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第七十七話 女神サリ様降臨

 お風呂から上がり、脱衣所へ。

 うーん…、タオルしか無い。

 宿ではエリカさんがいても気にしないでいつも部屋の中で着替えてたりしてたから、着替えを脱衣所に用意してもらうことが頭になかった。

 私は身体を拭いた後、ドアから顔を覗かせてこう言う。


「あのー、ルナさん。着替えを脱衣所まで持って来て欲しいのだけれど。」

「マヤ様が起き抜けの時に構わないとおっしゃってましたから、是非お着替えの練習をさせて頂けないでしょうか?」


 う…確かに「構わない」と言った…。

 女の子に見られてしまうのは慣れてるが…、望んでいるなら腹を括るか。

 そろっとドアから出て素っ裸のままルナさんの前に立った。


「じゃあよろしく頼みます…。」


 ルナちゃんはまたもう一人の私をまじまじと見つめている。

 ちなみに彼は綺麗好きで、適度に散髪をしている。

 もし彼がアフロヘアーだったらびっくりされるかも知れない。


「マヤ様は思っていたより筋肉がガッチリなんですね。ドキドキしちゃいます。」

「女の子にそう言われると嬉しいよ。」


 前世でも二十代前半まではガッチリな体型だったのに、それを過ぎて三十代にもなるとだんだんとブヨブヨとなってくる。

 食欲は若い頃と変わらず旺盛なのに、新陳代謝が悪くなるわ運動量が減るわで醜い体型になってしまった。

 せっかくこの世界でやり直しが出来るのだから、気をつけないといけない。

 そしてルナちゃんは、私の足下でぱんつを広げる。


「さあ、ここに足を入れて下さいね。」


 まるで小さい子供がお母さんにぱんつを履かせてもらうスタイルだ。

 王宮で彼女は今まで女性のお客さんを相手に世話をしていたようだけれど、おばさんやお婆さんにもこうして世話をしていたのかな。大変だ。


 今回の着替えはスムースに終わり、集合の時間まで余裕があるのでセシリアさん宛てに手紙を書くことにした。

 ルナちゃんにはただ控えて立ってもらうのも何なので、部屋やお風呂の掃除を早めに始めてもらった。

 ホテルでも当たり前にそうだったが、普段お客が在室している間には掃除をしない。

 セシリアさんへの手紙は、マドリガルタに着いて女王様と謁見があったこと、今朝のエルミラさんのことについて三人で話したいという内容だ。

 三十分ほど掛けて書き上げ、ルナちゃんに手紙と送料の銅貨を渡して、王宮から出る親書等と一緒にまとめて出してきてもらうことにした。


---


 王宮の正面玄関前。

 集合時刻になり、王宮から馬車を出してもらって四人で街へ買い物に出かける。

 お付きの子達が手を振って見送ってくれた。みんな可愛いなぁ。


「マヤ君マヤ君。せっかく王都まで来たんだしさ、マカレーナには無い物をいっぱい見ていこうね。うひひ」

「何そのうひひは。」

「着いてのお楽しみだよ。」


 馬車を十分ほど走らせて、とあるお店の前に着いた。

【アリアドナサルダ】と書いてある。

 確かマカレーナにもある高級ランジェリーショップ!?

 ショーウィンドウがあって、ガーターベルトスタイルのランジェリーやベビードールを着けたマネキンが展示されているので、どんなお店かすぐわかる。。


「とうちゃくぅ~! マヤ君、ここはアリアドナサルダの本店よ。

 マカレーナのお店よりずっと物がたくさんあるわ。」

「いやいやいや! 俺がここに来てもしょうがないでしょ!」

「女性のランジェリーが中心だけれど、男性の下着もたくさんあるから大丈夫よ。」

「それなら…って、わざわざこんなお店で買わないよ。」

「ねえねえ頼むよぉ~ 私が買ってあげるからさあ。」


 結局エリカさんに店内へ連れ込まれてしまった。

 凄い…。広い店内はセクシーなランジェリーの展示物がずらっと並んでいて圧巻だ。

 あ、女王が来ていたベビードールと良く似た物がある。

 女王もここで手に入れているのか…。

 さすがに、誰かに買いに行かせていると思う。


「あの…わ、私は買い物をしますけれど恥ずかしいですから、あちらへ行きます。

 エルミラさん、行きましょ。」

「はい、パトリシア様。」


 パティとエルミラさんは別行動になった。

 十三歳の女の子が男性とぱんつを買うというのは、恥ずかしい以前に不自然極まる。


「えっと男性のところは…あった。マヤ君、こっちよ。」


 エリカさんと私は男性向け下着売り場へ向かった。

 トランクスやボクサーブリーフが多少展示してあるが…、ほとんどが際どいビキニパンツや男性用ランジェリーだった。

 確かに日本でもそういう物は売れていたけれどさあ…。

 Tバックに…、なんだあれ? 象さんみたいなぱんつ。あれに入れろって?

 その横にあるのは穴が開いてて、丸出しじゃないか。

 Oバックの尻丸出しぱんつもある。


「はぁ はぁ はぁ マヤ君、このお店最高だよ!

 これなんかマヤ君に履いてもらいたいねえ~」


 エリカさんが手に取ったのは、紫色でアレがほぼ見える透け透けのレースのぱんつ。

 あの部分が膨らんでいる以外は女性のぱんつと変わらない。


「俺こんなの履かないよ! 普通のでいいから。」

「頼むよ~ ベッドインの前だけでいいからさあ~」

「あぁもう、好きに選んでよ。でもブラは絶対着けないからね。」

「じゃあ好きなのを選ぶね。うひひひ」


 エリカさんがうるさいので、放って置いて好きにさせることにした。

 男性用ブラもあるけれど、あれはいいや…。

 黒の紐パンもある。あぁ…思い出してしまった。

 この前アマリアさんに履かされたんだった。

 でもあのお戯れはアマリアさんの使用済みを履いたので、興奮してしまった。


 仕方が無いので私は一人でノーマルの男性下着売り場に行った。

 トランクス、ブリーフ、ボクサーブリーフ、際どくないビキニパンツ等が展示されている。

 ちなみに私はトランクス派だ。

 アレが押しつけられるのはあまり心地よくないからだ。

 動きやすさではビキニパンツが群を抜いているから、明日の決闘試合のためにも少し買っておくか…。

 黒いビキニパンツと柄物トランクスを三枚ずつ買った。

 キャッシャーが女性のランジェリー売り場と男性のノーマル下着売り場の間にあるので、どうしても展示されている女性のぱんつとブラが視界に入る。

だが私は、ぱんつだけは興味ない。

 ぱんつは女性に履いてもらってこそ命を吹き込まれるのだ。


 うわっ ランジェリー売り場の向こうにパティとエルミラさんが商品を選んでいる。

 見つからないようにしとこ…。

 すぐ近くにも女性客が………ん? あれ? どこかで見た後ろ姿だ。

 僅かに紫がかったほぼ黒の美しいロングのストレートヘアー、白い女神ワンピース、グラディエーターサンダル………まさかねえ…。

 その女性はもう購入後なのかお店の紙バッグを下げて展示の下着を眺めていたが、こちらへ向きを変えた。


『あっ』


「あっ…」


 ただの通行人みたいな人が、今私の顔を見て「あっ」て言ったよね。

 はい、どう見ても女神サリ様です。


『あら… あはははは… マヤさん、お久しぶり…。』

「あの、こんなところで何をしてらっしゃるんですか?」

『天界にはお店が無いから、女神だって下着ぐらい買わないとね。』


 ほら女神だなんて言うからキャッシャーの店員さんが変な目でこっち見てる。

 私は女神様の手を引っ張って場所を変える。


『ちょ ちょっと…』

「あっちで少しお話ししましょう。」


 店内の隅…といっても壁も商品の陳列や展示のすごくエッチな下着だらけで落ち着かないが、人通りは無さそうで、そこで話すことにした。

 ここらは特に際どいマニアックなランジェリーのブースみたいで、穴あきや完全なまた割れ、玉パン、股間にはめるだけのIバックまで壁に展示してある。


「お久しぶりです、サリ様。どうしてこちらにいらっしゃってるんですか?」


『どうしてって、あなたの様子を直接見に来て、ついでに買い物をしてるだけよ。』


「そ、そうですか…。この世界に降りてから一年以上経って、私もいろいろあったんですよ。」


『知ってるわ。パティちゃんが死にかけたことも、アマリアさんとエッチなことをしてるのも、聖女マルセリナといちゃいちゃしてるのも、アスモディアの魔女がやってきたのも、そうそうゆうべはとうとう女王ともエッチなことをしていたわね。』


「うわわわわわわわ 何でそんなものまで見ているんですか。

 私のプライバシーは無いんですか…。」


『たまたま神眼で見たらあなたがそんなことをしてるだけよ。

 私があなたをモテるようにちょっとだけ仕組んだら面白くってあっはっは』


「………何かしゃべり方が天界とえらく違ってませんか?」


『あのしゃべり方は仕事よ仕事。神っぽいでしょ。

 プライベートじゃあんなしゃべり方は堅っ苦しくて。』


 天界の女神様の口調は演技だったのかよ。

 こんなアホっぽくて人の愛の行為を何回も覗いたり、神様がこれじゃサリ教の信者やマルセリナ様が知ったら愕然とするだろう。

 もっとも聞いたところで信じてくれるはずもないが。


「マヤ様。……マヤさまっ」

「え? あっ…」


 後ろから聞いたような声で掛けられて振り向いたら、パティとエルミラさんだった。

 見つかったか…。


「こんなエッチな下着売り場で何やってるんですか?

 しかも綺麗な女の人と一緒に…浮気ですか?」

「違うよパティ。この人は…」


『初めましてパティちゃん、エルミラさん。私は女神のサリよ。』

「あの~ えっと~ え?」

「マヤ君、前にパトリシア様のパーティーで話していた女神様って…」

「一応、本物の女神サリ様だ…よ。」


「「えぇっブッ モゴモゴ」」


 騒がれると迷惑なので、私はパティとエルミラさんの口をすぐ塞いだ。

 二人とも買い物の会計は済んでいるようだし、もうお店を出た方がいいかな。


「買い物済んだなら、もうお店を出て他の場所で話をしよう。

 エリカさんはどこへ行ったかなあ。」


 私たちがお店の出入り口付近へ移動したときに、エリカさんが現れた。


「あら、あなたたちも買い物終わったの?

 ふー、たくさん買えたわ。マヤ君のも…。うひひひひ」

 あれ? その子誰?」

「あー、女神サリ様だよ。」

「は? マヤ君バカなの?」

「もう、外へ出るから。」

「あーちょ、ちょっと…」


 私はエリカさんの手を引っ張って外へ出た。


「で、なあに?その子は。」

『アモールの弟子エリカさん初めまして。女神サリです!』

「はぁ? 何で知ってるの? サリ?

 前にマヤ君から聞いたサリ様!?」

『前にマヤさんが素性を話したみたいだけれど、概ねその通りよ。

 アモールとは五百年くらい前に少しやり合ったから知ってるわ。』

「え…あ…」


 私からの予備知識が少しあったとはいえ、突然わたしゃ神様だよなんて言われたら戸惑うのは当然だろう。

 お店の前では何だから、さて…。


「もう少ししたらお昼ご飯の時間だし、サリ様もご一緒にどうですか?」

『じゃあお誘いに乗っちゃおう~ 勿論マヤさんの奢りね。』

「あ…はい。」


 王宮の馬車はもう返してしまっているので、歩いて街を移動する。

サリ様はご機嫌で私の隣を歩き、パティとエルミラさんは眉間にしわを寄せるような表情で後ろを付いてきている。

 エリカさんは荷物がたくさんなので、グラヴィティで浮かせ荷物が勝手に付いて行って、すれ違う通行人が「ん?」と二度見をする姿が何回も見られた。


 やっぱり女神様でもぱんつは自分で買うのか。新発見だったな。

 今度は魔女がぱんつを買っているところに遭遇したりしてな。

 大昔はぱんつなんて無かったろうから、ノーパンだったろうな。むふー

 時代と共に神様も下着を着けるようになったということか。


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