第七十五話 女王陛下へのおつとめ
[注意]露骨にはしてませんが、性的描写が多い話です。
2024.5.29 軽微な修正を行いました。
ルナちゃんが帰って部屋のベッドで休んでいると、ドアからノックがあった。
――コンコン
「はい」
ドアを開ける。すると執事服の女性が現れた。シルビアさんだ。
「マヤ様、シルビアです。お伝えすることがいくつかありまして……」
「はい。もしかしてルナさんの交代の人のことですか?」
「それなのですが、彼女の後は私に直接ご用を申し付け下さるようお願いします。
時々様子を見に参りますが、実は私の私室がすぐ近くにありますので、後でご案内します」
女王陛下の執事が直々に私の面倒を見てくれて、客間のすぐ近くにの彼女の部屋があるというのもすごく不自然だな。
何かあると考えるべきだろうか。
「もう一つですが、この後で女王陛下がマヤ様とお話をしたいということです。
それで恐れ入りますが、陛下はマヤ様がお風呂にお入りになってからお会いになりたいそうで、二時間後にまたお迎えに上がりますから、その間にお風呂へお入り下さいませ」
「わかりました」
「他に何か用はございますか?」
「いえ、今のところは無いです」
「それでは、失礼します」
夜になって女王陛下が話とは何だろうか。
それにお風呂とは、さっきの応接室で臭かったのかな。
くんくん…… そうでもないなあ。
せっかくなので、今お風呂に入ってしまおう。
さすが王宮の来客用個室のお風呂で、人数こそ二人までの湯船だが立派だ。
お湯も勢いよく出てすぐ貯まり、何があっても良いようにしっかり身体の隅々まで洗い、ゆっくり入れた。
テレビがあるわけでは無いのでベッドでごろ寝して妄想をすることしか無いのだが、私もエルミラさんに倣って本でも読んでみようか。
エルミラさんが読んでいた本って、絶対ボーイズラブだよね。
私にはまだレベルが高いジャンルなので、何か他のを探そう。
半分ウトウトしてて、もしかしたら少し寝てしまったのかもと思ったときに、ドアがこんこんと鳴る。
二時間経っていたので、予定通りシルビアさんだった。
「失礼します、マヤ様。女王陛下のお部屋までご案内します。
それから私の部屋もですね」
部屋を退出し、私はシルビアさんの後ろをついて歩いて行った。
この廊下にはドアがいくつか見えるけれど、どれも全く同じで見分けが付かない。
部屋番号表示も何も無い。
「私の部屋はこちらです」
なんとドアを三つ挟んだすぐ近くだった。
もちろんシルビアさんの部屋も私の部屋と同じドアなので、知らないと絶対間違える。
「夜間にご用がありましたらこちらのドアをノックして下さい。
いないときは大抵陛下のところにおりますが……
それでは陛下の部屋へご案内します」
案内というか、一瞬だった。斜め向かいに女王陛下の私室があった。
やはりドアも全く同じで、恐らく敵襲があった時のカモフラージュと考えられる。
こんな近くに女王陛下の私室があるなんて、呼びつけるために私だけ近くの部屋を用意させたということか?
「マヤ様、少しこちらでお待ちください」
そうしてシルビアさんだけドアノックもせずに女王陛下の私室へ入っていった。
中からかすかに声が聞こえる。
「陛下、マヤ様をお連れしました」
「ご苦労様でした、シルビア。マヤさんを部屋の中へ通して下さい」
「かしこまりました」
ドアからシルビアさんが出てきた。
「マヤ様、どうぞお入りください。ごゆっくり……」
え? ごゆっくりって?
そろっと部屋の中に入ると薄暗く、天蓋カーテン付きの大きな王様ベッドがあって、ベッドの前には白いベビードールに、白いセクシーランジェリー姿の女王陛下が立っていた。
あ…… お風呂に入る目的とごゆっくりって、おつとめのことか……
王族や貴族のおっさんに、ご奉仕のため若い娘が宛がわれるというのはよく聞くような話であるが、逆に若い男性が高貴な女性にというのもあるんだろう。
私は男妾扱いなのか。
「いらっしゃい、マヤさん…… 待ちきれませんでした」
「あのぅ…… これは……」
「単刀直入に申し上げると、私と夜伽をなさい。これは国王命令です」
「命令とおっしゃるからには、当然強制ですよね……」
「あら、強制という言葉を使われるのは心外ですよ。
応接間ではあなたの目線が私の胸をチラチラと向けていたことはわかっています。
殿方の目線はわかりやすいですからねえ。ほっほっほ」
しまったぁぁぁぁ!
わかっていたことなのに、私はアマリアさんの時とまったく同じ事をしていた。
「夫を亡くして早十余年、新しい夫を見つけようにも子供達が大反対しましてね。
お父様は一人だけ!って……
女にも性欲はあるのよ。だからこんなことしてこっそりと、若くて強くて誠実な男の子を見つけてお願いしているの。
でもいつもこんなことしているわけじゃないわ。ほんの時々ね。
このことはシルビアしか知らない。スキャンダルで騒ぎになったことはないわ。
そう、ずいぶん前だけれど、あなたの主のレイナルドにも相手をしてもらったことがあるわ。うふふ」
あー、あんまり聞きたくないことを聞いてしまった。
とうとう侯爵閣下と◯兄弟になってしまうのか。
パティが生まれた後のはずなのに、あの人も大概だな。
前に閣下から、国王様に優遇されているような感じの話を聞いたことがあったが、実のところはこういうことだったからなのかもしれない。なるほどねえ。
「さあ、ベッドへいらっしゃい。我慢できないわ」
女王はレースとメッシュの透け透けベビードールをスルッと脱ぎ、王様ベッドの上に座った。
プラが不要なベビードールなので、レースの白いぱんつ一枚だけである。
私もぱんつだけになり、女王の対面に座った。
「うふふ…… いい子ね」
女王は私の頬に手を当て、ゆっくり顔を寄せてキスをした。
よほど我慢できなかったのか、いきなり吸い付くようなキスだ。
飴でも舐めたのか、口の中がとても甘い。
そのせいか余計にとろける感じがする。
そしてキスを終えて、そのまま女王はベッドの上で膝立ちをしている。
「脱がしてちょうだい」
私は両手で女王のぱんつに手を掛け、ゆっくり下に降ろした。
芝生はかなり短めに刈ってあり、よく見える。
私もぱんつを脱いだ。当然私の分身君は怒りん坊状態。
「まあ、こんなオバサン相手に嬉しいわ。
あなたからしたら、もうお母さんだものね。
内心はちゃんと出来るか心配していたけれど、これなら大丈夫ね。
これでも肌のケアは努力しているのよ」
さすがに三十過ぎで美魔女のアマリアさんと比べたら草臥れている感じが否めないが、とても四十歳過ぎとは思えない肌の張りだ。
私がやっていたようなエステティシャンでもいるのだろうか。
その前に中身の私は五十歳過ぎである。四十一歳なんて若い若い。
私が思春期から二十代初めまで、四十代、それどころか三十代の女性は女として見ておらず、オバサンという何かだった。
女の子から見てオジサンとは何かも同じだろう。勿論オジ専オバ専は例外だ。
だが自分自身が歳を取って人生経験も積んでいくと、年齢なりの外見の美しさについてもあるが、同じく人生経験を積んだ女性の包容力というのはなんと素晴らしいのだろうと感じるようになった。
さて、私はこれからこの世界に来て初めて愛のない行為をする。
お互いが性欲のはけ口だ。
これを、特にパティやマルセリナ様が知ったら激怒するだろう。
でも国王命令だ。仕方ない。うん、仕方ないのだ。
女王の動きは上流階級のお戯れのごとく、とても積極的だった。
こうして国内最高の権力者が私の目の前で、甘美な表情をしあの可愛い声質で色っぽい声を上げ、淫らな格好をしている様を見ると、とても不思議な感じがする。
女王という存在が、情欲に溺れた一人の女に過ぎない。
初めて会ったのにこんな無防備で、私が悪いやつだったらどうするんだ。
まさか女王もマジックエクスプロレーションを?
あの一瞬、握手をしたときなのか。
私は惚れっぽい性格なので、愛が無い行為でもこうしてゆっくり肌を重ねていると、だんだんと相手が愛おしくなってしまう。
だから水商売や風俗産業で遊ぶにも情が移ってしまい、向いていないのだ。
性戯は、人数経験が多いのかわからないが、身を任せているときでもしっぽりと気持ちがいい。
ジュリアさんは力業の部分が多いが、女王はリラックスが出来る。
エリカさんを始めとして何人かの女性とアレを行ったが、総合的に私が快楽を一番味わえたのは、女王が一番だろう。
ベテランは素晴らしい。
行為が終わった後、私は女王に膝枕をされ、頭を撫でられている。
太股はとても柔らかい。
ただの性欲のはけ口なのに、温かみがある気がしてきた。
「陛下、どうして私を……」
「マヤさん。二人だけの時はどうかマルティナとお呼びになって……」
「ではマルティナ様。いくら信頼されているガルシア侯爵の部下とはいえ、どうして初めて会った私をこの場に呼ばれたのですか?」
「あら、マヤさんにはもうおわかりでしょう?」
「やはり握手の時にマジックエクスプロレーションをですか」
「ご明察です。私はあの魔法でこっそりいろんな人間を見てきましたから、あれだけですぐわかりますよ。ふふ
それに私の子供達と同じくらいの歳なのに、ずいぶん大人っぽいわ。
私のほうが縋りたい、そんな気分にさせてくれる。
あなたは本当に何者かしら」
確かに女王という立場ならば交流しなければいけない人間は千差万別だし、潜在的な敵もいて望んでもいない物を送りつけるやつもいるだろう。
マジックエクスプロレーションならばそういった予防には打って付けの魔法だけれど、よくもあんな一瞬でわかるものだ。
感じた魔力量は前のアマリアさん並と思うけれど、マジックエクスプロレーションをかなり特化して使っているのかも知れない。
「マヤさん、私の相手になってくれてありがとう。
ただ肉欲のために呼びつけたのに、あなたは私をとても優しく扱ってくれた…。
わかるわ、触り方一つでも愛情が籠もっている。
あなたはそれを自覚していないかも知れないけれど、あなた自身に染みこんでいると思うの。
それにパトリシアさんたちの仕草を見ていてもわかるわ…
どれだけあなたを信頼しているのか、計り知れないくらい。
最初は、レイナルドからの親書があなたのことを大絶賛していたから、どんな子か気になっていたのだけれど、想像以上だった。
ラミレス侯やグアハルド侯の親書でも、あなたの人となりがよく書かれていたわ」
さすが女王をやっていけるだけあるね。
全て見透かされている。
侯爵閣下三人の親書の力も、相当あったんだなあ。
改めて感謝しますよ。
「マヤさん、あなたの本当のことを教えてくれますか?
きっと深い事情があるとお見受けします」
「はい。これから話すことはどうかご内密にお願いします。
他の三人やガルシア侯爵にはお話ししています」
私は、地球の日本という国にいた五十歳の人間が女神サリ様の力でこちらの世界にて生まれ変わり、魔物討伐とデモンズゲート発生の原因を探ることを念頭に、パティから魔女アモールまでいろんな人と出会ってきたことを包み隠さず話した。
女王に膝枕をされたまま……
「そう…… 手を握ったときに不思議な感じがしたのはそういうことだったのね。
私よりもっと年上だったなんて、あなたの雰囲気を見ていたら納得したわ。
ヴェロニカじゃ相手になりそうにないはずよね。
どうかお手柔らかにしてあげて下さいね」
それにしても女王の膝枕は最高だ。
お腹の方に顔を向けたらすごく官能的な香りがする。
「私はマルティナ様を愛してもよろしいんでしょうか?
実は私は惚れっぽくて、好きになってしまいそうです」
「まあ。私のことを愛してくださるんですか?
とても嬉しいです。
勿論私もあなたのことが好きになりました。愛しています」
「マルティナ様、愛しています」
「あぁぁぁぁもうマヤさんかわいいいいい~!」
マルティナ様は私を大きな胸に抱いてぱ◯ぱ◯状態に。た、たまらん。
石鹸の香りに合わさって僅かにつーんとした独特の匂いがするが、癖になる大人の女性の香りだ。
「マルティナ様…… すごく良い匂い…… すぅーはぁー」
「まあ、そんなことを言われたのは初めてだわ。ちゃんと洗っててよかった」
甘い甘いキスをして、私たちはもう一回戦をしてしまった。
女王は先程以上に無防備な姿をさらけ出し、乱れまくった。
「若い男の子の身体っていいわねえ。それにあなたとは相性も良いの。
マヤさん、マドリガルタに滞在している間は、毎日お願いしますね。
シルビアを迎えに寄越しますから。うふふ」
「え…… はい」
熟女…、いや女王陛下の性欲はすごいな。
私は最後に軽くキスをして、服を着て部屋を退出する。
考えてみたら、前世も含めて四十代の女性と行為に及んだのは初めてだったが、柔らかくていいものだ。
女王陛下の部屋からドアを開けて出ると、ドア横の廊下に体操座りをしているシルビアさんがいて、ビクッとしてしまった。
シルビアさんも気づいてスッと立ち上がった。
「シルビアさん、もしかして今までずっと見張りをされてましたか?」
「はい。誰も前を通っておりませんのでご安心ください。
私は女王陛下に大恩ある身です。
ですからこのことは一切秘密にします」
「ありがとうございます。それでは私は部屋へ戻ります」
「あの……」
シルビアさんが呼び止める。
「女王陛下はお優しい方です。でも時々寂しい顔をされます。
お相手下さって、ありがとうございます」
私はシルビアさんに会釈し、誰もいない暗くて静かな廊下を歩いて部屋へ戻った。
シルビアさんも不思議な感じがする女性だ。
三十代だと思うけれど、こんな夜遅くまで女王陛下に付きっきりというのも大変だ。
結婚して子供はいるのかな?といろいろ勘ぐってしまったが、失礼なのでやめる。
明日もいろいろありそうだから、早めに寝よう。