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蜜月?

「エミール様、シルフィア様おめでとうございます」


 5歳から通っているエクセグラン公爵家。使用人もみんな顔見知りだ。みんな私がエミール様と結婚してここにいることに何の違和感もないようだ。


 そしてみんな私を歓迎してくれている。


 家令のセバスが前に出た。

「若奥様、今日からよろしくお願いします。私達使用人一同は、若奥様の味方でございます」


「若奥様なんてなんだかくすぐったいわ。今まで通りシルフィアでいいわ」


 白い結婚なのに若奥様なんてね。


 メイド頭のメアリーがそばに来て、耳元で囁く。


「私達メイド一同もシルフィア様の味方です。もちろん旦那様や奥様もシルフィア様が一番です。エミール坊ちゃまなど気にしなくてよろしいですよ」


 エミール様、人気ないな。ここで私を歓迎していないのはエミール様だけみたいだ。

 5歳から公爵夫人教育のために通って、みんなと仲良くしておいて良かった。



 パーティーでもエミール様は縄で縛られて猿ぐつわをされたままだった。


「お義父様、そろそろ縄を解いてあげてはいかがでしょうか?」


「シルフィア、気にしないでくれ。縄を解くと逃げるだろう」


 義父は逃さないつもりだな。


 義父母や使用人達には申し訳ないが、私は白い結婚で婚姻自体なかったことにするつもりだ。

 それにはザラ嬢のところへ行ってくれている方が有難い。


「もう、自由にしてあげればよろしいかと。ザラ嬢のところへ行きたければ行けばよろしいのです」


「し、しかし」


「私は大丈夫ですわ。長い間お義母様やお義祖母さまから公爵夫人として学んでまいりました。エミール様がいなくても立派に小公爵夫人として務めますわ」


「そうね。シルフィアちゃんは可愛くて優秀だもの。あんな女に狂っているエミールなんかいらないわね。あなた、縄を解いて解放しましょう」


「そうだな。馬鹿はいらん」


 義父母はなかなか辛辣だわ。


 二人とも家に帰らず、次期公爵としての執務も放り出して、ザラ嬢にくっついているエミール様のことを怒っているようだ。


 パーティーが終わり、ようやく義父に縄を解かれ、猿ぐつわを外されたエミール様はホールに座り込んでいる。


 義父母と私はエミール様を見下ろしている。


「どうしたのですか? ザラ嬢のところに戻らなくてよろしいのですか?」


 エミール様は腕を組んで難しい顔をしている。


「それがな、あれほど好きで好きでどうしようもなかったのに、顔も思い出せないんだ。ザラのどこが好きだったのかもわからない」


 はぁ~? 何言ってるの?


「それって!」


 義父は興奮気味にエミール様の肩を掴む。


「魔法じゃないのか? お前は魔法にかけられていたんじゃないのか?」


 魔法?


 義父が私の顔を見た。


「確かそのザラって女は女子生徒には総スカンだったんだろ?」


「はい。男子生徒にだけ好かれていました」


 私はエミール様の顔を見ながら義父に返事をした。


 義父は頷く。


「それはきっと魅了の魔法だな。あれは女性には効かない。そして多分、接触時間が長い程効き目が良いのではないか? 殿下やお前達側近はあの女と長時間くっついていたからより深く魔法にかかっていたのだろう」


 エミール様がザラ嬢の取り巻きのようになったのは夏を過ぎてからだ。春はまだ私と買い物や観劇にも一緒に行っていた。誕生日にはプレゼントをくれたし、夜会にはドレスやアクセサリーをプレゼントしてくれて、エスコートしてくれたわ。


 だんだん魔法にかかっていったということ?


「しかし、あれは禁忌の魔法だ。まさか、あの女は殿下やお前達に魔法で取り入って、意のままに操り、国を転覆させるつもりなのか?」


 禁忌の魔法?


「お義父様、禁忌の魔法という事は捕縛されたら……」

「あぁ、処刑だろうな」

 義父は小さく呟き、エミール様の顔を見た。


「エミール、お前を今日から1週間監禁する」


 はぁ? 監禁?


 義父よ、何を言ってるんだ?


「1週間で魔法が抜け切るかどうかはわからんが、あの女と1週間接触しなかったらどうなるか実験だ」


 実験か。


「しかし、私が王宮に戻らなければ殿下やザラ達はきっと変に思う。1週間も殿下の側を離れるのは難しい」


 エミール様は立ちあがろうとした。


「大丈夫だ。お前は今日婚姻したばかりだ。今日から1週間は蜜月だ。普通はみんな休みを取るだろう。王宮には私から連絡を入れておく。もし、誰かが来たらそう言って追い返す。さぁ、ふたりで部屋に」


 え~! 蜜月? ふたりで?


 ちょっと待ってよ白い結婚希望なのよ! 


 自由を勝ち取るのよ! 


 私とエミール様は問答無用で寝室に押し込まれてしまった。



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