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 キャスを逃がす事に成功し満足気な中、死を待つシオンに対し、魔獣は唸るだけで、何かを警戒しているのか襲いかかろうとしなかった。



(嬲るつもりか?… いや、僕を見てない)



「小僧、よく耐えたな!」



 シオンの頭の上に、木の葉が一枚と男の声が降ってきた。


 シオンが、痛みを堪えて声の方を見上げると、シオンの寄り掛かっている木の枝に、男が立っていた。


 洒脱な雰囲気を持つその男、ギュウチは、キャスに付くもう一人の護衛で、カルシスの指導の際も遠目に見ているだけで、シオンとは距離を取っているのか、話しかけられたことも無い相手であった。



「小僧、生きてるよな? まぁちょい待ってな!」



 くだけた物言いは、カルシスとは正反対で、同じ騎士とは思えなかったが、木から飛び降り、シオンの前に立つその姿は、明らかに強者のそれであった。



「おい、犬コロ… さっさと逃げねーと死ぬぞ!」



 言葉と共に、常人離れした速度で飛び出すと、魔物の横っ面を殴りつけた。


 魔物は警戒していたはずなのに、その一撃をまともにくらい、悲鳴を上げて後退った。



「チィ、固ってーなぁー! …後、4回か… 

 おい、小僧! よく見とけよ!!」



 そのまま逃げるかと思われた魔獣は、ギュウチがシオンに目を向けたと見ると、牙を剥き、果敢に突撃してきた。


 ギュウチは、それを見ることもなくサイドステップで躱すや、魔獣の横っ腹に、下から上に抜ける軌道で回し蹴りを叩き込んだ。


 今度も常人の技ではなかった。蹴りを食らった魔獣は吹き飛び、数本先の木に激突したのだ。


 それでも魔獣は死ななかったが、完全に戦意を失ったか、恨みがましい目でシオン達を睨みながらも、足を引きずり森の奥へと姿を消した。



「ふう〜、こんなもんか! 

 おい小僧、ちゃんと見ていたか?

 …ん、死んだか?」



 ギュウチは、デリカシーの欠片もない言葉を吐きながら、シオンの横に屈んで脈を取った。



「フン! 気絶か… どっちにしても担いで帰らなきゃならないじゃないか!」



 シオンには、暫く前からギュウチの声が遠くで話している様に聞こえていた。


 だが、シオンは確かに見た!


 ギュウチが魔物を蹴り上げた瞬間、その足が熱を帯びたかの様に朱色に変色したのを…



「フン! まぁいい、俺も自分の事を済ますか…」



 ギュウチは、シオンをその場に残すと、地に突き立った剣の前に陣取った。



「これか… どれ?」



 ギュウチは、剣を無造作に掴んだ。



「痛ってーなぁーー!」



 剣は等しく“バチン”という音をたて、無造作に掴んだギュウチの手を弾いた。



「フン! 聞いていた通りか…

 4か…ならいけるだろ?!」



 ギュウチは、またしても剣の柄を握ったが、今度のギュウチの手は、熱を帯びた様に朱色に変色していた。



「フン! やはりこの方法でいけるか、後は抜く…

 …いや、な、ま、まずい! こ、これは…す、吸われている!!」



 ギュウチの朱色だった手は、みるみるうちに肌色に戻り、戻った瞬間、またしても“バチン”と音をたてて手が弾かれた。



「ま、まさか、この剣は常夜党首の剣…

 痛ってぇー、なんでそんなもんがこんな所に…」



 常夜党と呼ばれる盗賊集団の首魁は、相手の魔力を盗み取る“奪魔吸取”という技を得意としていた。


 ギュウチは、握った手から魔力が抜かれていくその感覚が、噂に聞いた常夜党首の技に感じたのだ。



「だが、十年以上、音沙汰を聞かぬというのに…」






「「シオン〜!、ギュウチ〜!」」



 遠くから、ギュウチ達を呼ぶ声が聞こえてきた。



「ちぃ、時間切れか…

 やべぇ、小僧の止血くらいしないとな!」



 ギュウチがシオンの元に戻ると、二人を呼ぶ声は、だいぶ近づいていた。


 ギュウチは慌てて止血を終えると、大声で()の主を呼んだ。



「お嬢! カルシス隊長! こちらでーす!!」



 ギュウチの返しに、しばらくすると草を踏み分ける音がして、キャスとカルシスが駆け寄ってきた。



「シオーーン!」



 キャスは泣きながら叫ぶと、倒れ込むシオンに抱きついた。



「お嬢、止血してありますが、あんま揺らさないでやって下さい…」



 キャスは、ウンウンと頷きながらも暫く離れる様子では無さそうだった。



「ギュウチ、よくやったな! 怪我は無いか?」



「あ、はい 俺はありません…

 が、疲れちまって帰りに背負うのは勘弁を…」



「バカ! そんな事か…

 シオンを背負っていくのは…

 …

 …うん、お前だな!」



「…だと思いましたよ… 

 ホント、お嬢も隊長も人使い荒いなぁー!

 …お嬢、帰りましょおーぜ!」



 結局、シオンはギュウチが背負って帰路に着いた。


 道中、キャスは甲斐甲斐しくシオンの世話をしていたが、シオンが目覚めたのはエストの街の病院のベッドに着いてからだった。


 ギュウチがシオンをベッドに降ろす間、キャスはやっと安心したのか、涙ぐみながらもかえって言葉が出ない様子だった。


 青い顔のシオンに、カルシスもすう言つげて、力の抜けたキャスを支えながら部屋を出た。



「今日見たことは、今度、俺が呼び出すまで他言無用にしろ」



 最後に、ギュウチはシオンにそう言って、病室の扉を閉めた。




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