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(と、トドメをささなくては…)



(足が、足が重い…でもここで俺がアイツを倒しきらなければキャス達が…)



(駄目だ…なんだかとてもねむい…)



「うわっ!」



 シオンは目覚めとともに身体を起こそうとしたが、全身を走る痛みにベッドの上で身悶えた。


 深呼吸とともに辺りを見回して、自分の部屋でないことを知った。


 掛けられた布団を払い、ベッドを降りようとして、またしても鋭い痛みが全身に走り倒れ込んだ。



「まぁ!大変!」



 大きな音がたったせいか、ドアを開き部屋へ入りかけていた見知らぬ女性が、倒れ込んでいるシオンをみて叫んだ。



「お嬢様!お嬢様!」



 メイド服のその女性がシオンに駆け寄り、ベッドへ戻そうとする中、廊下から複数の慌ただしい足音が響いてきた。



「シオン!シオン!大丈夫なの?!」



 一番初めにキャスが、続いてカルシスが、そして複数の人が部屋へと入ってきた。



「先生!お願いします!」



 キャスの大声がシオンの耳に響く中、初老の男性がベッドに横になったシオンの手首を掴んで脈をとった。


 更に目や舌などはじめ身体をくまなく足先までチェックしていった。


 先生と呼ばれた男性は暫く考え込んでいたが、徐ろに立ち上がるとキャスに小声で何かを伝えてから廊下へと出ていった。


 キャスもすぐに追うように廊下へと出ていったが、シオンにはその横顔が泣いている様にしか見えなかった気がした。



「…シオン、休め… とにかく今は休め…」



 カルシスも何時にない優しい口調でそう言うと、その他の大勢の人達と部屋を出ていった。


 ドアが閉まる時、戸陰にギュウチの姿を見た気がしたが、シオンの意識はゆっくりと微睡みの中に落ちていった。






「ウグワァー!」



 シオンは今日も身体を襲う痛みで起きた。


 あれから数日が経ち、フカフカすぎるベッドにも着せられてる薄手のワンピースみたいな寝巻きにも慣れたが、この身体の痛みに慣れることは無かった。


 昨日、ミンティアが部屋にきた。


 お礼を言いにきたといったミンティアによると戦いの日から既に十日が過ぎていた。


 あの日、共に倒れたシオンとミンティアだったが、目覚めたのはミンティアが二日後、シオンにいたっては七日を過ぎていたとのことだった。


 もっともミンティアもベッドを出る許可がでたのは一昨日で、いかにあの戦いが死闘だったのかと再認識させられてシオンは身震いした。


 他にも色々教えてくれて、ここが領主館の離れで従業員用の建物だと知った。


 キャスは、離れ(ここ)にシオンを寝かせることに相当強く抗議したようで、留守居役に聴き入れられなくて立腹していたそうだが、領主がいない状況では判断できなかったのだろうとシオンは同情した。


 戦いの日から三日経って領主とカルシス等も帰ってきたが、その時はシオンの意識が戻らない事もあって移動は慎んだとの事だった。


 もっともシオンにとっては、自分のアパートの部屋より数段も増しなこの部屋に文句などなかったので、ミンティアにそう言うと、「お嬢様の恩人の部屋としては…」なんて返されて、世界観の違いを改めて知ることになった。


 誰も教えてくれないこと…自身の体の痛みについてミンティアにも何か知らないかを聞いてみたが、魔力関連は解らないとあっさり言われた。


 そんな事を思い返していると、また痛みがぶり返し、シオンは意識を失った。






「シオン、シオン…」



 シオンが、呼ばれる声に目を覚ますと、横たわるシオンの腹の上に頭を乗せてキャスがうたた寝をしていた。


 ミンティアが訪ねてきた日から五日も経ったが、キャスは日に何度もこうして見舞いに来てくれていた。


 もっともシオンはその半分以上ものタイミングで意識を失っており、今日もキャスが来たことには気付いていなかった。


 どうもキャスは眠りながらシオンの名を呼び、泣いている様で、シオンはキャスの気持ちに居たたまれなくなり起こさないようにじっとしているしかなかった。


 それが良く無かったのか、またしても走る痛みにシオンは思わず呻いた。



「シオン、シオン大丈夫?!」



 キャスは慌てて起き上がり、シオンの身体を支える様に抱きしめた。


 いつの間に拭いたのか目に涙はなく、頬に僅かに跡が残るだけだった。


 暫くしてシオンが落ち着くと、先生を呼んでくると言ってキャスは部屋を出ていったが、その顔は真っ赤だった。






 更に数日経ってもシオンの様態に変わりは無かった。日に何度も、発作的に痛みが走り酷ければ気絶するということを繰り返していた。


 日に何度も来てくれていたキャスも、ここ数日、訪れる数が減り寂しくもあったが、来る度に焦燥が深まるキャスの姿を見るのは、それはそれで辛かった。






 久しぶりによく晴れて暖かな日、シオンの部屋の窓も大きく開かれて空気の入れ替えが行なわれていた。



「あの部屋の住人、何時までいるのかしら?」



 大きく開かれた窓からは隣室の話し声が聞こえてきていた。



「あの部屋の人、お嬢様の想い人なんじゃない?」



「そうそう、よく部屋を訪ねているみたいよね!」



 女中さん達の明け透けな会話にシオンは、聞いてはいけないと布団を被った。



「領主様は出ていってもらいたいんでしょ?」



「そりゃそうよ!もう一ヶ月も経つもの」



「護衛の人が言うには、本当は、お嬢様達も移動が必要なんだって!」



「そうでしょうとも、生命を狙われるなんて怖いわ…」



「あの病人…助からないんでしょ?」



「えぇ、そうらしいわ…」



 シオンの耳に看破できない会話が聞こえてきた。






いつもご愛読ありがとうございます。


真に勝手ながら8月の12・15日の更新は休ませて頂きます。



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