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第五十九話 プロポーズは言葉で

2023.8.22 微修正を行いました。

 あれからマルセリナ様はすぐ気がついたが、その間に私はぱんつだけ履いておいた。


「ああ…… ごめんなさい……

 人様の身体の一部を見て倒れるなんて、とても失礼なことでした。

 どうかお許しください。あんなに大きくなるなんてびっくりしました」


「それは…… 私は普通か少し小さいみたいです。

 もっと大きな方もいるみたいですが……」


 私は何を言っているんだ。

 確かになあ…… 

 昔は日帰り温泉へ良く行っていたけれど、その辺のじいちゃん達がぷらぷらとぶら下げているのが見えて、私よりよほど大きいんじゃないかと思ったよ。


「この世の女性はみんなあんな大きなものを受け止めていたんですね。

 とてもすごいです……

 マヤ様…… 私はもう少し心の準備をする時間がいりそうです。

 今晩はマヤ様を受け止められそうにありません…… ごめんなさい」


「いいいいやあ、仕方がありません。焦らなくていいですよ。あははは」


 私たちは下着姿のままベッドの上に並んで座った。

 そして片手でマルセリナ様の手を握る。


「こうして少しずつ慣れていけばいいですよ」


「そうですね…… そうしましょう。うふふ」


「マルセリナ様。ご承知だと思いますが、本当に結婚するのは叙爵の後です。

 それにガルシア家には大恩がありますから、義理を果たすためにまずパティと一番に結婚するべきだと考えています。

 パティが十五歳になるまであと二年近くあります。

 それでもよろしいでしょうか?」


「勿論です。今はマヤ様と気持ちが通じ合えたことが一番嬉しいです。

 そうですわ。パトリシア様と一緒に大聖堂で合同結婚式をするのはいかがでしょう?」


「それはすごいですね。でもパティに聞いてみないといけませんね」


「そうでしたね。私たちだけで勝手に決められませんからね。うふふ」


 今晩の話がこれでまとまった気がする。

 もう眠くなってきた…。

 早朝から飛び回るだけだったからなあ。


「マルセリナ様、一つお願いがあります」


「なんでしょう?」


「膝枕をしてもらっていいですか?」


「まあ。マヤ様ったら子供みたいですね。よろしいですよ。」


 私はマルセリナ様の膝の上に頭を乗せた。

 頬に当たる太股の感触。なんてスベスベで気持ちがいいんだ。

 そして顔をマルセリナ様のほうへ向けているので、ぱんつが目の前に。

 今日の夕方までなら信じられない光景だ。

 石鹸と肌の香りがほんのり。いい匂いだ。


「こうしていると……

 教会の孤児院で私が十一歳や十二歳だった時、小さな子供達にこうして膝枕をしていたのを思い出しました」


 私はなんて不純だろうか。

 目を瞑っていると、マルセリナ様の温かくて慈母に満ちた魔力をよく感じる。

 あぁ…もう眠気が…


「おやすみなさい……」


---


 目が覚めたら、隣でスヤスヤとマルセリナ様が眠っている。

 朝か…。私はマルセリナ様に膝枕をしてもらって、そのまま寝たんだな。

 寝顔すら美しい。隣に寝ているのが女性の大司祭様。考えてみたらとんでもない。


 まだ時間は早い。誰にも見つからないうちに部屋へ戻ろう。

 ズボンと上着を着て、マルセリナ様が寝ているが退室した。

 ドアを開けて廊下に出たら…。


「あっ」


「え……」


 ちょうどパティと鉢合わせてしまった。

 ここで一番会ってはいけない人に、寄りによって遭遇してしまうとは…。


「マヤ様がマルセリナ様の部屋から…… はわわわわわわわ……」


 勘違いされてそのまま話を聞かなくなることはよくあるので、この際だからいきなりストレートに言ってしまおう。


「パティ、私はマルセリナ様へ正式にプロポーズしたよ」


「え? えぇ!? そうなんですの!?」


「話がしたいから、少しの時間いいかな?」


「は、はい。じゃあ私の部屋で……」


 パティはびっくりし釈然としない表情で、私を部屋に招き入れた。

 彼女はまだパジャマのままである。

 先程出会った時は、大方トイレにでも行った後なのだろう。

 お茶を入れてくれ、一口飲んだ。

 パティが入れてくれたお茶はいつも美味しい。

 それから話を切り出した。


「パティ。私はゆうべ、マルセリナ様へプロポーズしたよ」


「そうだったんですか…… それでマルセリナ様はどうでしたか?」


「言葉としては私からだったけれど、パティも知っているようにマルセリナ様の強い気持ちに押されて、私も決心したということさ」


「おめでとうございます、マヤ様……

 それで、言葉としてとマヤ様はおっしゃりましたが、私はまだマヤ様からプロポーズの言葉を頂いてませんよ……」


「あっ あああああああ! そうだ!

 最初に君に愛しているとは言ったんだ。でも結婚して欲しいとは言ってなかった!」


「マヤ様とは一番最初に出会って、一番にマヤ様のことが気になって、一番にマヤ様が愛していると言って下さって、プロポーズの言葉も一番にと思ってましたわ。ぷんっ」


「それは私が気づかなかった。ごめんよパティ」


 そういうところは我が儘なんだな。

 さてどうやって納得してもらおうか……


「初めから私の気持ちを話した方がいいのかな。

 私は…… もう一年以上ガルシア家にお世話になっているし、君の父上母上には我が子のように思って下さってる。

 全く身寄りが無かった私にとって、感謝しても感謝しきれないほどなんだ。

 勿論帰る家はここだし、突然さよならする気は無いよ。

 パティのことは好きだし、愛している。それが当たり前になってしまったのかな」


「愛しているのが当たり前だなんて…… ポッ」


 パティの顔が赤くなる。

 よし…… 機嫌が直りそうだ。もう一押しか。


「パティの誕生日パーティーの後のこと、私はすごく強い思い出になっているんだよ。

 バルコニーでダンスをして……

 抱き合って……

 ファーストキスをして……

 お互い愛していると言ったんだよね。

 あれが結婚の誓いと思っていたよ」


「そ、それなら仕方がないですわ」


 パティは見事にツンデレ顔なっている。

 これで何とかなっただろうか。


「マヤ様、今私にプロポーズの言葉を言ってくれますか?」


「じゃあ……」


「お待ちください。こちらに立って……」


 パティが言うとおり、ベッドの前で向かい合って立った。

 そう言えば出会った時よりずいぶん背が伸びたなあ。


「こんな格好でいいの?」


「格好はどうでもいいんですの。今この時の気持ちがずっと大切ですから」


「わかった」


 両手同士で手を握った。ちょうどマジックエクスプロレーションの格好だ。


「パティ、結婚しよう」


「はい!」


 パティは満面の笑顔で私に抱きついた。

 その瞬間、ぽよんと豊乳が当たる。

 もうDカップどころかEカップに迫ろうとしている。

 成長期はすさまじいな。

 スンスン…… いい匂いがする。


「マヤ様、今エッチなことを考えてますね?」


「え? あっ もしかしてマジックエクスプロレーションをかけてないかい?」


「バレました? うふふ」


「そうか。パティも出来るようになったのかあ」


 パティは私から身体を離し、側にあるベッドに二人で座った。


「マヤ様、私が十五歳になるまでお待ちください。お母様からも言われてますから。

 それからこの国の法律でも十五になるまでダメなんです」


「やっぱりアマリア様からそういうことを教えてもらったの?」


「私が十五歳になった時の姿は、きっとマヤ様の目は私から離れなくなるんですって。うふふ」


 ああ、アマリアさんらしいね。

 アマリアさんが十五歳の時はすでにとんでもないあの爆裂ボディだったと容易に想像できる。


「それで…… そ、その…… 今の私の身体にも…… 興味がおありなんですか?」


「ああうん…… 立派なレディになってきたなと思って。ははは……」


「ごめんなさい、今はまだ……

 でも…… キスをしてくださいますか?」


「うん……」


 私は彼女の肩を寄せて、片手同士で手を繋いでゆっくりキスをした。


「ん……」


 パティは小声をあげる。

 いつもの唇はむはむキスだけれど、とてもドキドキしてしまった。

 キスが終わると、パティの目線が下を向く。

 まじまじと何かを見ている。


「キャッ マヤ様…… これって……」


「え? あっ これは……」


 私の分身君が怒りだしていた。キスだけで怒るなんて……

 マルセリナ様とはお預けになってしまったから、彼はカンカンに怒っているのか。


「私、殿方がこうなっているのを初めて見ました。

 いつか私はこのマヤ様を受け止める日が来るのですね。

 マヤ様は私のことでドキドキしてくださって嬉しいです…… ポッ」


 あまりに淡々とそういう言葉を言うのでびっくりしてしまった。

 アマリアさんの性教育はしっかりしているというか、何とも……


「それでゆうべはマルセリナ様とそういうことをなさったんですか?」


 パティはジト目でそんな質問をしてきた。

 あー、一番最初に戻ってしまったじゃないか。


「マルセリナ様は男性に慣れていなくて、生まれた時からご両親もいなかったんだ。

 教会の孤児院でちゃんと性教育を受けていなかったから、今までずっと男女の交わりのこともよく知らないから、私がちゃん性について教えた。

 彼女は心の準備が欲しいそうで、一緒に寝ただけだよ」


「そういう事情があったのですか……

 マヤ様。私もマルセリナ様のことは大好きです。

 だから男女の関係になる時も、大事にしてあげてくださいねっ」


「うん、わかってるよ」


「私は知っていますよ。

 ビビアナとも、エリカ様とも、エルミラさんとも……

 そ、そういうことをなさっているのを知っています。

 私はマヤ様がビビアナたちと男女の関係を持つことは構わないと思っています。

 ですが三人を悲しませることは絶対にしないでくださいね。」


 うぎゃー、知っていたか……

 ビビアナはパティと仲良しで口が軽そうだし、エリカさんは声がデカいからわかりやすいし、エルミラさんとは…、まさか最初に庭の奥でいたした時じゃないよね?

 パティは家◯婦は見た並の恐ろしさかも知れん……

 さすがにジュリアさんのことは知らなかったか……


「で、他にもいらっしゃるんですか?」


「あー、うん。ジュリアさんとも……」


 後が怖いので正直に言いました。

 ジュリアさんとの経緯も簡潔に話した。


「ああ…… もういいですわ。

 命の恩人であるマヤ様を愛しているのは私も同じですから。ポッ」


 前もあったような気がするけれど、さっきからパティの表情は百面相のように変わっているからちょっと面白い。


「マヤ様はマルセリナ様も、エリカ様の大怪我も治して、あとビビアナも魔物から救ったと聞いています。

 そんな勇者様を好きになる気持ちはわかりますわ」


 パティから初めて勇者という言葉を聞いた。

 私自身が勇者って柄はではないと思っているが、街で騒がれているような魔物を倒した英雄とは意味がちょっと違うのかな。

 彼女は私についてそういうことを外で煽った記憶が無いからだ。


「それにしても、お母様とエリカ様がジュリアさんをけしかけたというのは問題ですね。

 後で聞いてみます」


 怖いよー ガルシア家で一番権力を持っているのはパティじゃなかろうか。


「マヤ様、お願いがあります」


「なんだい?」


「私は…… 本当の気持ちはマヤ様を独占したいんです。

 このように二人だけの時は、私だけを見つめてください」


「わかったよ。パティが焼き餅焼きなのはずっと前から知ってるから」


「もうマヤ様ったらー!」


 そういう感じで朝の話は終わった。

 まさか二日連続でプロポーズをするなんてなあ……


 パティは、グアハルド侯爵みたいにお嫁さんたちが寄ってたかってお風呂で洗ってくれるようなことは絶対に許さないだろう。

 羨ましいなあ。


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