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「魔力が二つあるのはわかるか?」



「はい、意識してみると昨日の魔力のほうが濃く感じます!」



「そうか、違いが掴み取れているなら、後は簡単だ!

 薄く感じるほうだけを動かすように意識して、そうだな… この前のように右手に持っていけ!」



 シオンはギュウチの言う通りに、意識して右手に薄く感じる分の魔力だけを動かした。


 すると、前回よりもすんなりと魔力は右手に移り、にぶい光とともに右手に固定された。



 パシュ!



 予告はなくても前回のおさらいと思っていたシオンは、ギュウチが不意打ちに投げるだろうと、飛んできた大きな石を掴み、同時に粉々に砕いたが、その大きさは前回の比じゃなかった。



「ハハハハハ、やるなシオン!」



 自分の砕いた石の大きさに、シオンは『失敗してたらどうするんだよ!』と思い、笑っているギュウチに抗議の眼差しを向けた。



「怒るな怒るな、出来ると思ったからこそさ、それより気づかないか?」



「え?、何がですか?」



「お前、今、倒れてないよな?」



「あ、確かに!

 気持ちの悪さとかもありません!」



「だろ?

 魔力を連続使用できるってのはこういう事なんだよ。

 もうすぐ、俺とオッサンは街の奴らに頼まれて隣町まで街道沿いの掃除に行くことになる」



「掃除ですか?」



「掃除っても、ゴミ拾いじゃないぞ?

 魔獣の間引きだ、間引き!

 頼まれたから仕方なく行くんだよ。

 その間、何かあったら、お嬢のことをお前に頼みたいと思ってな…

 オッサンとこの団員も二名ほど残すからお前は保険だから気張らなくてもいいが…

 街なかで無理する奴や魔獣がでることなど無いだろうから、その程度の相手なら、お前なら魔力の乗った剣でだいたいは対処できるだろ?」



 シオンは、魔獣を素手で圧倒したギュウチがくだした自分への評価が嬉しかった。



「お二人がいない間は、キャスにもらったこの剣で必ず彼女を守ります。

 任せて下さい!」



「おいおい、お前は保険だって!

 頼もしいが無茶だけはするなよ。

 前に言ったことは覚えているな?

 魔力は四回以上は溜めるなよ?

 魔力を使ってもすぐに動けるってことだけで凄いことなんだからな!」



 意気込むシオンに、ギュウチは釘を差さずにはいられなかった様だったが、シオンは分かったのかどうか分からないような顔で満足げにしているだけであった。







「みんな!私のことは気にせずに、街のために頑張ってきてね!」



 シオンが魔力圧縮法を体得してから五日、街道の魔引きを行うため、カルシス等は街の防衛隊とともに出立していった。


 ギュウチの言葉を思い出し、身の引き締まる気持ちでいるシオンに対し、護衛が離れて自由を謳歌する気満々のキャスは帰り道をアクビをしながら歩いていた。



「シオン、なんかまた体大きくなった?」



「え? 変わった? 自覚ないけど…」



「うーん、なんだろ? 筋肉? たくましくなったっていうか…?」



 魔力圧縮を始めてからのシオンは、体調がとても良く、職場でも疲れ知らずと評判であった。


 ギュウチに言われるまでもなく、キャスに知られれば絶対に「教えろ!」と言われるのがわかっていたので魔力圧縮の事は言えなかったし、言う気もなかった。



「まぁいいわ。

 そうだ、このまま帰るのはつまらないからどこかお店によりましょう?」



 キャスはそういって表通りにあるオシャレなマグカップの絵が描かれた店の扉を開けて入った。


 キャスを一人にできないのでシオンも続いたが、店の中は二人よりも年嵩の恋人達で一杯であった。


 キャスとシオンは、二人席に向かい合って座った。


 キャスの護衛の二人も店に入ってきたが、だいぶ離れた席になんとか座れたようだった。



「ねぇ、私達はどう見えてるのかな?」



 手慣れた感じで紅茶と軽食を二人分頼んでからキャスがシオンに問いかけた。



「きょ、兄妹じゃない?」



 キャスの問いかけに、シオンは自分の顔が赤くなるのが分かった。以前、ギュウチに言われた事を思い出してしまったのだ。



「そっか、姉弟ね…」



「む、今、自分が上の様な言い方しなかった?」



「あら、当たり前じゃない?

 誰が見ても私の方がお姉さんでしょ?」



 二人の誕生日は(シオンは孤児院にきた日だが)ひと月と違わないが、この国では数え年を採用しているのでキャスの方が歳上なのだ。



「(ボソッ)なんだよ、面倒ばっかかけるくせに…」



「なんか言った?」



 シオンの台詞は、ケーキと紅茶に夢中のキャスには、ちゃんとは聞こえなかったようだった。


 もし聞こえていたら、また口論になってたなとシオンも紅茶を飲みながら思った。


 店をあとにする時、最近仕事が好調なシオンが支払いをしようとしたが、キャスは最後までお姉さんだからと譲らなかった。


 シオンはキャスに払ってもらう申し訳なさより、無言で遠くを見ているレジ係の()()のお姉さんに申し訳なくなり、引き下がった。



「キャス、ごちそうさま…」



「フフフフフ、これで私の方がお姉さんだってことが分かったでしょ?」



 周りの目をまったく気にしないでそう言うキャスにシオンは内心『どこがだ…』と思ったが、ウキウキ顔で踊るように歩く姿をみて、やはり目を離してはいけないと改めて思うのだった。




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