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「お前だって、デートの時まで俺等に貼り付かれんのは嫌だろ?」
「デ、デートだなんて…
そ、それより魔術を教えてくれるなんて、騎士団の規則は大丈夫ですか?」
「あん? あぁ、この術は俺のオリジナルだからな!
だが、条件がある」
「条件ですか…?」
「つーても、大した条件じゃねーよ、他言無用、秘密厳守ってだけだ」
「え?」
「俺はチートだから、自分でこの術に辿り着いたが、同じ技を使う流派があるらしくて…
出どころがバレると面倒いんだよ。
そもそもソイツらの術だって、誰かが思いついたもんだろ? 特許があるわけでもあるめーし!」
(チート…? ちょっと? 特許…?)
ギュウチの言葉は、シオンには分からない単語が時折、混じっていたが、術絡みで過去に揉めたことがあったのを感じとれた。
「てな理由で、俺を師匠と呼ぶのも許さん。
んーあれだ、道を尋ねたら教えてくれたくらいで考えろ!」
シオンは、それとは大分違うと思ったが、一応、頷いておいた。
「先にどんな術か、説明が必要だな。
俺達人間に、魔力器官と呼ばれる袋があるのは知ってるか?」
「あの… 僕、前は病院の手伝いをしてたのですが、その時に医師達が検証しても、魔力器官は無かったと…」
シオンは、ギュウチが機嫌を損ねるかと、恐る恐るそう返したが、ギュウチは却って感心したように話しを続けた。
「あぁ、物として存在しないのは確かにそうだ。
だが、無いのならその先の現象の説明が付かなくなる…
まぁ、ちょっとやってやるから見てろ」
ギュウチはそういうと、人差し指を見るようにと突き出した。
シオンがギュウチの指を見ていると、指が先日の魔獣との闘いの際の手や脚の様に、熱を帯びたように朱くなった。
「いいか? この指で今からお前の魔術器官に触れる。
多分それで魔力の雰囲気が掴めるはずだ。
掴んだらそれを見失わないように集中してみろ! 分かったな?」
そう言って、ギュウチは朱くなった指をシオンの鳩尾と臍の中間地点に当てた。
「どうだ、何かを感じるか?」
「は、はい。なんというか、熱気の様なものを感じます」
「よし、それが魔力だ。指を離すが、それを散らさないように集中してみろ」
「はい!」
シオンの返事とともに、ギュウチは指を離した。
「あぁ…
…すみません」
逃さないように集中していたシオンだったが、十を数えないくらいの間で、魔力は散ってしまった。
「いや、初めてにしては上出来だ。
そこに魔力が集まっていたのを認識できただろ?」
「はい、確かに何かがありました」
「もう一度やってやるが、今度は散らさない様にではなく、むしろ集めるくらいの意識でいろ!
分かったな?」
ギュウチはそう言って、再び指をシオンの腹に当てた。シオンは言われた通りに、魔力と思わしきものを集める様に意識した。
その間は先程より長く、シオンからすると先程とは違い、徐々に魔力が送られて来るように感じた。
「よし、いいぞ」
ギュウチはそう言って指を離したが、それでもシオンの集中は切れることなく、湯が沸く時間ほど経ってから、ゆっくりと魔力は散っていった。
「ハァ…ハァ…、どうでしょうか?」
シオンは、息を整えながら尋ねた。先ほどよりも長く集中できていた自負もあり、ギュウチの返事が気になったが、その答えは想像以上であった。
「シオン、上出来だ!
俺は、今の指に魔力を込めてなかった。
お前が集めて形にしていたのは、全てお前の魔力だよ」
「えぇ! ほ、本当ですか?」
シオンは、初めてギュウチに名で呼ばれた事に気付き、成功の喜びが増していた。
「あぁ、本当だ! 嘘など言ってどうなる? お前は確かに魔力を持ち、センスもあることが分かった」
「では、あの技を教えくれるのですね」
「あぁ、だがもう少し説明をしておこう。重要な事だ、しっかり聞いておけよ」
シオンはすぐにでも教えて貰いたかったが、ギュウチの真剣な表情に頷く以外なかった。
「今、お前が感知できた… 仮に魔力袋と呼ぶが、そこにある魔力の量は、修行だのなんだのしても生涯、ほぼ変わることはない。
そもそも人が持つ魔力の量は、体格や経験に関わらずどっこいだ。つまり通常の魔力の量は、俺もお前も変わらないって事だ。」
「えぇ?!」
シオンは思わず声をあげてしまった。魔力に関する説明が、余りにも想像と違っていたからだ。
「まぁ聞け、魔力は使うと減り、満タンまで戻すのに起きている時で十二時間、寝てても八時間は掛かる。
まぁ、朝の薪割りに魔力を使えば、その日はそれで御仕舞だな…」
「でもギュウチさんは…」
「あぁ、だから誰も使わない魔力をどうするか?って考えて、行き着いたのが魔力圧縮法だ。
初めて魔力に触れたお前にも分かる様に言うと、使わなかった魔力を魔力袋の中で圧縮…押し潰すイメージを持つんだ。それで、そのまま待っていれば、袋の中の空いた隙間に魔力が溜まる。それを繰り返してストックしておけば日に何度も魔力を使えるってわけさ」
「す、すごい技じゃないですか!」
興奮するシオンにギュウチは、低い声で言った。
「だが、この技には危険もある…」




