも笑顔が出ることもあり、スゥはそれを見る度、ともに笑顔を浮かべたのだった。







 次のロウからの指示は、左手へ回した魔力を魔袋に戻すのでは無く、そのまま右手に回してから魔袋へ戻すことだった。


 この左手から右手への魔力移動は、それまでの数倍の難易度であった。


 左手から右手への移動は、魔力の通り道をキチンとイメージしなければならず、なんとなくのイメージでは受け付けられず魔力は滞り、動くことはなかった。


 その為、どうしても循環に時間が掛かってしまい、魔袋に魔力が無い状態が出来てしまった。


 すると魔袋を満たすべく自然に魔力が発生し、その魔力が穴から流出することで欠乏症の発作程ではないものの、瞬発性の強い苦しみをシオンにもたらすのだった。


 だがそれも、幾日にも及ぶ修行により改善された。


 シオンの修行の成果をみて、ロウは魔袋へ魔力を戻す前に寄る箇所を左足、右足、頭と増やしていったが、「必ず魔袋に寄る事は忘れるな」と何度も念を押された。


 魔力欠乏症とは、魔袋から魔力が無くなるから発生するのではなく、身体から魔力が無くなることによって発生するのである。


 身体を魔力が循環していれば、欠乏症にはならないが、魔力の体外への流出自体にも苦痛はもたらされるのだ。


 ロウやスゥは、元の魔力を循環に回して魔袋が空になっても徐々に回復し、魔袋が満たされれば回復は止まる。


 しかしシオンは、魔袋が空になり魔力回復が始まれば、その流出による苦痛で思わぬ不覚を取ることも有りえるのだ。


 なので循環させている魔力を頻繁に魔袋に戻すことで、新たに発生した魔力を循環魔力に結び付けて循環を続ける必要があったのだ。


 ロウはそこまで考えてシオンに「回路循環法」を授けたのだった。








「調子はどう、シオン?」



「あぁ、スゥと先生のおかげでとても良いよ!」



 ベッドの縁に腰掛けて、窓から外を眺める程に回復したシオンが、お茶を淹れてくれたスゥにそう応えた。


 修行を始めてから幾日も経ったこの頃、二人は年齢が近い気安さからか、シオン、スゥと、お互いを名前で呼び合うほどの仲になっていた。


 シオンはまだ立って歩くことは出来なかったが、こうしてベッドに腰掛けてスゥが育てている庭の畑を見るのが日課となっていた。


 修行の方もだいぶ進んで、身体中くまなく魔力を循環させられるようになっていた。


 いくつかの骨折箇所も想定よりも治りが早いようで、これも魔力循環の効果によるものと思われた。


 思えば、街で仕事をしていた時も、魔力に目覚める前と後では体力に違いがあったので魔力が身に与える影響なのだろう。






 修行を始めてから半年が過ぎた頃、シオンは循環の速度を上げることに熱中していた。


 この頃、シオンは杖があれば歩けるほどに回復していた。


 ただ山は自由に歩けるほど易しくはなかった。


 加速化は、ロウに言われて始めたのでは無く、散歩もろくにできないシオンの暇潰しだったのだ。


 本来であれば、循環法と武技の融合を練習する頃なのだが、初めの約束通り、一門ではないシオンには武技の伝授は無かった。


 そのことにシオンは一ミリの不満も無かったのだが、暇が過ぎることも事実で仕方が無かったのだ。


 始めてみると、この加速化は面白さとともに新たな気付きを教えてくれた。


 魔力を早く動かすと魔力に膨張感を感じたのだ。


 初めは、不意に感じた膨張感に焦り、破裂を想像して緊張したが、暫くしても何事も起きず、それどころか身体中に力が漲るのを感じた。


 それでもシオンは、「圧縮法」の二の舞を恐れ、ロウに報告したが、口を濁しながらも問題は無いとの事だったので、いい暇潰しにと取り入れたのだった。






 そうして修行開始から一年が過ぎ、白掌山に住まう者達が賭けに勝った日が訪れた。


 シオンが杖を置き、自分の足でベッドから立ち上がったのだった。




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