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アルカナの夜明け  作者: らいふがーど
2/9

公正と正義

第2話


あの日から数日後、不眠不休の日々が続きソフィリアの目の下には大きなクマが出来ていた。


天界には多種多様な種族が共存している。

一見すると利点だけに捉えられるかもしれないが、これが欠点、難点となることもある。


「多すぎる…」


ソフィリアを悩ませる大きな要因は種族の豊富さ、多さである。


まず神々は他の種族と比べ至高の存在であるため絶対的な力を誇っている。だがほとんどの神々が今回のアウロラに対して非協力的であるため、アクアのような特例を除いて基本的には除外対象と見なしても良いだろう。

次点で天使は魔法や魔術を主に行使し戦う。それ故に戦闘力はほとんど無いに等しい、だが味方への援護に関しては神を除く他の種族を上回るほどの実力を用しているため含めることも一考の余地がある。

そして騎士は今回の“アウロラ”に対して主力となる種族である。剣を極め、己を高め続けてきた騎士達にはソフィリアも信頼を置いている。

最後に人間、この天界に住む人間のほとんどは戦闘経験もなければ突出した実力もない。だが、中にも有能な人材は存在するため隈無く探していくべきだろう。


“アウロラ”には積極的に騎士を取り入れていきたいところだ。ただ一口に騎士と言っても、単独で戦うことが出来る騎士と群衆で戦うことに特化した騎士の二種類が天界には存在している。人数制限も鑑みて単独で戦う騎士を積極的に取り入れていくべきだろう。

そして、その中でも選ばれし三人の聖剣使い“聖騎士”をどれだけ味方に付けることが出来るかどうかも天界の命運を分ける要素の一つである。


誰を選ぶことが正解か、正直ソフィリアには分かり兼ねる部分があった。

正解なんて無いというのが正解なのだろう、余計に頭が混乱してくる。


次第に疲れも見えてきたため、少し休むためソファに腰掛けた。

そして得意の紅茶を入れ、一息つくと部屋をコンコンとノックする音が聞こえてくる。


「やあ、進んでいるかい?」


部屋に訪れた青年は肩まで伸びた美しい金色の髪を持ち、情熱を表す赤い眼、整った顔立ちそしてその風格からは正義を象徴するような雰囲気を放っていた。シードの一神である太陽を司る神、ニアである。


「その様子だとかなり難航してるっぽいね」


「ええ、お陰様で。今日はどうされたのですか?申し訳ないのですが大変立て込んでおりまして、また後日お尋ね頂けるとこちらとしても助かるのですが」


ソフィリアは自慢の茶葉で紅茶を入れ、早く帰れと言わんばかりの視線をニアに送った。


「今日は提案を持ちかけに来たんだ」


ニアは視線を軽く受け流すとソフィリアの元へと詰め寄った。


「なんですか?いきなり気持ち悪いですよ」


ソフィリアは言葉を濁すことなく一蹴した。

ニアは嫌な顔ひとつ見せるどころかむしろ嬉しそうに微笑んだ。変態気質な所が垣間見えた瞬間である。


「まぁまぁ悪い話じゃないから聞いてくれ、悪神との戦いは勝ちたいか?」


「ええ、無論です」


キッパリと答えた彼女の眼差しは既に覚悟を決めた様子が伺える。

ソフィリアの応答に満足したのか、さっきとは打って変わって声のトーンが低くなる。


「俺から一人、紹介したい人がいるんだ」


「一人…ということは聖騎士か人間ということになりますね」


「さすがソフィリアちゃん、理解力高くて助かるよ。ちなみに人間の方ね」


「それで、一体誰を?」


ニアは口が上手く、交友関係も幅広い。他の神とは違い、壁もなく気さくで話しやすいと好評である為かなり期待が持てる。


「アバン刑務所の受刑者、囚人番号は0215、名をアリサ=ヴァレット」


天界唯一の犯罪者更生施設であるアバン刑務所、そこに入る者は皆神道や人道に反した者のみである。

信頼という点においては不安要素が強く、反逆行為も起こし兼ねない為、犯罪者に天界の命運を委ねるとなると以ての外である。


「こんな時に冗談なんて、らしいと言えばらしいですが、時と場合を考えた方がよろしいかと」


ソフィリアはいつもより一層鋭い眼光でニアを睨みつけた。

犯罪者を起用する気など毛頭ない。そこには怒りを含んでいた。


「冗談なんかじゃない。実際、アリサの実力は神にも匹敵する」

「それに、アリサは冤罪で捕まっている」


ニアの眼からそれが嘘ではないと汲み取れる。

目は口ほどに物を言うとはよく言ったものである。


「冤罪ですか…にわかには信じ難いですね、その根拠は、提示できる物はありますか?」


制限的とはいえ自由度が高い天界で罪を犯した。その事実が嘘であるなら、それを証明する必要がある。


「根拠は、あの判決を下したのは…俺だからだ」


ニアの口振りは何かを悔いるように、あの日の懺悔をするように、酷く弱々しいものであった。

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