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キラリのネックレス

作者: 紅鋼

これは、絵本を覗いたような、キラキラしたお話です。


『もう寝なさい、いつまで起きているの?』

お母さんが寝室の入り口から声をかけました。

カコは明日から小学生になる6歳の女の子です。

『はぁい、ママ、あのね』

『なぁに?』

『しょうがっこうはたのしいところ?』

『ええ、たくさんお友達を作って、お勉強もスポーツも、なんでも一生懸命頑張るのよ。』

『うん…頑張る…』


満天の星空が美しい夜のことでした。

実のところ、カコは学校生活が不安で不安でたまりませんでした。

『おともだち、できるかなぁ…』


『できるよ』


どこからともなく声がしました。

そして安らかな音楽も一緒に聞こえてきました。


『え…?』

ベッドから飛び起きて、部屋の灯りをつけても誰もいません。お母さんではないようです。


『こっちだよ、こっち。』


優しい囁き声がカコを呼びます。


声につられて辺りを見回すと、窓の縁に何かが見えました。


思わず近づいて話しかけました。

『あなたはだぁれ…?』

『僕のことが見える?』

『…み、みえるよ』

そこには、とんがり帽子を被り、キラキラの布で作られたお洋服を着てポシェットをさげ、背中から小さな羽を生やした男の子が座っていました。


『見つけてくれてありがとう、僕はキラリ。君は?』

『か、カコ』

『カコちゃん、よろしくね』


大きさは、自分が持っている着せ替え人形と同じくらいで、なんと妖精さんでした。


『キラリ、くん…?』

『うん、そうだよ』


目の前で起こっていることが理解できません。それでも何とか話しかけました。


『よ、ようせいさん…?』

『うん、あの星空からやってきたんだ』

キラリは窓の外を向いて空を指さしました。

『すごい…ほんとうにいるんだ…』

『会えて嬉しいよ。それと、僕を怖がらないでくれたことも』


キラリは青い目をキラキラ輝かせて、カコを見つめて微笑みました。


『こわがらないよ。キラリくんとってもすてき。わたしようせいさんってあってみたかったんだ』

『僕も、"にんげん"に会うの初めてだから嬉しい!』


2人は出会ってものの五分で仲良くなりました。


『カコちゃん、明日から小学生なの?』

『え、きいてたの?』

『えへへ、ごめんね。窓の近くから聞いてた。』

『でもいろいろしんぱいなんだよね』

『どうして?』

『わたし、おべんきょうもスポーツもうまくできないよ。ようちえんのおともだちはみんなちがうしょうがっこうにいくから、あたらしいおともだちできないかもしれない』

『そっかぁ…』

『キラリくんがしょうがっこういっしょにきてくれたらいいのに』

『うーん…僕もそれができれば一番いいんだけどね。そのかわり、カコちゃんが明日から学校生活上手くいくようにお守りをあげる』


キラリはポシェットから長い鎖を取り出しました。


『うんしょ、よいしょ。カコちゃんこれ引っ張って〜』


小さなキラリには、ポシェットの中身を出すのも一苦労なようです。


『なぁに、これ』


カコがその鎖を引っ張ると、ようやくそれが何か分かりました。


『これはお友達ができるお守り。』


それは星の形をしたチャームの黄金色のネックレスでした。

『おまもり?』

『そう、首につけて、目立たないように服の下に隠しておけば大丈夫。』

『これでお友達できる?』

『もちろん。これをみたら僕のことを思い出してね。』

『え…?』

『僕はもう星に帰らなきゃ』

『キラリくん、行っちゃうの?』


カコが呼び止めると、キラリはちょっと悲しそうな顔をして言いました。


『君に友達ができたら、僕は必要ないから。』


そう言って、また窓の縁に立ちました。


『嫌だよ、キラリくん、もうちょっとお話しようよ』


カコは今にも泣き出しそうな顔になりました。

『ごめんね。大丈夫、君ならできる。もし明日お友達ができたらこのネックレスを外して窓の近くに持って行って、僕に語りかけて。絶対気づくから。』


『キラリくん…行かないで…』

『カコちゃん、頑張ってね』


そう聞こえるか否か、突然突風が吹き荒れて、再び目の前を見ましたが、キラリの姿は影も形もありませんでした。


次にカコが目覚めたのは次の日の朝でした。首元に手をやると、確かにネックレスがあります。

『夢じゃなかった…』

入学式でいきなり何人かの女の子に声をかけられたカコは、持ち前の明るさでどんどん友達を作っていきました。


その晩、カコはネックレスを外して窓辺に寄りかかりました。

『今日は星が見えないからいないかなぁ…』

そう思いつつ、話しかけてみました。

『…キラリくん、ともだち、できたよ。ありがとう。』


あの可愛らしい姿は全く見えませんでした。

それでも確かに、カコの耳には



『やったね、カコちゃん』



と届きました。

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