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第九十話 パティの部屋で一緒に

 パティの部屋へ。

 私の部屋と内装はあまり変わらないのだが、滞在期間が長くなってきているのでパティの香りがほんのり染みついているような気がする。

 彼女は多少ながらも香水を使うからな。

 香水を着けなくてもいい匂いなのに。


「マヤ様。パジャマに着替えますのであちらへ向いてて下さいますか?」

「あぁ、そうだね。わかったよ。」


 私はパティが見えない方へ向いて椅子に掛けて待つ。

 ガサゴソと着替えている音が聞こえる。

 パティはいつも当たり前の存在なので慣れっことはいえ、私の本当の年齢から見たら十三歳の女の子なんて子供か下手すれば孫である。

 DT中学生ならばそれなりの緊張をするだろうが、おっさんからすると今までの経験から変なことを想像して別の意味で緊張してしまう。

 理性は人並み以上あるつもりなので彼女に対して滅多なことはしないが、身体は一人前なのでどういうふうに育っているのか気になって仕方が無い。


「着替え、終わりました…。どうぞ。」


 パティのパジャマはひらひらがついたピンク色の可愛いものだった。

 前にやったパジャマパーティーの時に見たかな?


「パティ、パジャマがとても似合ってて可愛いよ。」

「マヤ様…、ありがとうございます。」


 パティは頬を赤くして微笑んだ。

 やっと笑ってくれたね。 


「あの…、今晩はずっと一緒にいてくださいますよね?」

「パティさえ良ければ…。緊張するな。あはは…」


 ぐぅ~~ お腹が鳴ってしまった。


「そういえば夕方にセルギウスとリンゴを一個食べただけだった。

 夕食を食べることなんてすっかり忘れていたよ。」


「忘れていたなんて、マヤ様は面白いですわね。うふふ

 今お茶を入れますから。

 あとお腹いっぱいにはなりませんが、お菓子も買ってあるんですよ。

 ポルボロン(※実在するスペインの伝統菓子)っていうんです。」


 パティは備え付けのポットに水を入れて、火属性の魔法で水を直接温めた。

 そして眠りに効果があるカモミールティーを入れてくれた。


「うーん、パティが入れてくれるお茶はいつも美味しいね。」

「うふふ ありがとうございます。」


 このポルボロンというお菓子、見た目はクッキーぽいが口の中に入れると柔らかく、ホロッと溶ける舌触りがとても良い。

 美味しくてつい調子に乗りたくさん食べてしまった。


「マヤ様、夜にそんなにお菓子を食べたら太りますよ。」

「朝になったらまた王女様と訓練かな。だから大丈夫だよ。」

「それもそうでしたわね。うふふ」


 パティが元気になって良かった。

 だが気を紛らわせただけで彼女の心配事が解決したわけでは無い。

 事を蒸し返してしまうが、話を今日のことに向ける。

 パティに言いたいことを言わせてスッキリしてもらおう。


「今日はいろいろあり過ぎたね…。疲れちゃった。

 パティが来てくれて本当に良かった。

 念話が出来なかったらどうしようも無かったよ。

 サリ様にも感謝だね。」


「マヤ様…、もうあんなことはしないで下さい。

 ボロボロになったマヤ様の姿を見てに二度と会えなくなる気がして、必死にフルリカバリーを掛けました。

 マヤ様を失いそうになることがこんなに怖くなるなんて…。」


 パティは再び暗い顔になって話し始めた。

 ここからうまいこと話を持って行ければ良いが。


「ありがとう、パティ。君のおかげだよ。

 あれは私も無茶が過ぎたと思ってる。

 まさかあそこまで痛めつけられるなんて思っていなかった。

 かといってあの場にパティやエリカさんたちがいたらみんな死んでいたかも知れない。

 それくらいあのブラックボールという魔物の攻撃は激しかった。

 力業でやるしかなかったんだ。」


「でもまたこんなことがあるかもしれません。

 私はいつでもマヤ様を心配しているんです。

 出来る限りお側にいさせて下さい…。」


「うん…。私ももっと強くならなければいけないなあ。

 ローサ様にもっと刀技を鍛えてもらわなきゃね。」


 それでもパティは私より強い子だな。

 パティが前にムーダーエイプにやられて大怪我をした姿を見た時、その後も私の落ち込み方は酷かった。

 彼女を護れなかったという失敗に(さいな)んでいた。

 アマリアさんが慰めてくれなかったらずっと腐っていたかも知れない。


「マヤ様、やっぱりだいぶんお疲れのようなお顔ですね。

 もうお休みしましょうか。」


「う…ん… でもいいのかな…? 一緒に寝るのって…」


「私は今晩マヤ様と一緒にいないと耐えられそうにありません。

 恥ずかしいですけれど… ふぅ…」


 パティはますます顔を真っ赤にして、言葉にならない声を出している。

 待てよ、普段気にしていなかった私はほとんどシャツとぱんつだけで寝ているので、パジャマも一応あるが持って来ていない。

 しかも今履いているのはルナちゃんが用意してくれた女神パワーのビキニパンツだ。

 シャツの下で隠れるからいいけれど、なんか恥ずかしい。


「あの… パジャマが無くて、シャツとぱんつだけれどいいかな? あはは」

「じゃあ先にお布団に入ってあっちを向いてますね。」


 パティは布団に入ってから、手を上げて灯りを暗くした。

 マカレーナのお屋敷の部屋もそうだが、灯りは魔道具になっていて、壁にスイッチもあるが魔力持ちの人は自分で制御も出来る便利なものだ。

 私はブラウスとズボンを脱いで下着姿になる。


「じゃあ、布団に入るね。」


 パティはエビ型になって向こうを向いてて、私は仰向けになっている。

 布団の中だとパティの香りがすごくする。あぁ…良い匂いだ。


「マヤ様…、手を繋いでいいですか…?」

「うん…。」


 パティも仰向けになり、恋人繋ぎで指を絡ませる。

 ……手を繋いだまま五分も経ったろうか。緊張して余計に眠れない。

 パティも起きたまま無言になっている。

 呼吸が少し乱れているのは気のせいだろうか。


「マヤ様。私、我慢が出来ません…。」

「えっ?」


 パティは布団の中に入ったまま、私に覆い被さった。

 なんて大胆な…。


「キス…、したいです…。」


 パティはそう言って、ゆっくり顔を近づけて私にキスをした。

 こんなに積極的になったのは、彼女がムーダーエイプにやられて大怪我した後もだった。

 エッチなキスではなく、やはり唇を挟むはむはむキスがずっと続いている。

 私の胸には、急成長しているパティの胸がぽよんと乗っかっている。

 この感触、何という至福!

 あとちょっとでぱ◯ぱ◯が出来そうなのに!


 そしてはむはむが止まったとき、唇から魔力が流れ込んできた。

 祝福…、いや、グレイテストブレッシングだ。

 フルリカバリーばかりでなく、グレイテストブレッシングもマスターしたんだね…。

 グロリアさんとは少し違う、心の底まで染み渡るような温かい魔力だ。

 その瞬間、心臓がきゅっと締まった感覚が来た。

 あぁ…、パティが欲しい。だがこれ以上はダメだ。

 理性を保つのが苦しい。


「ん… ふぅ。私、もう止まりません。」


 パティは頬からおでこまで私の顔をたくさんちゅっちゅし、耳や首元までキスをしてきた。

 私はとくにそこらが弱いので感じてしまう。

 私の分身がカンカンに怒りまくっているところへ、パティの下半身がごそごそと動き回るのでちょうど当たっていまい、噴火しそうである。


「ダメだよパティ…、こんなの…」


 それでもパティはキスをやめず、再び私の唇を塞いだ。

 ひたすらはむはむキスを続けているが、どうもパティは無意識に自分の下半身を私に擦りつけているような気がする。

 エッチなキスをしたくなるが、この子にはまだ早すぎる。


 私は我慢に徹した。

 そうだ、元素記号の覚え方を…。

 すいへーりーべーぼくのふね… ななまがりしっぷすくらーくか…

 あと何だっけ…?


「ひっ あぁ… うぅ…」


 その時、パティがビクンと身体を震わせ声をあげる。

 そして私に全体重をかけるようにクタッとなった。


「え… えぇぇぇえ!!??」


 パティは布団の中に潜り込み、あっちを向いてしまった。

彼女はきっと初めてこの感覚を知ったのかも知れない。


「パティ?」

「な、何でもありません! 知りません! うぅぅ…」


 パティは布団から出てきそうにない。

 それより私はもう溶岩が噴火口まで来てしまっている。


「パティ、ちょっとトイレに行ってくるね。」


 そろりとトイレに向かい、ドアを閉めてぱんつを降ろした瞬間爆発し、火口から勢いよく溶岩が流れ出した。

 はぁ…、女の子の部屋のトイレでこんなことになって…

 でも開放されスッキリした気分だ。


 私はベッドに戻り、布団に入った。

 パティは布団に潜ったままである。

 このまま寝てくれると良いけれど…

 私も安心してしまい、だんだんとまぶたが下がり…。


---


「おはようございます…、パトリシア様…。」


 ルナちゃん… もう朝か…。

 ??? あ、いや、フローラちゃん!?

 そうだ、ゆうべからパティの部屋にいるんだった。

 彼女はまだ私に気づいていないようなので、思わず私は布団に潜ってしまった。

 パティはいつの間にか顔を出してまだスヤスヤと寝ている。


「あら…、まだお休みでしたか。

 私が来たときはいつも起きてらっしゃるのに、珍しいですね…

 え? パトリシア様はこんなに大きかったかしら?」


 うわわ、声が近い。こっちに来てしまったのか。

 それにしてもパティの布団の中、めちゃくちゃ良い匂い…くんかくんか。

 目の前はたぶんパティの腰の辺り…

 それにしても良い香りで、エルミラさんのより甘くてふわっとしている。


「パトリシア様… おはようございます。朝ですよ…」


 大人しいフローラちゃんはやや小さめのやさしい声をかける。


「ん… ううん…」


 うわっ パティが動いて横向きになり、私の顔の目前に股間が!?

 すーはーすーはー 何という官能的なかほり…

 いかん… 分身殿がむくむくと起き上がりだした。


「う…ん… フローラさんですか… ぉはょぅござぃます…」

「おはようございます。よくおやすみになられましたね。」

「??? あっ! あの… フローラさん、その…」

「どうかなさいましたか?」


 パティが起きて、現在の状況を理解しつつある。

 うひゃっ 顔が股に挟まれた。むぐぐっ くんかくんか

 この布の向こうには神秘の花園が存在していると思うと夢が広がるようだ。


「お布団を汚されたのでしたら、お気になさらないで下さいませ。

 女性ならあり得ることですから…。」


 確かにホテル勤めの時でも、始まってしまってシーツを汚してしまったという女性客が稀にいらっしゃったから、それは仕方が無い。


「ちっ 違うんです。その…」

「ご気分が優れませんか?

 このままお休みになられるとしても、パジャマと下着のお召し替えだけでもいかがですか?」

「いえ、けっこうです…。このまま休ませて下さい…。」

「かしこまりました。少しだけお片付けをしますね。」


 ふう、とりあえず難は逃れたか。

 早く部屋から出て行ってくれないかなあ。


「あら? これは… 殿方の服でしょうか。どうしてここに…」


 しまったぁぁぁぁぁ!

 私のシャツとズボンを床に脱ぎ散らしたままだったぁぁ…


「わっ 私、少しだけ男装に興味がありまして、ちょっと着てみたんです。おほほ」


「そうなんですか?

 でもパトリシア様ならば何でもお似合いでしょうね。うふふ」


 パティ、それはちょっと苦しい言い訳だったが、フローラちゃんが素直でいい子そうだったからラッキーだぞ。


 コンコン「失礼します。パトリシア様はもう起きてらっしゃいますでしょうか?

 マヤ様が部屋にいらっしゃらないので何かご存じでないかと…。」


 あれは!? ルナちゃんの声!

 ルナちゃんには何も言ってなかった。まずい! 非常にまずい!


「あああマヤ様は朝早くから出かけるとおっしゃってましたわ。」


「そうですか…。お部屋のシーツが整ったままだったのでお帰りではなかったと…。

 フローラ、手に持ってる服は殿方の…??」


「パトリシア様は男装がご趣味みたいですよ。」


「でもその服って、私見たことあるよ。」


 またまた状況がまずくなった。

 あれはルナちゃんが着せてくれた服だから覚えていても不思議ではない。


「フローラ、その服を貸してもらえるかしら。」

「はい、どうぞ…。」

「くんくん…くんくんくん… やっぱりこれはマヤ様の匂い…。

 どうしてパトリシア様のお部屋にマヤ様の服があるんでしょうか。」


 くぁぁぁぁぁ… そこで匂いを嗅ぐかね。

 ルナちゃんも匂いフェチの傾向があると思ったが、これはやられた。


「おかしいですね…。お布団の膨らみが不自然です。

 パトリシア様、失礼します!」


「ルナさん待ちなさい! あぁ…」


 とうとう布団を捲られてしまった。終わった…。


「やぁ…。ははは」


「ま、マヤ様!! なんて格好で!!

 しかもパトリシア様のそんなところに顔を押しつけて!」

「はわわわわわ…」


 ルナちゃんが残念そうな顔をして私を見つめ、フローラちゃんは両手で顔を隠して指の隙間から私を覗いている。


「マヤ様。もう男爵様ですからたくさんの女性を好きになるのはかまいません。

 ですが私より若い女の子とエッチなことするのはいけないと思います。」


 どこかの最強メイドロボみたいなことを言うなよ…。


「ルナちゃん、私は断じてパティとエッチなことはしていないぞ。」

「そうですよ、ルナさん。いろいろ大変なことがあって怖くなったから、マヤ様と一緒にいて欲しいと私がおねがいしたん…で…す…。」


「わかりました。そういうことにしておきます。

 マヤ様、もう朝食の時間です。

 お手伝いしますから早く服を着ましょう。」


「あぁ、うん。」


 私はパティが見ているのも忘れて、せせこましくズボンを履かせてもらってブラウスのボタンを閉じてもらう。

 なぜかパティは恥ずかしがらずジト目で私を見ている。


「そのくらいご自分で着られるでしょうに、男性はずいぶん至れり尽くせりですわね。

 ところでルナ[ちゃん]とは何ですの?

 とてもお親しいようですわね。」


「それは彼女の緊張をほぐすためにだねえ、うんうん。」

「はい、そうですそうです!

 マヤ様はとてもお優しいですから!」


 今度は逆にルナちゃんの方が焦っている。

 女の子同士は大変だねえ。


「もう…、王女様といい、マヤ様の周りはどんどん女性が増えますわね。

 私とマヤ様が一緒にいられる時間がますます減ってしまわないかしら。」


「じゃあ、パティも着替えがあるだろうから、先に食堂へ行ってるね。」


 早めにこの場を去った方が良かろうと、そう言ってごまかした。


「はい。マヤ様はお腹空いているでしょうから、お先に召し上がってて下さいね。」


---


 ルナちゃんと私はパティの部屋を退室する。

 パティとルナちゃんとの間に火花が飛ぶ寸前だった。

 今朝は布団の中で良い思いをしてしまったけれど、パティは今まで恥ずかしがって一緒に寝るのは遠慮していたのに心境の変化でこんなことになってしまったから、今後は調子に乗らないよう自戒をせねばなぁ。

 誰もいない廊下を歩いている途中、ルナちゃんがクドクドと話し出す。


「マヤ様、女の子は大事にしなければいけませんよ。

 パトリシア様はまだ心も体も成長期ですからエッチなことはまだいけません。

 間違った知識を植え込まれると、大人になってから大変ですからね。」


 ルナちゃんが私の分身を洗ってくれるのは、私を信用してくれて今後の仕事のために経験を積まないといけないからとは言っていたが、好奇心でやっている意味が強い気がした。

 何故ならパティが言っていた「男性は至れり尽くせり」という言葉に引っ掛かる。

 フローラちゃんはもしかして着替えをあそこまで手伝っていないんじゃないか?

 だとしたらお風呂で背中を流してくれるというサービスなんてしてないはず。

 あくまでサービスは給仕係個人の裁量だとすれば、私はルナちゃんに良い意味で一杯食わされていたのかも知れない。

 今言った間違った知識を植え込まれるって、耳年増なのか自分から率先して間違った方向へ行ってると思うぞ。

 帰るまでに正しい方向へ導かねばいけないな。


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