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第六十四話 貴族婦人のお戯れ?

 2024.9.20 軽微な修正を行いました。

 ゆうべはそのままジュリアさんと一緒に寝た。

 目が覚めるとジュリアさんは私の横で起きており、元気になっているもう一人の私を握っていた。

 優しく抱いてくれたゆうべのこともあるので、ちょっと照れくさい。

 せっかくなので、寝起きの身体をゆっくり馴染ませるように朝の運動をした。

 そういうことについては、ジュリアさんは手に取るように分かってくれて、本人もそれを楽しんでいる。


 運動が終わったら、今朝は朝食当番みたいなので、エッチな赤いランジェリーとパジャマを着て退出していった。

 この瞬間は相手が誰でも、いつも寂しくなる。


---


 明日が旅の出発なので、今日はいろいろと忙しい。

 アマリアさんから、お昼前にエステをして欲しいと申しつけられている。

 お昼過ぎには馬車を取りに行って、人参もたくさん買ってこないといけないから、帰りついでに市場へ寄ってみようか。

 でも近所の店は貴族向けだから、物は良いけれど高いし、人参ばかりたくさん置いてないだろうなあ。

 ジュリアさんに頼んで買ってきてもらおうか。

 グラヴィティが使えるようになったらしいから、飛んで行くなり荷物運びにも楽になるだろう。


 着替えの準備もまだ残っているし、女王陛下にお目にかかるのだからもっときちんとした正装を用意しておかねばいかんだろう。

 ああ、こんなことならばもっと早く買っておけば良かった。

 私は基本的に夏休みの宿題を後回しにするタイプの性格だから、後になって溜まってしまうのだよ。


 ジュリアさんには早めに買い物を頼んでおこうと、厨房へ行ってみた。

 今朝はジュリアさんとマルシアさんの当番で、もう忙しそうにテキパキと動いていた。


「あのぉ ジュリアさん。一つお願いがあるのですが……」


「はい、なんでしょう?」


「セルギウスに食べさせるための人参が大量に欲しいので、市場をまわって買ってきてもらいたいのだけれど……」


「はい、わかりました! お昼ご飯を作って仕事が終わってからでもいいですか?」


「勿論だとも。グラヴィティはもう大丈夫だよね?」


「はい、何とかマスターしました! お任せ下さい!」


「お、 ありがとう。ジュリアさん大好きだよ」


「えへへ……」


「朝からお熱いねえ。うっふっふ

 オバサンも昔は旦那と熱かったけれど、今はどうしたもんかねえ。ふっふ」


 マルシアさんがからかってきたけれど、実際熱いことをしてきたばかりだ。ふっ

 中身の私から見たらマルシアさんは八つも年下だけれど、人生経験を積んだおばちゃんの余裕が(かも)し出されている。

 私はとっちゃん坊やから抜け出せず、本当の大人とは一体どういうものなのかを知りたい。


「マヤさん、気をつけて行きなよ。

 帰ってきたら男爵様だ。お祝いの料理を作らないといけないかね」


「ありがとうございます。楽しみにしてます」


 ジュリアさんもマルシアさんも本当に優しいよなあ。

 前世の仕事では、何か用事を頼んだら「面倒くせえなあチッ」という無言の圧力が当たり前だったから、私が管理しているこんなギスギスした職場では自信を無くしたこともあった。

 ジュリアさんたちに甘えてばかりもいけないが、良くしてくれる人たちは大事にしないとね。


 ジュリアさんとマルシアさんが作ってくれた美味しい朝食を皆で食べてから、着替えなどを鞄に詰める。

 おっと、何があるかわからないから、八重桜も持って行く。

 エリカさんはちゃんと準備をしているかなあ。


---


 午前九時には、マヤエステ出張サロンが開店する。

 あれから週一ぐらいでアマリアさん、十日に一度は侯爵閣下にエステをしている。

 アマリアさんの時はウキウキなんだが、侯爵閣下の時は少し気が重い。

 ビキニパンツで髭面マッチョのアラフォーおっさん相手に、五十過ぎのおっさんがマッサージするなんて、BL好きでもその発想はしないんじゃないかね。


 だが今日はウキウキなほうのアマリアさんだ。

 アマリアさんの私室に入ると、彼女はバスローブ姿で椅子に掛けて足を組んでお茶を飲んでいた。

 なんてエレガントな姿だろうか。


「いらっしゃい。それじゃあお願いするわね」


 私はベッドにタオルを敷いてから、アマリアさんはいつも通りバスローブを脱いで裸になり、ベッドの上でうつ伏せになる。

 高級オリーブオイルを手のひらで人肌に温めてから身体に塗る。

 ちょっと慣れたので、お尻や肝心な部分が見えてもタオルを掛けるのはやめている。

 それでもエッチなことはしないで、無心になって施術をする。

 その間、彼女はリラックスして喋らないが、時々……


「はぁぁぁ…… んんん…… ふぅ」


 というようなドキッとする声を上げる。

 平常心だ、平常心。


 体勢を変えられると、はっきり見えちゃう。

 ここからパティとカルロス君が出てきたんだなあと思うと不思議な気がした。


 無事にエステが終わり、アマリアさんはバスローブを着直した。

 彼女は私のほうを向いてニコッと微笑む。


「ありがとう、マヤ様。しばらく会えなくなるのは寂しいわ。

 パティのこと、よろしくお願いしますね」


「勿論、パティのことはしっかり護りますよ」


「魔力量を上げてもらったことだし、せっかくだから旅の無事を祈るために、グレイテストブレッシングをあなたに掛けてあげるわ。

 お母様は私より魔力量が多いみたいだからこの前マヤ様に掛けられたみたいだけれど、私がすると目眩で倒れそうだったから、今まで普通の祝福でごめんなさいね」


「いえ、アマリア様の祝福もあったからこそみんな無事だったかも知れないですから」


「マヤ様、こっちへいらして」


 私はアマリアさんの前に立つと、彼女はじっと私の目を見つめる。

 そして彼女は両手を私の頬に当てて、キスを始めた。

 グレイテストブレッシングって抱っこだけで良いと思うのに、やっぱり……。

 最初はゆっくり唇を挟むキスから、彼女の舌先が私の唇の内側を舐めるようなキスに変わる。

 その時、彼女から魔力が流れ込んできた。

 まるで体中の毛細血管の隅々まで染み渡るような、なんとも言えない温かなこの感覚。

 温泉に入って体中がじんわり暖まる感覚とはまるで違う。

 これがフルパワーのグレイテストブレッシングなのか。

 彼女のキスも合わさって、身体がふわふわと軽くなって、彼女の口の中へプリンみたいにつるりと入っていくような感覚さえある。

 気持ちいい……


「終わりました……」


 私は少し力が抜けてしまったが、アマリアさんにしっかり抱きしめられた。


「マヤ様、我慢しなくていいと言ったのに…… 私もね……」


 アマリアさんは私の右手を引っ張ってバスローブの中へ……


「ね……」


 庭の芝生に散水した後のようになっていた。

 この後どうしたらいいのか。本当にいいのか?

 もう一人の私は勿論怒り狂っていた。

 アマリアさんは、その怒り狂った彼をズボン越しに手で煽った。


「アマリア様、ちょっと待って! ちょ…… あっ……」


「え?」


「あの…… 終わってしまいました……」


「あ、あぁ…… そうですか…… ごめんなさい…… 汚しちゃったわね……」


 情けない……

 さて、ぱんつどうしよう。

 自分で洗うか、誰かに頼むとしたらジュリアさんしかいないなあ。


「マヤ様、脱ぎなさい。私がこっそり洗ってあげるから」


「え…… あの…… いいんですか?」


「私も下着を汚しちゃったときは自分で洗ってますから、かまいませんよ」


 またすごいことを聞いてしまった。

 まあ女性だからそういうことはあるんだろうけれど、高貴な侯爵夫人が部屋にある洗面台でこっそり洗ってる様は生活感がある。

 私はズボンと汚れた黒いぱんつを脱いだ。色が色だけに…… はぁ。


「これがマヤ様の…… ふふ」


 アマリアさんは静まったもう一人の私を見て微笑んだ。

 初めてアマリアさんに見られた。

 私は最初のエステでアマリアさんのを見てしまったが。


 そしてタオルを濡らして丁寧に拭き取ってくれた。

 これ、子供がお漏らししたのをお母さんが拭いてあげてるのと同じだよね。

 言わば三歳児のカルロス君と同じ扱いである。


 吹き終わったら、アマリアさんは私が脱いだぱんつを少し見つめてこう言う。


「ゆうべはジュリアさんとご一緒だったみたいだけれど、若いと多いのね。ふふ」


「え…… 何故それを……」


「ジュリアさんが大喜びであなたの部屋へ向かっていたのが見えたわよ」


「はぁ……」


 ゆうべどころか朝の数時間前にもいたしたけれど、そう言われればそうだね……

 そんなことより、パティのことといい、母娘には屋敷のどこで見られているかわからんな。

 あと、鎌を掛けられた気がしないでもない。


「マヤ様、そのままズボンを履いてお部屋にお帰りになりますか?

 それとも私のを履いてみます? ふふ」


 アマリアさんは黒い透け透けの紐パンを手に取って私に見せた。

 そこにあったからさっきまで履いていたぱんつじゃないかね?

 ちょっと興奮してしまった。


「はっはっはー からかわないで下さいよ」


「あら、本気よ。マヤ様のランジェリー姿を見てみたいわ。いいえ、履きなさい。紐だからサイズに余裕があるわ」


 なんか強気になったな。

 一応侯爵夫人だから素直に言うことを聞いた方が良いのだろうか。


「そんなに私が紐パンを履いているのが見たいのですか?」


「きっと可愛いわ。ううん、絶対よ」


「それなら…… アマリア様のよろしいように……」


 可愛い? わからん……

 アマリア様ってもしかしてエリカさんより変態じゃないのか?

 ああ、私はとうとう新しい世界に行ってしまいます。

 さようなら、さっきまでの私。


 アマリアさんは私に紐パンを履かせ、両側の紐を結んだ。

 うわぁ……


 元の世界では男性でもランジェリーを着けることが一部で流行っているから完全否定しちゃいけないんだろうけれど、私は……

 彼は沈んでいるからともかく、玉子はハミ出てます。

 そして透けています。

 こんなのをパティが見たら、気絶するだろう。

 あなたのお母さんはすごいよ。


「マヤ様…… 可愛いわ…… 思った通りよ。すごくエッチ…… はぁはぁ」


 こういうのって、貴族婦人のお戯れなんだろうか。

 ちょっと怖いです。


 コンコン


「奥様! カルロス様がどうしてもぐずって… お願いします」


 乳母のおばちゃんがドアの外でアマリアさんを呼んでいる。


「わかりました。少し待っててちょうだい」


「ううん、仕方ないわねえ。マヤ様、またの機会ね」


 ごめんなさい…… 出来たら遠慮したいです……

 今日はカルロス君に感謝だよ。

 王都のお土産でも買ってこようかな。


 私はランジェリーをアマリアさんに返して、ズボンを履いてそそくさと自室へ帰った。

 それからアマリアさんが私にランジェリーを履かせて遊ぶことは無かったが、ずっと先になって別の形で再び行われることになる。


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