第八話 戦闘メイド スサナとエルミラ
2026.3.4 全体的に文章を見直し、加筆修正を行いました。
ガルシア侯爵直属兵であるスサナさんとエルミラさんを相手に、素手による組み手や武器を使った戦闘訓練をすることが日課となる。
起床後、毎朝六時から朝食までの間に軽く。
それから午前中の多くを訓練の時間に使う。
二人の服装はタンクトップに、太股ピチピチのタイトなカーゴパンツ。
第二夫人のローサさんも前は彼女らと同じ直属の兵で剣を扱い、二人より強いそうだ。
今は子育て中心の生活でお休み中とのことだが、いざという時は家とその周りを守る役目がある。
アマリアさんは四つの属性が使える高位の魔法使いの兵として、ローサさんと同様の役目を担う。
両人とも極力自分の子供は自分で面倒を見て、用があるときには乳母やメイドさんに任せる方針というから良いことだと思う。
侯爵閣下は剣士として腕前は人並み以上だそうだ。
パティもあの歳で三属性の魔法が使えるので、ガルシア家は全体的に戦闘力が高い。
エルミラさんは金髪サラサラショートヘアの碧眼。
イスパル王国南部のこの地方出身者にはあまり金髪の人がおらず、彼女はイスパル王国北部の出身だという。
背は私より高く、胸はCカップくらいでスラっとした身体だ。
彼女は見るからに宝塚のスターのようで、凜々しく格好いい。
後でスサナさんから聞いたのだが、見た目通りで女の子のほうからモテモテだそうだ。
「いやぁ マヤ君は本当にお強い。攻撃は散々躱されるし、私もギリギリで避けているけれどまだ余裕がありそうで手加減されてるのがわかるから悔しいですよお」
私は格闘術について、サリ様がプレゼントしてくれたのか過去世の能力が目覚めてきているのか、高い能力が最初から備わっていた。
だからエルミラさんにそう言われると申し訳なく思う。
前世では格闘術なんてまったく経験が無かったが、さらに前の過去世では強かったらしく、サリ様にあるはずの無い記憶を植え付けられたような感覚だ。
さらに私の前世の記憶を利用して、格闘漫画や香港映画のカンフースターをイメージしてやっている。
切り刻むシャオシャオ拳法の真似事は出来たけれど、身体のある部分を突くアタタタ拳法のほうはさすがに無理だろう。
二人は素手の格闘が出来る他に、各々に合った武器攻撃も得意としている。
スサナさんは中国の双刀と呼ばれる刀のようなものを使った二刀流。エルミラさんは槍を使う。
スサナさんの、回転しながらの刀の切り込みは剣の舞のように凄まじく、同時にキックも来るので躱すのはなかなか大変だ。
真剣でも良いとは言ったものの、本当に集中してやらないと身体の一部が一瞬で切り離されてしまう。
エルミラさんの槍さばきはまるで自分の身体の一部のよう自在に操り、突きがとても速い。
ガルシア侯爵はよくもまあこんな女傑を集めたものだ。
魔物について、街の外では私設の討伐隊がせっせと退治しているし、強い魔物はまだ少ないので彼らで間に合っている。
街には厚い壁があるのでそうそう魔物は入ってこないが、空を飛んでくる魔物に対してはどうしようもない。
主に大きな蜂や羽アリのような虫型の魔物が多いが、鳥型もやってくる。
そういう時は警備騎士団の中に存在している魔法使い部隊や、私設討伐隊の魔法使いが応戦することが多い。
スサナさんとエルミラさんは規格外の強さなので飛んでくる魔物でも武器でじゃんじゃんとやっつけていた。
私は例のかまいたちのようなシャオシャオ拳法モドキで飛んでくる魔物を切り刻んで退治。
数日に一度こういったように出動し簡単に片付けられているが、二、三年前はもっと魔物の出没頻度が少なかったらしい。
本当に何が起こっているのだろうか。
ガルシア家の専属護衛は非常に少ない。
先にもあったが侯爵閣下は剣士、アマリアさんとパティは魔法使い、ローサさんも剣士と皆がそこんじょそこらの騎士より強い。
それ故に専属護衛はスサナさんとエルミラさんだけなのだ。
そこへ私が加わり、三銃士や三羽烏と言うと古くさいか。
滅多に無いことだが侯爵が王都へ出向く長い旅には、ローサさんが結婚前の時に付いて行き、結婚後はエルミラさんが担当していたそうだ。
スサナさんとエルミラさんは、何事もない平時は午後を中心に給仕服を着て他のメイドさんたちの手伝いをしている。
コスプレみたいなミニスカメイド服ではない、ロングスカートのヴィクトリアンスタイルだ。
お客様が来たときの案内や護衛もしていて、住み込みで専用の個室が用意されているのだから使用人として待遇が良い。
スサナさんは童顔なので見たままの可愛らしいメイドさん。
エルミラさんは給仕服の時だけスカートを履いており、美しく格好いい。
ガルシア家のメイドさんはスサナさんとエルミラさんを除き、現代日本で言うパートの人で二十代から六十代までの街に住んでいる女性で、ほぼ既婚と思われる。
シフト勤務制の通いで仕事をしていて、住み込みは少ない。
人数が多い上に毎日出勤しているわけではないから、私はなかなかおばちゃんたちの顔を覚えられないからしばらくの間は困っていた。
それでも陽気な国民性で、陰湿なイジワルおばさんみたいな人は今のところ見かけないから良かった。
アニメのような若いメイド隊だったら良かったのに―― と思ったのは失礼なので、胸の内に留めておこう。
庭仕事をしたりする用務係のパンチョさんというおっちゃんとマルシアさんというメイドのおばちゃん夫婦がいて、庭の隅に建ててある小屋のような家で住み込みとして仕事をしている。
二人とも私と顔を合わす機会が多く仲良くさせてもらってるし、マルシアさんが作る料理は家庭的でとても美味しい。
チュロスやチーズケーキなどのお菓子も作ってくれて、パティがそれらを食べているときは世界一幸福そうな笑顔をしているものだから、見ていて私も楽しくなる。
私も甘い物は好きで、日本のお菓子と比べても餡子が無い以外は不自由なく美味しく食べさせてもらっている。
若い身体だからまだ糖尿病を気にすることもないぞ。
ガルシア家の食卓は庶民的なメニューが多いが、ガルシア家の皆が気に入っている。
特に料理が上手なメイドさんたちが作っていて専属のコックはいない。
パーティの時はケータリングといって外のお店からの出張調理で賄っており、効率的にやっているそうだ。
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ある日の朝、いつものようにスサナさんとエルミラさんと組み手をしていた。
スサナさんが優勢になり、うっかりヘッドロックを取られてしまった。
「へへーん、やりぃぃぃ!!」
ところが、私の頬にスサナさんのBカップが押しつけられている。
おおっ! この世界に来て初のラッキースケベイベント!
アニメの中だけだと思っていたが、やっぱりこういうことがあるんだあ……
なんとブラは着けていない!
さすがに沈むような柔らかさではないが、ふにょんとした感触はいいものだ。
それより女の子の汗の匂いというのはシャンプーリンスのような甘い香りというわけではないのに、どうしてこんなに艶めかしいのか。
でも苦しいので早めに解いてもらうことにする。
「ちょっと、スサナさん! 薄らと胸が当たってます…… 放してもらえますかね。むぐ」
「あわわわわ…… ――ん? 薄ら?」
「あ……」
スサナさんは今更私に胸を押しつけていることに気づいて顔を真っ赤にしていたが、薄らという言葉に何か不満を持ったようだ。
何か勘違いしていないか?
「ふーん、そうかそうか。そうですか。マヤさんったらイヤですねえ。私より奥様の大きなおっぱいのほうがそんなにいいんだ! うりゃうりゃうりゃうりゃ!!」
「ぐあっ うええええっ!」
余計に絞められてしまった。く、苦しい……
スサナさんも、私がアマリアさんの胸を見てる視線に気づいていたのか?
エルミラさんは大笑いで私たちを見ている。
そんな感じでだんだん二人と打ち解け、仲良くなっていった。
多少のスキンシップがあっても問題無いほど好感を持ってくれているのは有り難いことだ。
登校前にたまたま屋敷の窓から私たちの訓練を覗いていたパティがチラッと見えたが、ムスッと妬いている顔だった。
食事の時間、一夫多妻制について説明してくれた時に素敵な女性が集まってきますよと言っていた彼女だったのに、どうも釈然としない。
スサナさんと出掛けて帰ってきた時のパティの態度もそうだったし、元々独占欲が強いことを自分で自覚していないのかも知れない。




