第八十八話 掃討戦
2026.5.13 全体的に見直し、加筆修正を行いました。
何だか安らかでとても暖かいものを感じる……
痛みは全く感じない。むしろ元気が湧いてくる。
また天界へ戻ってしまったのか?
いや、馴染みがある魔力を感じる…… パティ?
「うぅぅ……」
ゆっくり目を開けると、私はパティに膝枕をされ、エリカさんとヴェロニカ王女に顔を覗かれていた。
「パティちゃん、マヤ君が気がついたぞ!」
「マヤ殿! 私の声が聞こえるか!? マヤ殿!」
「あぁ…… みんな来てくれたのか……」
見上げると、パティは涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。
おっぱいで視界が半分隠れているけれど。
そうか、私はパティのフルリカバリーで助かったんだな。
とうとうマスターしたのか……
「マ゛ヤ゛ざま゛ぁ~ 死んじゃったがど思いまじたわぁ~ うえぇぇぇぇぇん!」
「今度はパティに命を助けられたね。ありがとう……」
「も゛う無理じないでぐだざい~ うえぇぇぇぇん!」
私は上半身だけ起こし、泣いてるパティを抱きしめた。
なるほど…… 骨が折れているのも治っている。
そしてエリカさんが、地面に散らばってるブラックボールの残骸を見渡しながら話しかけてきた。
「前に私がやられた黒い球体がこんなにいたんだね。これじゃあ常人ではあっという間に死んでしまう」
「エリカ殿、この黒い物はいったいどんな魔物なのだ?」
「何もしなければ攻撃しません。ですが、こちらが攻撃するそぶりを見せると反撃する性質を持っています」
「そんな魔物がいたとは…… 初めて聞いた」
ヴェロニカ王女はエリカさんの話を聞いて、深刻な表情で冷や汗を垂らす。
王女は、王都周辺で騎士団として魔物を討伐しているそうだが、ブラックボールは今回が初めてというわけか。
「ブラックボールから光の筋が発射され、一瞬にして身体を撃ち抜かれてしまいます。恐らくマヤ君は、光の筋に撃たれながら高速で滅多斬りにした。そうでしょう?」
「うん…… 私が着ている服は特殊な物なので光の筋を受けても死ぬことはありません。ですが百以上ブラックボールがいて、それだけ光の筋を受けまくるとさしものこの服でも身体へのダメージは大きかったです。それでこのザマですよ」
「ザマだなんて言うな。マヤ殿は良くやった! 早い発見でおまえが王都を救ってくれたんだ!」
「ヴェロニカ様、それはまだ早いですよ。このデモンズゲートをどうにかしないと」
デモンズゲートからはもう魔物が出てきていないが、目の前で不気味にモヤモヤと存在している。
「マヤ君、私とクローデポルタムを同時に掛けるんだ。そうしたら閉じる可能性がある」
「二人で同時に?」
「そう。これこれ! 念のために持って来た私のノートに、大きなデモンズゲートには複数人でクローデポルタムを掛ければ閉じると書いてあったのよ」
「ほほう」
エリカさんは自慢げに、古びた小さなノートを見せびらかした。
「お師匠様の書斎で、古い本をこっそり書き写してて良かったわぁ~ うっひっひっ」
「うわぁ……」
魔女アモールの資料か……
無断でそんなところへ入って、お仕置きをされなかっただろうか。
「早くやっておかないとまた魔物が出てくるかも知れないから、早速やろうか。パティごめんよ。そこで座っててくれないか」
「はい、マヤ様…… グスン」
私は立ち上がると、まだ泣きべそを掻いているパティの頭を撫で撫でしておいた。
そしてエリカさんと二人で、デモンズゲートの前へ横に並ぶ。
「じゃあマヤ君、合わせていくよ!」
「オッケー!」
『『我、彼方より来たる魔を討つ者也。美しき世界を我は望む。地獄の不浄なる門を清め給え。再び開くこと無かれ。クローデ ポルタム!!』』
二人で同時にクローデポルタムを唱えた。
相乗効果なのか、あっという間にシュッとデモンズゲートが閉じてしまった。
「おぉ! やったじゃんマヤ君! こんなにうまく行くとは思わなかったよ!」
「そんなにくっつかないでよ。二人が見てるから」
エリカさんが私に抱きつきほっぺたをスリスリしている。
それをヴェロニカ王女がジト目で見ていた。
「で、あの…… 他の魔物はどうしたのかな?」
「サイクロプスはあなたが呼んだセルギウスが全滅させてくれたし、ムーダーエイプも大方あいつがやっつけているんじゃないかな」
そうか、セルギウスが大活躍してくれたわけだ。
咄嗟に思いついて呼んで良かったよ。
魔物討伐の功績はほとんどあいつだろう。
あいつの好物を死ぬほど食わしてやりたい。
「騎士団も出撃しているから、地上にはほとんど魔物がおらん。それで私ももここへやって来たというわけだ。ガルーダは騎士団の弓部隊と魔法使いが応戦していると思うが、王都に入り込んでいたら手こずっているかも知れん」
ヴェロニカ王女からも状況説明があった。
確かに、王都に侵攻していたらマズい。
「ならば掃討戦だね。急いで王都へ戻ろう」
「私は騎士団の部隊へ戻るから、よろしく頼む!」
王女は近くの木に繋いでいた馬に乗り、王都へ向けて出発した。
「じゃあマヤ君、パティちゃんをしっかりおぶってあげてね。うひひっ」
エリカさんはそう冷やかし、先にグラビティで飛んでいった。
パティは上目遣いで口をアヒルみたいにし、無言で私を見つめている。
「さあパティ、背中に乗ってね」
「はい……」
パティは元気が無い。
私もパティが死にそうになった時はかなり落ち込んだからわかるよ。
私は彼女をおぶってグラヴィティで浮かび上がり、ザクロの森を後にした。
パティは無言でしっかりしがみついている。
王都へ向かっていると途中、下を見ると…… おお。
ヴェロニカ王女がムーダーエイプを相手に、勇敢に地衝裂斬をぶちかましている。
他の騎士とは段違いの強さだ。
あれなら任せて良いだろう。
他の騎士団が戦っているのを見ると苦戦しているようなので、上から何体かライトニングアローを掛けてムーダーエイプを倒した。
騎士団がびっくりして私たちを見上げていた。
私が手を振ると、騎士たちも手を振り返してくれた。
さて、急いで王都へ戻らないと!
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マドリガルタの上空はガルーダに埋もれていた。
前方を塞いでいるガルーダをライトニングアローで撃ち落としながら進み、パティを王宮の前で降ろす。
幸い王宮周りには魔物がおらず、近衛兵が護りを固めている。
「パティ、ガルーダを片付けてくるから王宮内で待っていてくれないか?」
「はい、マヤ様…… お気を付けて……」
元気が無い…… 心配だ。
私は再びパティの頭を撫でて、飛び上がった。
さあ、一気に片付けるぞ!
ガルーダは、やってきた方向の王都東側を中心に襲ってきているが、市民は早めに屋内へ避難しているようで外にはほとんど見えない。
下では弓矢隊や魔法使いが戦っているが、エリカさんが言うように苦戦している。
エルミラさんはどこで戦っているんだろうか?
兎に角、片っ端からライトニングアローでガルーダを撃ち落とす。
ガルーダの肉は美味しく食べられるので、出来たら有効活用して欲しいものだ。
ん? 向こうで槍が飛んできて、ガルーダの喉元に命中して落ちた。
もしやと思い、私は槍が上がって来た方へ降りてみた。
「あっ! エルミラさん!」
「おお、マヤ君! ガルーダがたくさん落ちてたから、やっぱり君が攻撃してたんだね」
エルミラさんは、王宮から荷車でありったけの槍を持ってきて、ガルーダに討っていたようだ。
それにしてもよくあんな高さまで槍を上げられるなあ。
オリンピックならば金メダルどころではないだろう。
「私は向こうのガルーダを討伐してくるから、エルミラさんも頑張って!」
「マヤ君もね!」
再び私は飛び上がり、ガルーダが群れている場所へ向かう。
そこではエリカさんはアイシクルアローで攻撃していた。
「あー、エリカさん。ガルーダを民家の屋根に落とさないでよ。地面に落として後で片付けてもらわないと屋根の上で腐っちゃうじゃん」
「えー、面倒くさいなあ」
エリカさんが何も考えずに撃ち落としているので、何体かは民家の屋根に落ちているから、ガルーダの死体を道にまとめて降ろしておいた。
これなら騎士団に早めに回収してもらって、解体して肉にしてもらったほうがいいな。
――おっ 良いことを思いついた。
「エリカさん、見てなよ。こうするんだ。」
私はライトニングアロー乱れ打ちで一気に二十体はあるであろうガルーダを倒す。
『グェグェギャーーー!!!』
死体が落ちる前にグラヴィティでそのまま浮かび上がらせた状態にして、ゆっくり降ろす。
それを街路の一カ所へまとめて置いた。
「ひぇ~ 乱れ打ちはともかく、あんなたくさんの数をグラヴィティで制御出来るなんて、マヤ君すごいねえ」
「街には優しく、綺麗にね。私は他を見てくるから、死体の片付けと、ガルーダの肉は食えるからって騎士団に言っておいてね」
「わかった。――って、これ食べられるの!?」
「前にビビアナのところの店でガルーダの肉を食べたんだ。美味いよ」
「そ、そうなの……?」
エリカさんはそれを聞いて、ちょっと気持ち悪そうな顔をしていた。
それから私は王都中を飛び回り、残ったガルーダを全て掃討し、再び王都の外へ飛び王女らの様子を見に行った。
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王都の外。荒野一帯の魔物はセルギウスがほとんどやっつけたせいか、王女らの騎馬隊も帰投している途中だった。
「おお、マヤ殿! 王都は無事か!?」
「魔物は全滅させました。大きな被害は出ていません」
「マヤ殿の功績は大変なものだ。早速母上に報告せねば!」
「ああ、それより王都内に倒したガルーダの死体がたくさんあるんですよ。ガルーダの肉って食べると美味しいんですよ。早めに解体することをお勧めします」
「何? 本当か!? ガルーダの肉はそんなの美味いのか?」
「はい、マカレーナで食べましたよ。身体に害はありません。ガルーダ肉のニンニクアヒージョとか、ガルーダ肉のトマトソース煮込みも」
王女の顔がわなわなと震えている。
心なしか、王女とあろう者がよだれを垂らしているようにも見える。
「そんなの美味いに決まってるではないか!! 貴様ら!! 王都に戻ってガルーダを回収しに行くぞ!!」
「「「「「おおおおお!!!!」」」」」
二個中隊はいそうなヴェロニカ王女の騎馬隊は皆が食欲旺盛なようで、急いで王都へ戻って行った。
倒したガルーダは二百体以上はいたと思うけれど、あれ全部食べられるのかな?
おっと。セルギウスをずっと放ったらかしにしていたので、探さなければいけない。




