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「お、その剣か! うん、バランスも合ってるみたいだな」



 シオンが広場で剣を振るっていると、笑みを携えたカルシスがやって来た。


 キャスとギュウチの姿はなく、今日は独りの様だった。



「おはようございます、カルシスさん!

 今日もお願いします」



「あぁ、そのまま振り続けてみろ」



 カルシスはそう言ってベンチに腰掛け、シオンの素振りを見ていた。








「もういいだろう!」



 シオンのシャツの背中の色が濃く変わるのを見て、カルシスが制止した。



「ちょっと剣を見せてくれ」



 カルシスの言葉に、シオンが剣を渡すと、カルシスはしばらく眺めてからシオンに返した。



「いい剣だ、大事に使えよ!」



「はい、もちろん! 借り物なので大事にします」



「借り物? その剣はキャスがお前に贈った剣だろ?」



「いえ、練習用に借りてるだけです」



「そうなのか? キャスからシオンに剣を贈りたいからって言われて、お前の剣筋に合う重さとかバランスとか色々助言したが… 違うのか?」



 シオンはカルシスの言葉に衝撃を受けた。シオンの中では余り物の剣を練習用に借り受けたつもりだったのだ。



「この前の森での騒動の際、折角、お前が新調したナイフを駄目にさせちゃったし…とか言ってたぞ?」



 カルシスはキャスの口マネをしながら内情を話してくれた。


 確かにシオンは森での騒動以来、剣を欲しいと思っていたが、それはキャスにも誰にも言ったことはなかった。



「お詫びってだけじゃないと思うが、まぁ、受け取ってやってやれよ!」



 逡巡の表情を浮かべるシオンに、カルシスは少し寂しげな表情を浮かべながら諭す様に言った。



「…はい! 今度キャスに会った時に改めてお礼を言うことにします」



「あぁ、そうしてやってくれ

 あの子も根は優しい子なんだが、同世代の友達がいない環境で育ったから分からない事も多いようなんだ

 気長に付き合ってやってくれよシオン…」



 そう言うとカルシスは自分は木剣を持ち、打ちかかってこいとシオンに言った。


 シオンは何合も打ちかかったが、木剣を持つカルシスに軽くあしらわれてその日の稽古を終えた。






「キャ、キャス! ちょっと待って!!」



「キャー! ってシオンかぁ、どうしたの?」



 カルシスとの稽古から三日目、その間、一度もすれ違うことのなかったキャスを家の前で見かけてシオンは思わず大声で呼びかけた。


 シオンに気づいていなかったようでキャスが叫び声をあげたので、家のドアが勢いよく開き、カルシスが顔を出したがシオンを見てすぐに引っ込めた。



「大声出してゴメン… 話がしたかったのに数日、見かけなかったから…」



「そう?普通にしてたけど… 

 …で、話って何?」



「あ、えっとお礼が言いたくて…」



「お礼?」



「この剣のこと、聞いたから…」



 シオンは腰に佩いた剣に手を添えて言った。



「えっ? 剣…?

 あ! カルシスの奴…」



 キャスの返事はとても小さな声だった。



「え?何?」



「ううん、何でもない!

 お礼も何もナイフの代わりだから気にしないで!」



「でもナイフは、キャスのせいじゃないし… 代わりにしては凄すぎるよ!」



「でも、森に誘ったのは私だし、あの剣も手にできなかったから…

 やっぱりその剣じゃ気にいらない?」



「ううん、とんでもない!

 重さもバランスも僕にピッタリだし、お礼が言いたいって言っただろ?」



「ほんと?! じゃあ良かった!」



「うん、この前はカッコつけていらないとか言ったけど…

 キャス、ありがとう!」



 シオンがキャスの顔を見ながら、真摯に礼を告げると、キャスは顔を真っ赤にして玄関への階段を上がった。



「シオン、似合ってるよ…」



 キャスは階段の上で一度振り向き、そう言うと、ドアの中に入っていった。


 シオンはキャスが消えたドアをしばらく見ていたが、さっきのキャスの真っ赤な顔が()()だと気付き、自然と笑みが浮かんできた。


 アパートへ帰ろうと踵を返すと、頭に何かが当たった。


 頭上を見ると、窓辺で小さな石をお手玉しているギュウチがいた。


 ギュウチは、シオンが頷くと何も言わずに引っ込んだ。






 その夜、シオンの姿はいつもの広場にあった。


 手持ち無沙汰で、いつも剣の練習前にする準備運動をしているといつの間にかギュウチが立っていた。



「お前は、じっと待つって事ができないのか?」



 ギュウチは笑いながらも呆れた様子だった。



「楽しみだったので…

 …すみません」



 シオンは、見られていると思っていなかったのでギュウチの指摘に少し恥ずかしくなって思わず謝った。




「別に謝ることじゃないだろ?

 まぁいい、お前のことだ、魔力感知は十分練習したんだろう?」



「はい、あれから毎晩やってます」



「ククッ、ご苦労なこった…

 どうせ圧縮の見通しもついてるんだろ?」



 ギュウチはシオンに近づくと、右手をシオンの魔袋あたりにあてた。



「ほれ、やってみろ?」



 シオンは内心、やり方を教えてくれないの?と思ったが、ギュウチの指摘の通り、目処はたっていたので、目を閉じ、魔力圧縮のイメージを始めた。





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