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第八十六話 初めての友達

 2025.9.8 微修正を行いました。

 私たちも軽装に着替えて、訓練所の片隅で訓練をさせてもらうことにした。

 私は女神カーゴパンツにシャツ、エルミラさんは茶色のカーゴパンツにシャツだ。

 パティとエリカさんは珍しく二人で一日掛けてまた買い物へ出かけるそうだ。

 王都を満喫したいようだが、あれだけ服を買って今度は何を買うつもりだ?

 そういうことなら久しぶりにエルミラさんと二人でデートして、昼食は外で食べるから王宮の昼食はキャンセルすることをルナちゃんに頼んだ。


 王女は先着し、訓練所内の詰め所前にてやる気満々で待ち構えていた。

 黒のタンクトップにカーキのカーゴパンツという姿である。

 なに!? 王女のタンクトップから胸の谷間が!

 今まで厚手の軍服でよく分からなかったが、あれはDカップか?

 いや、Eカップくらいありそうだ。

 胸ばかり注目してるが、肩と二の腕の筋肉もなかなか。

 髪の毛の色や精悍な顔つきはたぶん父親似だろうが、胸は母親似だな。うむ。


 真剣ではかえって思いっきり出来ないので、詰め所で木刀と八角棒を借りる。

 王女は普段から訓練所を使っているようで周りの兵士からはあまり気にされていないようだが、兵士の方から近づいてくる様子もない。

 身分差もあるだろうが、あの態度でいられるとあまり歓迎されてないようだ。

 訓練所の片隅へ移動し、早速始める。


「では最初、ヴェロニカ様とエルミラさんで体術の手合わせをしてみますか」

「よしわかった。エルミラ殿、思いっきりやってくれ。遠慮はいらん!」

「王女殿下、よろしくお願いします」


 王女とエルミラさんが二メートルほど間を開けて向かい合い、王女の方からエルミラさんへ向かって行った。

 金髪お団子の王女と金髪ショートのエルミラさんで二人とも美人、日本人のアニメオタクである私から見たらビジュアル的にも素晴らしい。

 王女はパンチと蹴りで猛攻撃をしているが、全く当たらずエルミラさんは最小限の動きで躱している。

 こうして第三者の目で他の人たちの対戦を見るのも勉強になるが、エルミラさんの強化された目と身体が慣れて格段に動きが慣れていっているのがわかる。

 それにしても…、王女の胸がぷるんぷるんに揺れて…… しゅごい……

 エルミラさんの胸も決して小さいわけでなく手のひらに収まるお椀型の美しいCカップなのだが、Eカップとでは破壊力が違う。


「どうしました? 王女殿下!」

「クッ 何故当たらない!」

「そろそろ私も行きますよ!」


 エルミラさんが連続回し蹴りで反撃をする。

 王女は幾度か躱したものの、エルミラさんの長い脚であっさり蹴飛ばされてしまった。


「ああ…… エルミラさん、やり過ぎだよ……」

「あわわわっ 王女殿下があんなに飛んでしまった! どどどうしよう……」


 王女から遠慮は無いと言ってきたんだからむやみなことはしないと思うけれど、けっこう派手に飛んでいったな。

 王女はぷるぷる震え、立ち上がった。


「エルミラ殿! すごいではないか!! 女にもこんな強い者がいたなんて、私は嬉しくてたまらない!」


 どこかの武闘家キャラが言っていた「オラワクワクしてきたぞ」のごとく喜んでいる。

 王女は笑いながらエルミラさんに向かって再びパンチと蹴りを繰り返す。

 凄く楽しそうで、女王との謁見の時に一緒にいた王女が悪態をついていたことを思うと、信じられないほどだ。


「はぁはぁ…… エルミラ殿を倒すどころかまともに当たりやしない…… だがなんて気分がいいんだ。はぁはぁ……」


「ヴェロニカ様、そろそろ休憩しますか?」

「いや、まだ大丈夫だ。今度はマヤ殿が相手をしてくれ。」

「わかりました。今度は木刀を使いましょう」


 あれだけ動いていたのに、体力はかなりありそうだ。

 私はあまり無いので、王女が持久戦へ持ち込んだら厄介だ。


「マヤ殿。もう一度昨日の技が見たい。すぐ近くで抜刀からやってくれないか?」

「はい」


 使うかどうかわからなかったが、一応八重桜を持って来てて良かった。

 昨日はかなり距離を置いてやったが、今回は目の前でやる。

 こんな近くだと「雨燕(あまつばめ)」ではなく、ただの抜刀になってしまうが。

 王女は木刀を両手で構え、私は八重桜を鞘に仕舞ったまま構えた。


「では、参ります」


 王女の目からだと、私が刀の柄に手を掛けた瞬間、王女の喉元に八重桜の刃先が突きつけられているように見えただろう。

 王女は木刀で遮る間もなく、構えたままの体勢だった。

 表情も驚く間もなく、冷や汗らしいものが見えるだけだ。


「見えぬ…… 全く見えぬ…… 実戦であれば間違いなく私の首が落ちている。マヤ殿はいったいどういう修行をしたのだ……」


「屋敷の庭で、師匠の侯爵夫人に習ってひたすらやったんですよ」


 サリ様に付与された力のおかげが大きいけれど、それでもここまで出来るのにローサさんに習って一年以上かかったからなあ。


「国内の強者が集まった騎士団と言えど、今まで私は狭い王宮の中で驕り高ぶっていただけなのかもしれん。私はあれから一晩ずっとそう考えた。それほどマヤ殿と昨日戦ったことが衝撃的だったのだ」


 一晩考えて結婚に持ち込まれた私の方も衝撃的だったけれどね。

 しかし王女ならば外国へ行ってそこの強者と戦っていそうなのに、意外に箱入り娘だったんだな。


「ご自分で気づかれただけでも立派ですよ。私は人より魔物と戦ってきた方が多いですが、強い魔物がいて死にそうになったこともありました。これからもっと強い魔物が出てくるかも知れないので、私もまだ精進しなければいけません」


「マヤ殿のほどの者がやられそうなほどの強い魔物がいるのか…… 王都の方に現れる魔物はたまたまそういう魔物が出てこなかっただけなのか。私はまだ修行が足りんな」


 死にそうになった時の魔物は、あの黒い球体の魔物のことだ。

 あのレーザーに当たったときは今履いている女神カーゴパンツで無かったら確実に死んでいただろう。

 それから三人で交代しながら訓練に励み、間もなく昼食の時間になろうとしていた。


---


「そ、そにょ…… 二人に話があるのだが……」

「「はい?」」


 ありゃ、えらく消極的で可愛らしいしゃべり方になったぞ。


「マヤ殿にはいずれ婿になってもらうが、二人にはまず()()()()()…… いや、友達になって欲しいのだが……」


 あ、噛んだ。もう結婚前提かよ。

 それにしても求婚するより、友達になってほしいと言う方に緊張することがとても不思議なんだがな。

 だが王女には今まで友達らしい友達がいそうになかったから、わからないでもない。


「そんな恐れ多いです! 私は侯爵家の一使用人(いちしようにん)に過ぎませんので……」


 そう言ったのはエルミラさんだった。

 エルミラさんはスサナさんと特に仲が良いが、彼女も決して友達が多いほうではないように見える。


「主従の関係ではなく、友達でないとだめなのだ。これほど強いエルミラ殿だ。せめてプライベートだけでも対等でいてもらいたい」

「わかりました。喜んで」


 王女とエルミラさんは固い握手を交わす。

 うーむ、女性の友情も美しい。


「そうだ。せっかくだから皆で昼食を食べないか?」

「そうですね。友情を結んだ記念にですか」


 あららー エルミラさんとデートしようと思っていたのに、私にも聞かずOKしちゃったよ。

 まあ何が食べたいということでもなかったからいいか。

 王女との会食だと、メニューもさぞ豪勢だろう。

 でも私たちの食事はキャンセルしてしまったから、急に言っても出来るものなのか?


「ではこっちへ来てくれ。すぐそこだ」


 え? こんな汗だくだし陸軍兵士みたいな格好で王宮のどこへ行くの?

 私たちは王女に着いていくと、詰め所のすぐ近くにある兵士用の食堂へ入っていった。

 昼食時なので、大勢の騎士団や近衛兵がむさ苦しくワイワイしながら食事をしていた。

 女性兵士もちらほらいるが、九割は男性である。

 兵士らは王女を見かけると敬礼し、王女も敬礼を返しているが、特に親しく声を掛ける者はいない。


「王宮の食事は堅苦しくてな。夕食は母上らと一緒に食事をせねばならんから仕方がないが、朝昼はほとんどここで食べているんだ」


 学校の給食のように献立は決まっており、カウンターの前で並び厨房のおばちゃんから食事が載ったトレーを順番に受け取るような格好だ。

 牛肉の煮込み、チョリソー、煮豆、グリーンサラダ、四つ切りのオレンジで、肉料理中心のスタミナ抜群のメニューだ。

 パンは自分で好きなだけ取って食べられるようになっていた。

 飲み物は冷たい水とオレンジジュース。

 ほほう、さすが王宮だけあって兵士食堂にもお高い魔道具の()()()があるんだな。


 王女は食堂の隅にある席を選んで座った。

 あんなに兵士がいるのに、この周りだけ空間が出来ているのは王女の専用席だということが暗黙の了解になっているんだな。


「いつもここでは私一人で食事をしていたからな。友達と食事をするなんて生まれて初めてだ」


 いつも一人…… うう…… 今まで()()()()ばかりだったんだね……

 王女は隣同士のエルミラさんと戦闘術の話をしたりで楽しく会話をしながら食事をしている。

 こう見ると王女の顔は可愛らしくも見えて笑顔がとても素敵なのがわかる。

 周りの兵士達がいつもの王女と様子が違うのをチラチラと奇妙な目で見ているが、王女は意に介さず楽しくエルミラさんと話していた。

 この二人は良い関係になりそうだが、あと数日の滞在なのが可哀想になってきた。


---


 結局午後もエルミラさんの希望もあって訓練に明け暮れ、私も三時まで付き合った。

 この二人は本当に体力バカなのではないか。

 部屋に戻るとルナちゃんが頃合い良くお風呂の準備をしていたところだった。

 さすが王宮の超優秀な給仕さんだけある。


「あ、おかえりなさい。もうそろそろかなと思って、今お風呂にお湯を貯めているところですよ。もうちょっと待ってて下さいね」

「ふー、王女様にずっと訓練に付き合わされてクタクタだよ」

「シャツとズボンはもう脱ぎましょうね。クンクン…… すごい汗の匂いですね。でもちょっと良い匂いです」

「え? そうなの? 自分には汗臭いだけなのに」

「マヤ様の汗の匂いはそんなに臭くないですよ。男の人の良い匂いがします」


 しれっと私のシャツをくんくん嗅いでいるルナちゃんも少し変わってるな。

 やっぱりエルミラさんから良い匂いがするのは女性フェロモンも混ざっているからで、私の匂いから男性フェロモンの匂いがするのかね。

 私には全然分からず、ただ汗臭いだけである。


 お風呂にお湯が貯まると、ルナちゃんはまたカボチャパンツ姿になって、私を洗ってくれた。

 時々手が止まって私の分身をじーっと観察するのはやめて欲しいぞ。


 お風呂から上がると夕食までまだ時間があるので、ルナちゃんと話をした。

 王女のことやマカレーナのことで私の話が中心になってしまったが、ルナちゃんは嫌な顔を一つせず笑顔で聞いてくれた。

 この子、いい子過ぎて泣きたくなるわ。


 夕食になると、お出かけから帰ってきたパティとエリカさんがニコニコ顔になっているので聞いてみたら、午前は恋愛モノの劇場を見に行って、午後はまた服の買い物へ行ってきたそうだ。

 あなたたち買い物好きねえ。


---


 そして毎晩の、女王の寝室にて。

 ちょっと歳には合わないんじゃないかと思う、濃いめのピンクな上下透け透けランジェリーだ。

 なんか新しそうだし、きっと私のために涙ぐましい努力をしてくれているのだろう。

 行為が始まる前に、王女の話になった。


「ヴェロニカからさっき聞いたわよ。母上、母上、友達が出来たって、まるで子供の時のようにとても嬉しそうに話してくれたわ。あんな笑顔になったあの子を見るのって何年ぶりかしら」

「友達が出来たことについて、よほど嬉しかったんですね。昨日と今日で態度が全く違うからびっくりしました」

「うふふ。強いあなたと戦ったことがすごく影響があったんでしょうね。あなたは私たちに幸せを運んできてくれた、そんな気がするわ」

「そんな大それたものじゃないですよ。本当に……」


 前にも家族から感謝されたことがあったっけ…

 そうだ、ラミレス侯爵家でセシリアさんのことだった。

 自分にとってはちょっと頑張ってみただけのことだけれど、思いもよらず大きく感謝されるのは私の方が恐縮してしまう。

 だが悪い気分じゃない。


「もっと肝心な話があったわね。ヴェロニカ、あなたに求婚したってね。可笑しくて後で笑ってしまったわ」

「ああ…… ははは……」

「でもいいのよ。ヴェロニカが本当にその気なら結婚なさい。あら、あなたもその気があるのかしら?」

「何とも、彼女のことはまだよく知らないので……」

「まだ滞在期間はあるからその間に愛を育んでみなさいね。うふふ あなたが義理の息子になるのは楽しみだわ」


 女王まで王女のことについてその気になっているからシャレにならない……

 今日は疲れてしまったので私はあまり動かず、女王の献身的なプレイによってとても癒やされた。

 だが余す所なく搾り取られたのは言うまでもない。


 行為が終わった後、もう一つ話をする。ルナちゃんのことだ。

 しかし女王はこう答えた。


「そうね…… あなたは男爵になるのですから給仕係が欲しいのはわかります。ですがあの四人の子たちは王宮でしっかり訓練して若い子の中でもとても優秀な子たちなんです。あなたたちは大事なお客様ですからそれであの子たちを着けたんですよ。王宮が苦労して育て上げた給仕係ですから、そう簡単に手放すわけにはいかないんです。あなたもまだお屋敷が立ってないのですから、性急ではないかしら」


「申し訳ありません、マルティナ様。私の我が儘が過ぎました……」


「何とかしてあげたいけれど、私の一存ばかりでは決められないの。ごめんなさいね。給仕長が何かとうるさいですから。うふふ」


 そういうことか…… ルナちゃんをぬか喜びさせてしまったなあ。

 確かに優秀な子はお金に換えられないほど大事なのはわかる。

 勝手な考えだが、ルナちゃんは何とか連れ帰りたい。どうしたものか。


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