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第五十八話 プロポーズと性教育

2023.8.22 微修正を行いました。

 そのままエリカさんとベッドの上で過ごし、朝を迎えた。

 昨日現れた魔物が出てきたと思われるデモンズゲートの捜索をしなければいけない。

 またあの魔物が出てきてもいけないので、エリカさんは置いて彼女にキスをして、朝食も食べずに出かけた。


 あの羽ゴブリンみたいな魔物は北の方から飛んできたのが見えたので、まず北へ向かった。

 北といえば、あのムーダーエイプが出てきたデモンズゲートがあった森の方向だ。

 北の森を中心に捜索する。

 魔素探査をしても、魔素が濃い場所が広くなっており見つけにくい。

 結局三時間以上森の中を飛び回って、一つのデモンズゲートを見つけた。

 前回は無かった場所なのに、魔素が濃ければやっぱり出てくるものなのか……

 魔物が出てこないうちに、クローデポルタムを掛けて穴を閉じた。


 もうお昼前なので一旦帰宅し、昼食を食べる。

 アマリアさんやマルセリナ様も一緒だったが、あまり会話もせず手早く食事を済ませてデモンズゲートの探索に出かける。


---


 午後はラフエル方面へ。

 私がこの世界に降り立ち、この街道を歩いた最初に出会った人間が盗賊だったので、私は勝手に【ヒャッハー街道】と名付けている。

 残念ながら今日はヒャッハー盗賊が見当たらず寂しい。

 ここの林の奥にも前にデモンズゲートが見つかっていたので、再探索をする。

 北の森同様に魔素が濃い範囲が広がっている。

 極論であるが魔素を発生させる樹木を全部切ったら魔素が発生しないわけだ。

 そうすると魔法使いが魔法を使えなくなるどころか、息が出来なくなるように魔法使いの生命に危険が生じる可能性がある。

 ここでも三時間ぐらいかけてデモンズゲートを一つ発見できたので、クローデポルタムを掛けて塞ぎ、帰宅した。

 疲れた……


---


 夕食の後、マルセリナ様が小声で私を呼び止める。


「マヤ様…… お約束は今晩ですから、私の部屋へいらしてください。

 早い時間…… 十時頃で構いませんので……」


「はい……」


 そうか。大聖堂のマルセリナ様の部屋が壊れてしまった上に、大怪我のことで、話をする約束が完全に頭から飛んでいた。

 マルセリナ様は覚えていてくれた。それだけ私と話をしたい気持ちがあるからなのだろうか。


 時間になり、廊下をそーっと歩いてマルセリナ様の部屋を訪ねる。

 大司祭様の部屋へ夜に訪ねること自体スキャンダルだから、万一あまり事情を知らない通いのメイドさんが残っていて見られたら大変なことになりそうだ。

 パティに見られたらしばらく不機嫌になるかも知れない。


 幸い誰にも遭遇せず、マルセリナ様の部屋へお邪魔することが出来た。

 私の部屋と同じ本来は来客用の部屋である。

 マルセリナ様は昨日と同じく、修道女用のシュミーズを着ている。


「ようこそおいで下さいました、マヤ様…。朝からお疲れ様でした。

 やっと…… 二人きりでゆっくりお話が出来ますね」


マルセリナ様の表情がトロンとして、少し赤い。

 色恋沙汰の話をする前は、いくつになっても緊張するなあ。


「マルセリナ様、時間を作って頂いてありがとうございます」


「いいえ。私からもお話したいことがありますので…… まずマヤ様の方からどうぞ……」


「私は…… マルセリナ様のお気持ちは存じているつもりです。

 私はマルセリナ様のことが好きです。もっと好きになりたいんです。

 でもどうしたらもっと好きな気持ちになるのかわかりません。

 遠からずの距離が縮まらないんです」


「お待ちください、マヤ様。

 私はどうしたらマヤ様が私のことを本当に愛して下さるのかお話ししたかったんです。

 私が大司祭だからでしょうか?」


「それもあります。憧れるとか、尊敬できるとか、立派な女性に対して見えない壁を作ってしまうんです。

 こんなことを言ったら彼女らにとても失礼でマルセリナ様と比べたくないのですが、エリカさんやパティたちと一緒だと私と同レベルで気持ちが楽なんです」


「私は立派な人間ではありません。

 確かに教会の中ではこういう立場ですが、外のことは何も知りません。

 昨日のお茶会でもあまりお話に加わることが出来ませんでした。

 パトリシア様たちがとても羨ましかったんですよ」


 しまった。そういうことだったか。

 確かに口下手だったり話の内容に乗れず会話についていけなくて、聞いているフリをしている人もいる。

 それで会話にならず、話題の中心でないと気が済まない人の一方通行になる。

 当然聞いているだけの人は不満になるだろう。

 なぜ私はあの時それに気づかなかったのか。

 気づいていたら、マルセリナ様のほうへ私が引き出すように話を振ることが出来た。


 パティ達は勿論マルセリナ様をのけ者にする悪気があったわけじゃない。

 パティは飛び級のスーパー才女、カタリーナさんは生徒会長で二人ともとても明るくて活発な女の子だ。

 強いリーダーシップを持っている上に高位の貴族だから、意識しなくても話の中心になってしまうだろう。


 私はホテルの雇われ支配人で、フロント係やベッドメイキング係など三十人弱の従業員をまとめるのが精一杯の立場だった。

 マニュアルも作られているし特別難しいことではなく、ただとても面倒事が多い。

 それらを解決していく話へ持って行く能力は必要だ。


「マルセリナ様、それに気づかずごめんなさい。

 私もマルセリナ様が教会の中でどうなのかというのをよく知らなかったんです。

 もし差し支えなければ、生い立ちから掻い摘まんで教えてもらえますか?」


「わかりました。お話ししましょう。

 私は見た目通り、イスパル王国の人間ではありません。

 名前こそイスパル人になっていますが、スオウミ国の出身だったそうです」


「そうです?」


「はい。イスパル王国北部の村の教会に、私と同じ髪の毛の色をした父親が赤ん坊だった私を抱えて流れ着き、スオウミから来たと言えただけで名乗ることが出来なく病死してしまったそうです。

 そして教会の孤児院で育ち、私に強い魔力と光属性があることがわかり、イスパルの教会を転々としながらマカレーナ大聖堂の大司祭になることが出来ました。

 アルマハーノという姓名は、村の教会の、神父様の姓名を頂きました。

 十二歳までその教会で育ちましたが、とても優しい神父様でした」


「そういうことでしたか……」


 掛ける言葉が出てこない、というより変に同情しても返って彼女を傷つける。

 それよりこれからのことを考えたことが良いだろう。

 そうか、彼女はそれを私に求めているのか。


「お話しくださりありがとうございます。

 マルセリナ様がお優しいのも、その神父様のおかげですね」


 彼女はニコッと笑った。

 よしっ 話が良い方向にいけそうだ。

 だがここは敢えて少し意地悪な質問をする。

 ムーダーエイプの件の後で聞いたマルセリナ様の言葉は、勢いだったようにも思える。

 ジュリアさんも勢いだったが、私は彼女のエッチな下着姿に目が眩んで愛していると言ってしまったようなもので、性格はいいし田舎者同士で釣り合ってるから良かったものの。

 ムッツリスケベの私が、マルセリナ様に釣り合うのだろうかと。


「それでマルセリナ様、あなたは私に何かを求めていらっしゃるということですか?」


「私は…… 私は……」


 マルセリナ様は一気に不安そうな表情に変わった。

 やはりまずかったか!?


「確かに私は、今まで男性に縁がありませんでした。

 というより、恋愛しようという気持ちが湧きませんでした。

 そこへマヤ様が現れました。

 マジックエクスプロレーションで、私のことを女として見てくれていると感じました。

 フルリカバリーの勉強のため通って頂いてる度に、私はあなたのことがどんどん気になって仕方がありませんでした。

 サリ様の使いだということはさておき、私の命を救って頂いた命の恩人が愛するあなただったということが、あなたと一生添い遂げたい理由ではいけませんか! うっうっううう…


 マルセリナ様は両手で顔を塞いで泣いてしまった。

 大司祭様を泣かせてしまった。

 教会が知ったら罰せられそうだ。

 遠回りだったけれど、彼女の気持ちを爆発させてはっきり聞かせてもらった。


「結婚、いいえ、妾でもかまいません。

 どうかマヤ様のお側に…… ううぅぅ……」


「いやいや! さすがに大司祭様を妾にするには問題あります。

 ううん…… わかりました」


「え?」


「マルセリナ様、私と結婚してください」


「え…… ええ…… はい」


 マルセリナ様は薄ら涙を浮かべながら呆けて返事をしてくれた。

 そしてみるみるうちに表情が笑顔に変わっていった。


「マヤ様…… マヤ様…… マヤ様……」


 マルセリナ様は私に抱きつき、キスをしてくれた。

 ただ唇を合わせるキスだったが、私の胸には熱いものが込み上げてきた。


「殿方とキスをするのは初めてでした。

 こんなに嬉しくてドキドキするものだったんですね」


「そうですね。私もマルセリナ様にドキドキしてしまいました」


「どうしましょう…… ドキドキが止まりません……

 わかりました。愛する殿方とは肌を重ねるものですからね」


「え?」


 マルセリナ様は、シュミーズを脱ぎだした。

 ワンピースなので、袖から腕を抜いてガバッと脱ぐ。

 彼女は下着だけの姿になった。

 ランジェリーではなく、ブラもぱんつも素朴な白い綿製のものだった。

 だが肌は銀髪によく合うぐらい真っ白で、息を呑むほど美しかった。

 大聖堂でマジックエクスプロレーションや魔法の治験をした時に、マルセリナ様が積極的に抱きついてきたのは何故だったのか、今の行動でなんとなく分かった気がする。

 偏った知識が入ってしまっているのかも知れない。


「マルセリナ様、ちょっとお待ちください。

 その…、愛する男性が出来て、肌を重ねたらいつか子供が出来ますよね?

 どうやったら子供が出来るかご存じですか?」


「嫌ですわ、マヤ様。

 愛する男女が裸になって寝所を共にすればいつか子供が授かると聞いてます」


「その寝所で何をするんですか?」


「え? 一緒に寝ていれば自然に、女性のお腹に子供が授かるものではないのですか?」


 ああ…… 完全に性教育不足だ。

 性行為の部分だけ抜けている。

 さて、どう話したらいいものか。


「マルセリナ様はその話をいつどこで知識として入れられたのですか?」


「生まれ育った教会の孤児院で、シスターに教えて頂きました」


「そのシスターにだけですか?」


「はい」


 うーん、十二歳以前に入った知識で止まって、教会を転々とするようになってから誰も教えてくれる人がいなかったということか。


「女性は、毎月生理で血が出てきて、赤ちゃんを産む所がありますが……

 それは勿論ご存じですよね?」


「マヤ様は先程から一体何をおっしゃりたいのでしょうか?

 そんな当たり前のことを、怒りますよ?」


 さすがにそこは知っているんだ。

 そろそろ正しい知識の話に入ろうか。


「シスターの話にまだ続きがあるんですよ。

 きっとそれをマルセリナ様に教える前に、あなたは別の教会へ移動したということだと思いますが……」


「そんなことって…。続きとはどういう話なのか教えて頂けますか?」


「わかりました……

 女性のお腹の中に小さな卵が出来上がります。

 男性から種がもらえれば、子供が出来ます。

 ですが、男性からの種をお迎え出来なければ、先程お話ししたように月に一回、血と一緒に卵が排出されます」


「はい、そこは存じておりますが……」


「ではどうやって男性の種を女性のお腹の中でお迎え出来るのかご存じですか?」


「え? それは……」


 マルセリナ様が男の子のアレを見たことがあるか尋ねてみる。


「話を少し戻します。

 マルセリナ様が子供の頃、一緒にいた男の子の裸は見たことがありますか?」


「はい、子供の頃でももっと小さい時ですが……」


「男の子には、女の子にないものが付いていましたよね?」


「はい。あれはおしっこをするところですよね?」


「おしっこをするだけだったら、それはいりませんよね。女の子には無いですから」


「え? そういえばそうですよね…… じゃあ他に何かすることに必要なのですか?」


「男の子は大人になると、種が出来るようになります。

 女の子も大人になると、お腹の中に卵が出来るようになりますね。

 その男性の種も、おしっこをするところと同じ場所から出てきます」


「え? ええ??」


 やっとここまで話を持って行けた。

 この先、マルセリナ様は衝撃の事実を知ることになるだろう。


「子供が出来るには、男性の種が女性の卵にくっ付かなければいけません。

 種が女性の身体の中に入るには、どうしたらいいんでしょうか?」


「え? 種をもらってそれから…… わかりません……」


「男性の種を、毎月血が出たり赤ちゃんが出てくる女性の部分に入れなければいけません」


「種をスプーンか何かで入れるのですか?」


 まさかここまでとは……

 私の方が衝撃だったよ。

 動物の交尾も何がどうなってるいうことも知らないのかも。


「男性は、愛する女性の裸を見ると、ドキドキします。

 ドキドキして感情が高まり、おしっこや男性の種が出てくる部分が何倍も大きくなります」


「あっ いま私は下着だけでほぼ裸です! もしかしてマヤ様も……」


「はい…… 全くその通りです……」


 勿論、私の分身君はカンカンに怒っていた。

 こんな綺麗な身体の女性の下着姿を目の前にして、平穏であるほうが問題だ。


「その…… 男性の大きくなった部分を、赤ちゃんが出てくる女性の部分に入れるんです。

 興奮がピークに達するとおしっことは別の液体と一緒に種が出てきて、卵に種を渡すんです」


「え? ええ? ええええええっっ!!??」


 マルセリナ様が二十四年間生きて、初めて事実を知った瞬間だった。


「と、ということは、マヤ様の男性の部分が……

 わ、私の中に入るということですか?」


「そういうことになります……」


「はわわわわわわ…… 今まで私は大変な勘違いをしていました……

 お若いパトリシア様はもうそういうことを知っていらっしゃるのでしょうか?」


「はい。女の子はたぶんお母様がそういう教育をされていると思います」


「そうですか…… 皆さんはそうなんですよね……」


 彼女は落ち込んでいる表情になった。

 しかしパティの行動を見ていると、アマリアさんはパティにどういう手ほどきをしているんだろうと思う。

 十三歳の子に押し倒されてはむはむキスをされた時はびっくりしたよ。

 もしかしたら最近読んでいる恋愛小説の影響か?


「大丈夫ですよ。私が今教えたんですから、これからが大事ですよ」


「そうですね。そうですよね! それで、これからは……」


 マルセリナ様は熟したトマトみたいに顔を真っ赤に染めて黙り込んでしまった。

 そして彼女は私の股間をチラッと見る。


「マヤ様のここが……」


 今度はじーっと見つめてくる。

 ズボンの中にいるもう一人の私は、激怒していてはち切れんばかりである。


「マヤ様。こちらを拝見させてもらっても…… よろしいでしょうか……?」


「あの…… 私が下着を脱いで、ということですか?」


「はい……」


 意外に好奇心旺盛みたいだけれど、大丈夫なのかな?

 お父さんが早くに亡くなってしまったから、小さな時にお風呂を一緒という経験が無いだろうし。


「じゃあ、少し反対側を向いてもらえますか?」


「わかりました」


 マルセリナ様はあっちへ向いた。

 その間、私は寝間着用の綿のズボンとぱんつを脱いで、シャツだけになる。

 女性の前でこの姿は滑稽だな……


「あの…… 脱ぎました。どうぞ……」


 彼女は元の向きになり、まじまじともう一人の私を見つめた。


「あ…… ああああ…… ああああああああ……

 コレが私の中に…… そ、そんな……」


 マルセリナ様は目を回し、ベッドの上で倒れてしまった。


「マルセリナ様! おーい! マルセリナ様!!」


 私の分身君見て倒れてしまうなんて、こっちがショックだよ……

 うう…… 悲しい。


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